本書は、坂本龍馬と幕末を明快に理解出来る秀れ本かと存じます。少し前から買ってゐましたが、勿体ない事に積読スルー状態になってしまってゐたわけです。
本書のの分かりやすさは、坂本龍馬の社会的な素性と彼が行動した時代の状況を巧みに分析、解説してゐる事によってゐると思はれます。シャープに彼と彼の生きた時代を浮き上がらせてゐるなあと強く感じました。小説家の司馬遼󠄁太郎が小説を書きつつ、その途中途中に解説、補足して行く手法に少し似てゐなくもありません。
今回、割と集中して読めた事は有難かったですね。私なりに理解出来ましたポイントについては以下列挙してまとめて置きたく存じます。
先づ、龍馬の家が豊かな商人でありながら武家株を買った下士(郷士)の家柄であり、商業的な営みに肯定的な感覚を持ってゐただらう家だった事です。私としてはある程度知ってゐた事とは言へ、重要な大前提だった事を再認識しました。ですから、龍馬が江戸への武者修行以降に感じられただらう違和感や身分差もリアルに想像出来ました。
次に、幕末といふ時代が剣術ブームによって武士としての出世や頭角を現し出す事を期待されてゐた中で龍馬が江戸修行に出てゐたといふ事であります。さういった時代背景を知ってゐます事は、基礎的な教養であると認識しました。
三つ目には、同じ土佐出身で米国帰りの中浜万次郎の存在に刺戟され、彼を訊問した河田小龍に学び、更に勝海舟に出会って海軍思考に感化されたといふターニングポイントがあった事です。海軍、海運といふ要素に目覚めた事は、龍馬のセンスに磨きがかかって本領発揮に繫がったのではないでせうか。
四つ目には、未だ私として漠然とした認識でありますが、龍馬の脱藩行動が人生の覚悟と土佐尊攘派の限界を打ち破る劃期になっただらうといふ事です。その少し前に、武市半平太の依頼で長州の久坂玄瑞に使ひした経験も全国の志士の思ひと状況を知ったものと思はれますが、その成長のドラマは「竜馬がゆく」等で追体験してもいいかなと思ってしまひました。
五つ目は、龍馬の暗殺が京都守護職の配下である見廻組によるものであり、会津藩の意思(命令)であった事です。これは今まで謎とされてゐた難問でありましたが、筆者は一つ一つづつ詰めて考察、分析して行って遂に答に至った感じであり、渾身の分析力とでも言ったらいいのでせうか。この部分に至る過程で、筆者は諸藩の人材育成の成功藩が二つあったとし、一つが論語読みに類する手法に徹した会津藩とし、もう一つが戦国以来の集団教育の中での想定問答による知力鍛錬を行った薩摩藩だとしてゐるのは、大変興味深かったです。
筆者は、本書で総合的な学問知によって重厚な作品に仕上げてゐるなあと強く感じました。本書のポイントを忘れてしまはないために、今後も本書を再読、三読のしたく思ってゐる次第であります。
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龍馬史 (文春文庫 い 87-1) 文庫 – 2013/5/10
磯田 道史
(著)
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明るくて合理的、自由で行動的。貿易を行い、戦争もする「海軍」として、亀山社中を創設し、薩長同盟を実現させた坂本龍馬は土佐藩で、どのように育まれたのか?どんな世界を見ていたのか?誰に暗殺されたのか?龍馬をめぐる数々の謎に歴史家の磯田道史が挑んだ。龍馬を知れば、幕末が見えてくる。
- 本の長さ231ページ
- 言語日本語
- 出版社文藝春秋
- 発売日2013/5/10
- 寸法10.7 x 1 x 15.2 cm
- ISBN-104167858010
- ISBN-13978-4167858018
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
坂本龍馬を斬ったのは誰か? 黒幕は誰か? 幕末最大のミステリーに気鋭の歴史家・磯田道史氏が挑みました。新撰組か紀州藩か、はたまた薩摩藩か? 様々な説が唱えられてきましたが、史料の丹念な読解と巧みな推理によって、ついに謎が解かれました。論争に終止符を打つ画期的論考です。
「龍馬は一日にしてならず」。合理的でカラっとした性格、そして既成の枠にとらわれない自由な発想。そんな龍馬を生み出したのは、お金で武士の身分を買った土佐の豪商の家でした。坂本龍馬という破格の人物が出現した背景にも迫ります。
「龍馬は一日にしてならず」。合理的でカラっとした性格、そして既成の枠にとらわれない自由な発想。そんな龍馬を生み出したのは、お金で武士の身分を買った土佐の豪商の家でした。坂本龍馬という破格の人物が出現した背景にも迫ります。
登録情報
- 出版社 : 文藝春秋 (2013/5/10)
- 発売日 : 2013/5/10
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 231ページ
- ISBN-10 : 4167858010
- ISBN-13 : 978-4167858018
- 寸法 : 10.7 x 1 x 15.2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 43,336位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 632位文春文庫
- - 9,840位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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2023年11月27日に日本でレビュー済み
2021年6月17日に日本でレビュー済み
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面白かった。一気読みしてしまいました。
2022年1月30日に日本でレビュー済み
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龍馬が勝に会えたのは、江戸遊学時代に桶町千葉の坂本と言う剣名が高かったからではないか。竜馬の人脈が広がる背景は、その剣名にあったと思う。
2017年1月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本のきれいさ自体はよかったですが、内容が・・
まぁ薄い本ですので、こんなものでしょうが、龍馬殺しを自白した今井信郎がなぜ2年にも満たない禁固刑で済んだのか、いろは丸事件のふっかけ金7万両のうち、大洲藩が受け取るべき金額を受領した痕跡がないのはなぜなのか、といった点には触れておらず、渡辺証言でも夕刻に殺した点なども触れておらす龍馬暗殺について何冊も読み込んでる人には不服な内容なのは明らかです。通説通りの結論にもっていくため、それに即した証言を並べて、他の証言を捨て、あるいは触れず(最後のほうの死ぬ間際に某さんがこう語った、というのも又聞きで、これを証拠とするなら田中光顕氏が明治天皇は孝明天皇の子ではないという又聞き証言も証拠となります)、非常に物足りないものでした。通説はどうなっているんだろうか?という意味では読まれたほうがいいと思います。
まぁ薄い本ですので、こんなものでしょうが、龍馬殺しを自白した今井信郎がなぜ2年にも満たない禁固刑で済んだのか、いろは丸事件のふっかけ金7万両のうち、大洲藩が受け取るべき金額を受領した痕跡がないのはなぜなのか、といった点には触れておらず、渡辺証言でも夕刻に殺した点なども触れておらす龍馬暗殺について何冊も読み込んでる人には不服な内容なのは明らかです。通説通りの結論にもっていくため、それに即した証言を並べて、他の証言を捨て、あるいは触れず(最後のほうの死ぬ間際に某さんがこう語った、というのも又聞きで、これを証拠とするなら田中光顕氏が明治天皇は孝明天皇の子ではないという又聞き証言も証拠となります)、非常に物足りないものでした。通説はどうなっているんだろうか?という意味では読まれたほうがいいと思います。
2020年3月5日に日本でレビュー済み
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龍馬についての話題は数知れず。どれが真実か、偽りか❔判断できない。
彼が書いた手紙であれば、誇張があったとしても真実だろう。
従来の説と頭の中で比較しながら読んでいる。
彼が書いた手紙であれば、誇張があったとしても真実だろう。
従来の説と頭の中で比較しながら読んでいる。
2019年4月24日に日本でレビュー済み
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興味深く楽しく読めました。
新たな発見を期待しています。
龍馬 魅力が増しますね。
新たな発見を期待しています。
龍馬 魅力が増しますね。
2017年5月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
磯田道史さんの著書の特徴は、古文書を紐解き、そこから生き生きとした人間像を浮かび上がらせることです。史実に忠実でありながら、それらを結び付けて、卓越した歴史観というものを私たちの眼前に、「あー。そうか。」と気付かせてくれる。その時代を描き出してくれるのです。
小説ではないのに、小説の様に思える。人物像が浮かび上がってくるのが特徴ですから、いつもこの人の文章を読みながら深い感動を覚えさせられるのです。「無私の日本人」では、小説の様に人物像が浮かび上がってきて、涙さえ禁じえませんでした。
◇
しかし、「龍馬史」では龍馬の人間性がなかなか浮かび上がってきませんでした。それはきっと、周囲の状況や人々との関りから龍馬像を描こうとしたからではないかと思うのですが…。
歴史上や小説などでは、とても魅力的な人物に描かれる人ですが、これはどちらかというと、龍馬その人より、「龍馬暗殺の真実」に焦点を当てた書物だからでしょうか。
歴史の本としては、とてもよい本だと思いますし、読み進めていくと「坂本龍馬を暗殺した人物は、この人で間違いなさそうだ」と明確に示してくれます。ですから、龍馬に興味のある人は、絶対に読まなければならない本だと思います。
けれども、史実以上のドラマを期待してしまった私としては、少し物語が足りない気がしました。これは、私に幕末の知識が乏しいからかもしれませんし、ドラマを期待し過ぎたからかもしれません。
その証拠に、この本の一般的な評価はとても高いのです。
◇
さて、ドラマを期待した私としては、最終章「自筆書簡でみる等身大の龍馬」が彼の魅力をよく表していると思いました。
磯田さんは、龍馬が、女性と付き合ったことを逐一姉に伝えていることを指摘して、
「今年二十六歳。馬にも乗り、剣も強く、長刀もでき、力は並みの男子より強いとうとう。龍馬は、好きな女性ができると、姉に手紙で細大漏らさず、報知する癖があります。」「そして『十三弦のこと(琴)よくひき』とあるように、琴を弾いたり、時折女らしさを見せる、そういう女性が好きなようです。ちょっと図々しい要求のような気もしますが。」
と書いています。
また、磯田さん曰く、龍馬は家族に政治活動の内容や自分の知った様々な内幕まで全部喋ってしまうひとだったということも書いています。そのため、逆に命を狙われることになったと書いています。
女性にしても、政治に対する考え方にしても、実に開けっぴろげです。ですから、周囲の大物も皆、心開いてくれたのかもしれません。
最後の章の様な感じで全編、龍馬を描いてほしかったなあ。
ほかの作家ならもっと高い評価ですが、期待の磯田さんなので、あえて、評価を☆☆☆☆としちゃいました。
でも、まだまだ楽しみな本があるので、これからも磯田さんは読見続けます。
小説ではないのに、小説の様に思える。人物像が浮かび上がってくるのが特徴ですから、いつもこの人の文章を読みながら深い感動を覚えさせられるのです。「無私の日本人」では、小説の様に人物像が浮かび上がってきて、涙さえ禁じえませんでした。
◇
しかし、「龍馬史」では龍馬の人間性がなかなか浮かび上がってきませんでした。それはきっと、周囲の状況や人々との関りから龍馬像を描こうとしたからではないかと思うのですが…。
歴史上や小説などでは、とても魅力的な人物に描かれる人ですが、これはどちらかというと、龍馬その人より、「龍馬暗殺の真実」に焦点を当てた書物だからでしょうか。
歴史の本としては、とてもよい本だと思いますし、読み進めていくと「坂本龍馬を暗殺した人物は、この人で間違いなさそうだ」と明確に示してくれます。ですから、龍馬に興味のある人は、絶対に読まなければならない本だと思います。
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その証拠に、この本の一般的な評価はとても高いのです。
◇
さて、ドラマを期待した私としては、最終章「自筆書簡でみる等身大の龍馬」が彼の魅力をよく表していると思いました。
磯田さんは、龍馬が、女性と付き合ったことを逐一姉に伝えていることを指摘して、
「今年二十六歳。馬にも乗り、剣も強く、長刀もでき、力は並みの男子より強いとうとう。龍馬は、好きな女性ができると、姉に手紙で細大漏らさず、報知する癖があります。」「そして『十三弦のこと(琴)よくひき』とあるように、琴を弾いたり、時折女らしさを見せる、そういう女性が好きなようです。ちょっと図々しい要求のような気もしますが。」
と書いています。
また、磯田さん曰く、龍馬は家族に政治活動の内容や自分の知った様々な内幕まで全部喋ってしまうひとだったということも書いています。そのため、逆に命を狙われることになったと書いています。
女性にしても、政治に対する考え方にしても、実に開けっぴろげです。ですから、周囲の大物も皆、心開いてくれたのかもしれません。
最後の章の様な感じで全編、龍馬を描いてほしかったなあ。
ほかの作家ならもっと高い評価ですが、期待の磯田さんなので、あえて、評価を☆☆☆☆としちゃいました。
でも、まだまだ楽しみな本があるので、これからも磯田さんは読見続けます。