専門家には未来は予測できない、予測できるのはＳＦ作家だけだ、と言い切る本書は痛快な近未来論であると同時に優れた科学の啓蒙本だ。
地球温暖化、海洋開発、氷河期、そして宇宙に目を転じて、月や火星の開拓、深宇宙への進出。
著者はイギリス人だが、全体的にアメリカ的なフロンティアスピリットや楽天的なとさえ言える前向きな、肯定的な内容は読んでいて爽快でさえある。同時に個々のテーマに関する思いこみというか、偏った知識を正してくれる。さらに本書の優れたところは巻末解説にある。アメリカ的と書いたフロンティアスピリットの源泉が作者の出身であるイギリスにあることや、イギリス人が持つ自分を離れた客観的な視点について述べられていて、これが本書の後味を良くしている。
ＳＦファンはもちろん、環境問題や科学全般に興味がある読者にお勧めである。細かい章立てなので飽きることなく、本のボリュームも全く気にならないので若い読者でも楽しめるだろう。読み切ったら、興味を持ったジャンルをさらに読み広げてほしいものだ。
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