様々なサイバー攻撃が新聞紙面を賑わしているが、サイバー安全保障について書かれた本は少なく、わずかに存在する日本語の関連書籍は必ずしも満足のゆく出来ではなかったように思う。その中で本書は、サイバー安全保障の分野で世界で最も知られている書籍であり、しかも日本語訳も出ている。筆者はブッシュ政権でサイバー政策を担当していた。ただ、彼は政権内の対立により途中で政府を去ることになったため、ブッシュ政権に対しては憎悪の念を持っているようで、同時多発テロに関する彼の著作は自己弁明と内情暴露に終始していた。このことから、彼に対してネガティブなイメージを持つ人も少なくないだろうし、本書を読んでみても根拠に乏しいことを断定する箇所等が見られ、信頼性に若干の疑問があることは確かである。
しかしながら、これだけのボリュームでサイバー安全保障を論じた本は他には無く、しかもサイバー政策に携わって来た筆者ならではの記述もあり、大変面白い。米軍のサイバー司令部創設をめぐる軍と情報機関の間の主導権争い、キューバを拠点とする中国による米国のインターネット監視活動、米国による諸外国へのネットワークへの侵入、サイバー戦争能力の数値化などなど、他では読めない情報が満載であった。勿論全てを鵜呑みにはできないが、参考にはなる。また、本書は米国のサイバー戦略構築に向けて提言を行っているが、その内容は極めて妥当なもののように思えた。まだ安全保障の観点からのサイバー政策が打ち出せていない我々日本人にとって、本書から学べることは多いと思う。
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核を超える脅威 世界サイバー戦争 見えない軍拡が始まった 単行本(ソフトカバー) – 2011/3/17
中国は90年代半ばからサイバー戦闘能力を高め、今では世界屈指の能力を保持するに至っている。中国はハッカー集団を養成し、サイバー戦争部隊を創設し、米国の電力網を論理爆弾(ロジック・ボム)で破壊する能力を備えつつある。何も中国だけに限らない。ロシアもイスラエルも北朝鮮もそれぞれにサイバー戦闘能力を磨いている。 本書はいまやサイバー戦争が原発を破壊するほどの威力を備え、主要国の「国力をかけた」戦いとなっていることを警告する
- 本の長さ324ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2011/3/17
- ISBN-104198631409
- ISBN-13978-4198631406
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商品の説明
出版社からのコメント
サイバー空間で国家間の戦いが激化している。対サイバー・テロの第一人者がその恐るべき全貌と最先端情報を明かす!
著者について
1973年国防総省入省。ブッシュ政権で国家安全保障および対テロのチームを率いる。9.11後サイバースペース・セキュリティ担当大統領補佐官に転任。現在はハーバード大学で教鞭をとるほか、ABCニュースのコンサルタントを務める。
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2011/3/17)
- 発売日 : 2011/3/17
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 324ページ
- ISBN-10 : 4198631409
- ISBN-13 : 978-4198631406
- Amazon 売れ筋ランキング: - 795,241位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 5,196位軍事 (本)
- カスタマーレビュー:
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2011年7月28日に日本でレビュー済み
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2012年2月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
リチャード・クラーク「世界サイバー戦争 核を超える脅威」徳間書房、2011を読む。著者は元サイバーセキュリティ担当大統領補佐官。
表題は少し怪しげだが技術的にもしっかりしていて翻訳も違和感を感じさせない。いろいろな脅威の記述があり、本当かと思うものもないではないが、三菱重工や衆議院への攻撃と類似の攻撃方法が事前に記述されているのを見るとかなり、信頼できるように思う。
サイバー攻撃力は米国8、ロシア7、中国5、イラン4、北朝鮮2だという。しかし、アメリカはサイバー依存度等が高いため、逆にサイバー戦争に弱いと警告を行う。そのため、米国政府は民間の重要インフラをAP層まで含めて監視し、サイバー攻撃がないかチェックすべきだと主張する。この辺りまで行くと価値観を共有しにくくなる。
サイバー戦争は核戦争と違い抑止力が働かないことや、攻撃者が特定できないこと、ネットワークが破壊された状況で戦争が続くと相手が戦争をやめていても攻撃をする可能性がある等難しい点が多い。その一方で攻撃側は民間人であっても相手の重要インフラをダウンさせうるのである。
日本はサイバー依存度が高い中で、専守防衛を義務付けられていると考えられる状況を知りつつ、何か可能で、何をなすべきか早急かつ冷静に議論していく必要があるように思う。
表題は少し怪しげだが技術的にもしっかりしていて翻訳も違和感を感じさせない。いろいろな脅威の記述があり、本当かと思うものもないではないが、三菱重工や衆議院への攻撃と類似の攻撃方法が事前に記述されているのを見るとかなり、信頼できるように思う。
サイバー攻撃力は米国8、ロシア7、中国5、イラン4、北朝鮮2だという。しかし、アメリカはサイバー依存度等が高いため、逆にサイバー戦争に弱いと警告を行う。そのため、米国政府は民間の重要インフラをAP層まで含めて監視し、サイバー攻撃がないかチェックすべきだと主張する。この辺りまで行くと価値観を共有しにくくなる。
サイバー戦争は核戦争と違い抑止力が働かないことや、攻撃者が特定できないこと、ネットワークが破壊された状況で戦争が続くと相手が戦争をやめていても攻撃をする可能性がある等難しい点が多い。その一方で攻撃側は民間人であっても相手の重要インフラをダウンさせうるのである。
日本はサイバー依存度が高い中で、専守防衛を義務付けられていると考えられる状況を知りつつ、何か可能で、何をなすべきか早急かつ冷静に議論していく必要があるように思う。
2013年2月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前線でサイバーセキュリティについて扱っていた著者の話は面白いです。でも、参考文献が明示されていないのはいただけません。
2011年9月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
サイバー戦の概要と予想される被害(脅威)を示した上で、米国民が取るべき措置を示した書籍。本書に掲載されている内容は、今日の国際社会では「常識」とされているものであることを考えると、わが国のサイバーセキュリティやサイバーインテリジェンス対策は、「体制が確立されていない」「政治・経済界の危機意識がない」「対策を採ろうにも金がなく、対処療法に頼らざるを得ない」としかいいようがない。嗚呼!
2011年4月3日に日本でレビュー済み
通常兵器および核兵器においては圧倒的優位に立つアメリカ。
当然、サイバー空間においても優位性はあるのだが・・・
IT先進国、自由主義、そして価格競争に欠かせないアウトソーシングが
逆にサイバー防御力を弱体化させてしまうのはなぜか?
対する中国、北朝鮮のサイバー空間での優位性とは?
安全保障の世界的大家の共著であるが、とにかく読みやすい。
どの章から読んでも、たちまち引き込まれてしまうことでしょう。
21世紀、いや20世紀末から既に始まっていたサイバー戦争の
入門編としてお勧めします。
当然、サイバー空間においても優位性はあるのだが・・・
IT先進国、自由主義、そして価格競争に欠かせないアウトソーシングが
逆にサイバー防御力を弱体化させてしまうのはなぜか?
対する中国、北朝鮮のサイバー空間での優位性とは?
安全保障の世界的大家の共著であるが、とにかく読みやすい。
どの章から読んでも、たちまち引き込まれてしまうことでしょう。
21世紀、いや20世紀末から既に始まっていたサイバー戦争の
入門編としてお勧めします。
2013年9月5日に日本でレビュー済み
二人の著者は上司・部下の関係にあったらしい。リチャード・クラーク氏は国務次官補など政府の要職を歴任した安全保障問題のプロであり、ロバート・ネイク氏は外交問題評議会(CFR)のフェロー。サイバー戦争は軍事戦略を一変させる可能性があるといわれるが、この問題の深刻さについての認知度は低い。本書は、サイバー戦争とはそもそもなんなのか、それがどれほど重大なことなのかについて警鐘を鳴らす本だが、とてもわかりやすいし「読ませる」。
曰く・・・
湾岸戦争のハイテク兵器をみて、中国は「数で圧倒してアメリカを打倒する」という軍事戦略を放棄し、情報支配による先制サイバー攻撃を重視する軍事戦略に変更した。中国軍の軍備がアメリカに追いつくには数十年かかるが、サイバー攻撃を組み合わせることによりアメリカと五分五分の戦いができるかもしれない。
中国政府は、マイクロソフトとシスコに狙いを定めている。政府調達からマイクロソフトを閉め出すと脅し、企業秘密であるOSのソースコードを提供させた。華為のルーターはシスコの模造。マイクロソフトのOSの欠陥とシスコのハードウェアの欠陥を入手しているので、中国はほとんどのネットワークを機能不全にできる。一方、中国は中国国内で販売されるマイクロソフト製品に独自のセキュリティ・コンポーネントを導入している。更に、オープンソースOSをベースにした独自OS「麒麟」を開発している。人民解放軍のシステムは麒麟を採用している。しかも、全世界のネットワークから中国国内のネットワークだけを遮断できる。
サイバー戦争からの利得が充分大きければ、中国は経済面のマイナスを甘受してでもあえて戦争をしかけてくる(ある国防総省の高官:匿名)。
サイバー攻撃の格好の標的はDNSサーバ。URLとIPアドレスを対応づけるテーブルを改ざんし、アクセス者を偽のウェブページに誘導する。おそらくは本物そっくりに作られた偽ページに誘導し、口座番号や暗証番号を入力させる。DNSは設計時にセキュリティがほとんど考慮されていない。あるISPと別のISPの接続箇所において最適経路選択を行うボーダー・ゲートウェイ・プロトコル(BGP)もターゲット。BGPには防御メカニズムはない。BGPテーブルの改ざんにより、トラフィックは迷子になる。インターネットのガバナンス欠如こそがインターネットの弱点である。
マルウェアのうち、ウィルス対策ソフトに発見されて対策が打たれるのはその10分の1にすぎない。
論理爆弾(ロジックボム)を仕掛けておき、必要時に起爆するという方法もある。起爆時にハードディスクのデータを消去したり、電圧上昇により回路を焼き切ったり、航空機のフラップを操作して急降下させたり、といったことを行う。アメリカの各省庁はこの論理爆弾を懸念している。アメリカの電力網のあちこちで論理爆弾が発見されている。
1980年代のレーガン政権のころ、アメリカはソ連のスパイがカナダ企業のソフトウェア(パイプラインのバルブの自動制御技術)を狙っていることを察知し、あらかじめ不正コードを挿入して盗ませている。そして、パイプのバルブを閉じてポンプをフル稼働させるという論理爆弾を作動させ、シベリアのパイプラインを大爆発させている。
サイバー戦争に対する脆弱性の原因の一つは被害に気づきにくいこと。知的財産を盗まれても被害者は通常気づかない。
マイクロソフトの成功は低品質製品による市場支配。そもそも、マイクロソフトは重要システムに自社製品を採用してもらおうとは思っていなかった。しかし、軍や金融機関などの重要機関が特別あつらえのソフトよりも安いからという理由でマイクロソフト製品をどんどん採用した。以前は特注品ばかりだったが、同じ言語と同じOSが導入された結果、相互運用が促進され、全地球情報網(GIG)が構築された。これは米軍に大きな優位性を与える一方、大きな脆弱性をもたらした。心配になった国防総省はリナックスとユニックスの導入を検討。オープンソースOSなら不要コードを削れるし、ソースコードのバグを見つけやすい。一方、ウィンドウズのコードは秘匿されている。しかし、マイクロソフトが反撃し、結局、政府はマイクロソフト製品を購入し続けている。マイクロソフト製品はセキュリティに問題があるが、マイクロソフトはこれを深刻にとらえず、セキュリティ向上強制に反対するロビー活動を展開している(と、著者はかなりマイクロソフトに対して否定的)。
サイバー戦争力は、サイバー攻撃力、サイバー依存度、サイバー防御力の3点から捉えるべき。アフガニスタンは攻撃力はないがネットワーク依存度が低く、アメリカは攻撃力はあるが依存度も防御力も弱い。一方、中国はインターネット・インフラに関わる企業への政府支配が及びやすいため、新たな保安措置を導入しやすい。著者は、この観点からいくと、北朝鮮のサイバー戦争能力は非常に高く、ロシア、中国がそれに続く一方、アメリカは弱いという。
対策として、著者はバックボーン・ネットワーク、電力供給網、国防総省のネットの防衛強化を提唱する。
ある国家がサイバー戦争に参加すると、攻撃者は自らの攻撃経路を隠そうとするため、他国も引きづり込まれる可能性が高い。中国と敵対するベトナムがアメリカを紛争に引きずり込むためにベトナムが中国のふりをしてアメリカにサイバー攻撃をしかけてくるというシナリオすら想定できる。
著者は、アルカイダの資金を探して盗むために銀行システムへの侵入を計画したがクリントン政権の財務省首脳によって何度も反対されたという。アメリカの現行政策では諜報のための海外銀行へのハッキングは禁じられている。しかし、他国にこういった自律を期待できるかどうかはわからない。
中国が先制サイバー攻撃をするなら、まず、中国のネットワークとインターネットを遮断した上で、アメリカの電話インフラを攻撃することにより報復させないようにするだろう。
アメリカは、コンピュータ・ネットワークに依存し、重要システムの多くが民間企業に所有・運営され、かつ、これらの民間業者が政治的な力をもっているため政府の規制を頻繁に阻む、という弱点がある。
サイバー・スパイは、簡単で安上がり。ますます多くの国がスパイ活動をするようになるだろう。アメリカがサイバースパイ禁止条約みたいなものに調印しても、他国がちゃんと自制するかは疑問。ある国がサイバースパイを行っているかどうかを探知するのは不可能に近いから。
アメリカにとって本当に重要な資産は政府の機密事項ではなく知的財産である。知的財産を巡る戦争は世界のパワーバランスを揺り動かす(ちなみにここでも著者は中国を名指ししている。全体的に中国、ロシアあたりを敵視している)。
DARPA(国防総省国防高等研究計画局)は、TCP/IPに変わる軍事プロトコルを探している。インターネットは存在し続けるだろうが、安全で新しいイントラネットが使われるようになるだろう。
みたいな話。これはためになった。
曰く・・・
湾岸戦争のハイテク兵器をみて、中国は「数で圧倒してアメリカを打倒する」という軍事戦略を放棄し、情報支配による先制サイバー攻撃を重視する軍事戦略に変更した。中国軍の軍備がアメリカに追いつくには数十年かかるが、サイバー攻撃を組み合わせることによりアメリカと五分五分の戦いができるかもしれない。
中国政府は、マイクロソフトとシスコに狙いを定めている。政府調達からマイクロソフトを閉め出すと脅し、企業秘密であるOSのソースコードを提供させた。華為のルーターはシスコの模造。マイクロソフトのOSの欠陥とシスコのハードウェアの欠陥を入手しているので、中国はほとんどのネットワークを機能不全にできる。一方、中国は中国国内で販売されるマイクロソフト製品に独自のセキュリティ・コンポーネントを導入している。更に、オープンソースOSをベースにした独自OS「麒麟」を開発している。人民解放軍のシステムは麒麟を採用している。しかも、全世界のネットワークから中国国内のネットワークだけを遮断できる。
サイバー戦争からの利得が充分大きければ、中国は経済面のマイナスを甘受してでもあえて戦争をしかけてくる(ある国防総省の高官:匿名)。
サイバー攻撃の格好の標的はDNSサーバ。URLとIPアドレスを対応づけるテーブルを改ざんし、アクセス者を偽のウェブページに誘導する。おそらくは本物そっくりに作られた偽ページに誘導し、口座番号や暗証番号を入力させる。DNSは設計時にセキュリティがほとんど考慮されていない。あるISPと別のISPの接続箇所において最適経路選択を行うボーダー・ゲートウェイ・プロトコル(BGP)もターゲット。BGPには防御メカニズムはない。BGPテーブルの改ざんにより、トラフィックは迷子になる。インターネットのガバナンス欠如こそがインターネットの弱点である。
マルウェアのうち、ウィルス対策ソフトに発見されて対策が打たれるのはその10分の1にすぎない。
論理爆弾(ロジックボム)を仕掛けておき、必要時に起爆するという方法もある。起爆時にハードディスクのデータを消去したり、電圧上昇により回路を焼き切ったり、航空機のフラップを操作して急降下させたり、といったことを行う。アメリカの各省庁はこの論理爆弾を懸念している。アメリカの電力網のあちこちで論理爆弾が発見されている。
1980年代のレーガン政権のころ、アメリカはソ連のスパイがカナダ企業のソフトウェア(パイプラインのバルブの自動制御技術)を狙っていることを察知し、あらかじめ不正コードを挿入して盗ませている。そして、パイプのバルブを閉じてポンプをフル稼働させるという論理爆弾を作動させ、シベリアのパイプラインを大爆発させている。
サイバー戦争に対する脆弱性の原因の一つは被害に気づきにくいこと。知的財産を盗まれても被害者は通常気づかない。
マイクロソフトの成功は低品質製品による市場支配。そもそも、マイクロソフトは重要システムに自社製品を採用してもらおうとは思っていなかった。しかし、軍や金融機関などの重要機関が特別あつらえのソフトよりも安いからという理由でマイクロソフト製品をどんどん採用した。以前は特注品ばかりだったが、同じ言語と同じOSが導入された結果、相互運用が促進され、全地球情報網(GIG)が構築された。これは米軍に大きな優位性を与える一方、大きな脆弱性をもたらした。心配になった国防総省はリナックスとユニックスの導入を検討。オープンソースOSなら不要コードを削れるし、ソースコードのバグを見つけやすい。一方、ウィンドウズのコードは秘匿されている。しかし、マイクロソフトが反撃し、結局、政府はマイクロソフト製品を購入し続けている。マイクロソフト製品はセキュリティに問題があるが、マイクロソフトはこれを深刻にとらえず、セキュリティ向上強制に反対するロビー活動を展開している(と、著者はかなりマイクロソフトに対して否定的)。
サイバー戦争力は、サイバー攻撃力、サイバー依存度、サイバー防御力の3点から捉えるべき。アフガニスタンは攻撃力はないがネットワーク依存度が低く、アメリカは攻撃力はあるが依存度も防御力も弱い。一方、中国はインターネット・インフラに関わる企業への政府支配が及びやすいため、新たな保安措置を導入しやすい。著者は、この観点からいくと、北朝鮮のサイバー戦争能力は非常に高く、ロシア、中国がそれに続く一方、アメリカは弱いという。
対策として、著者はバックボーン・ネットワーク、電力供給網、国防総省のネットの防衛強化を提唱する。
ある国家がサイバー戦争に参加すると、攻撃者は自らの攻撃経路を隠そうとするため、他国も引きづり込まれる可能性が高い。中国と敵対するベトナムがアメリカを紛争に引きずり込むためにベトナムが中国のふりをしてアメリカにサイバー攻撃をしかけてくるというシナリオすら想定できる。
著者は、アルカイダの資金を探して盗むために銀行システムへの侵入を計画したがクリントン政権の財務省首脳によって何度も反対されたという。アメリカの現行政策では諜報のための海外銀行へのハッキングは禁じられている。しかし、他国にこういった自律を期待できるかどうかはわからない。
中国が先制サイバー攻撃をするなら、まず、中国のネットワークとインターネットを遮断した上で、アメリカの電話インフラを攻撃することにより報復させないようにするだろう。
アメリカは、コンピュータ・ネットワークに依存し、重要システムの多くが民間企業に所有・運営され、かつ、これらの民間業者が政治的な力をもっているため政府の規制を頻繁に阻む、という弱点がある。
サイバー・スパイは、簡単で安上がり。ますます多くの国がスパイ活動をするようになるだろう。アメリカがサイバースパイ禁止条約みたいなものに調印しても、他国がちゃんと自制するかは疑問。ある国がサイバースパイを行っているかどうかを探知するのは不可能に近いから。
アメリカにとって本当に重要な資産は政府の機密事項ではなく知的財産である。知的財産を巡る戦争は世界のパワーバランスを揺り動かす(ちなみにここでも著者は中国を名指ししている。全体的に中国、ロシアあたりを敵視している)。
DARPA(国防総省国防高等研究計画局)は、TCP/IPに変わる軍事プロトコルを探している。インターネットは存在し続けるだろうが、安全で新しいイントラネットが使われるようになるだろう。
みたいな話。これはためになった。
2012年2月19日に日本でレビュー済み
昨今世界を騒がせている、インターネットを介した「サイバー戦争」の書籍。
原著名が「Cyber War」だがこのタイトルは少々煽すぎというかネタ本に見られそうだが、中身は至って真面目。
著者はブッシュ政権でサイバーセキュリティ担当大統領補佐官として勤めたこともあり、その絡みで政治サイドへの分析も。
構成的には、各国の事例から現状の確認、そして今後に関してのコメント。
後半の論調は「統制不可能なインターネットとは別に、統制可能なネットワークを作り、軍事や金融、インフラ等致命的な箇所に関してはそちらで運用すべき」といった感じ。
訳も読みやすいほうなので、入門書に適していると思われる。
原著名が「Cyber War」だがこのタイトルは少々煽すぎというかネタ本に見られそうだが、中身は至って真面目。
著者はブッシュ政権でサイバーセキュリティ担当大統領補佐官として勤めたこともあり、その絡みで政治サイドへの分析も。
構成的には、各国の事例から現状の確認、そして今後に関してのコメント。
後半の論調は「統制不可能なインターネットとは別に、統制可能なネットワークを作り、軍事や金融、インフラ等致命的な箇所に関してはそちらで運用すべき」といった感じ。
訳も読みやすいほうなので、入門書に適していると思われる。
2011年5月7日に日本でレビュー済み
「サイバー戦争」? といってもピンと来ませんでした。
コンピューター犯罪とか、ハッカーと言っても
政府のHPの改ざんや、最近大手電気メーカーで起こったような
顧客のクレジット情報が盗まれる、ことぐらいのイメージでした。
しかし、サイバー戦争は、こんな程度ではありません。
今やあらゆる社会インフラがインターネットに接続していて、電話、電力、鉄道
航空管制、銀行のATMなど金融インフラ、石油パイプラインなどが攻撃の対象になります。
既にハッカーは、潜入した痕跡を残していて、もしかすると、
特定のキーで作動するプラグラムを埋め込んでいる可能性があるのです。
もし、サイバー戦争が仕掛けられると、こうしたインフラが
次々と停止、もしくは、誤作動を起こしていくのです。
原子力発電所だって、外部からそのシステムに潜入できる状態にあり、
冷却水を抜かれる!なんてことが、あり得るのです。
まさにこの本のタイトルどおり、「核を超える脅威」なのです。
しかも、誰から攻撃を受けているのか、わからず、
先進国ほど(インフラがネットワーク化されているので)
攻撃に弱いという点が、これまでの戦争を大きく違います。
サイバー戦争を理解し、その対応を早急に考えるべきでしょう。
コンピューター犯罪とか、ハッカーと言っても
政府のHPの改ざんや、最近大手電気メーカーで起こったような
顧客のクレジット情報が盗まれる、ことぐらいのイメージでした。
しかし、サイバー戦争は、こんな程度ではありません。
今やあらゆる社会インフラがインターネットに接続していて、電話、電力、鉄道
航空管制、銀行のATMなど金融インフラ、石油パイプラインなどが攻撃の対象になります。
既にハッカーは、潜入した痕跡を残していて、もしかすると、
特定のキーで作動するプラグラムを埋め込んでいる可能性があるのです。
もし、サイバー戦争が仕掛けられると、こうしたインフラが
次々と停止、もしくは、誤作動を起こしていくのです。
原子力発電所だって、外部からそのシステムに潜入できる状態にあり、
冷却水を抜かれる!なんてことが、あり得るのです。
まさにこの本のタイトルどおり、「核を超える脅威」なのです。
しかも、誰から攻撃を受けているのか、わからず、
先進国ほど(インフラがネットワーク化されているので)
攻撃に弱いという点が、これまでの戦争を大きく違います。
サイバー戦争を理解し、その対応を早急に考えるべきでしょう。