本作品は1978年6月に光文社から出版された森村氏の5年ぶりとなる書き下ろし小説です。あとがきで述べています。連載となると途中で新たな変更が出来ないけど、書き下ろしは完全に出来上がるまで発表されないので、納得いくまで構成を練れて手を加えられたと自信をみせています。
千葉県銚子の犬吠埼沖で銚子漁業協同組合所属の漁船50トン第三信栄丸の乗組員が女の“マグロ”(漁業用語で溺死者のこと)を発見したという生臭い話から始まります。銚子海上保安部で身元を調べた結果、東京から八丈島へ向かう連絡船フリージア丸に乗っていた宇根沢望と分かった。
一方、八丈島の民宿「黒潮館」の経営者、浜野太助は昨夜宿泊した二人の男女が八丈富士へ登ると言ったまま帰って来ないので気がかりで仕方なかった。捜索隊を出して八丈富士に通じる一帯を捜索した結果、溶岩の窪みの穴に死後変化によって人相はかなり変わっていたが、浜尾太助によって宿泊者の岩井輝子であることが確認された。
森村氏は、よく作中でその当時の社会の様子を詳しく描いていますが、本作では、若者に健全な旅行の宿として人気のあったユースホステルについて述べています。男女別室、6時起床9時就寝、喫煙飲酒不可という健全性と安価な宿泊費によって高校生以上の若い人たちに人気があった。
現在では、それほど人気は無くなってしまったが、主だった観光地には必ず有ることと当時より、大幅に規制が緩和されたことで外国人や一部の人に人気がある。
捜査員は和歌山県の勝浦にある海恵寺ユースホステルの宿泊名簿から二人が同宿していたことを突き止め、犬吠埼沖の溺死体と八丈富士の変死体が連続殺人事件であることが確認され捜査本部が立ち上げられた。ここまでの話の流れは森村氏の絶妙な仕立て方です。
更に面白いのは、宇根沢望と岩井輝子を殺害したと思われる二人の容疑者が浮かぶのだが、二人には完璧なアリバイがあるのだ。本書中盤から「フラッシュバック」という形で二人の会話が書き込まれていて犯人は特定できる。従って、ここからは犯人が初めから分かっていて徐々に犯人を追及していくという倒叙式の推理小説になっています。
結末は、相互殺人事件となるのだから奇想天外です。初心者マークが付くけどエレベーター密室殺人トリックも面白い。
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致死海流 (徳間文庫 も 1-35) 文庫 – 2003/10/1
森村 誠一
(著)
- 本の長さ364ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2003/10/1
- ISBN-104198919631
- ISBN-13978-4198919634
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2003/10/1)
- 発売日 : 2003/10/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 364ページ
- ISBN-10 : 4198919631
- ISBN-13 : 978-4198919634
- Amazon 売れ筋ランキング: - 2,097,054位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1933年、埼玉県熊谷市生まれ。青山学院大学卒。ホテルマンを経て作家となる。’69年『高層の死角』で第15回江戸川乱歩賞、’73年『腐蝕の構造』 で第26回日本推理作家協会賞を受賞。2003年には第7回日本ミステリー文学大賞を受賞した。ミステリーを中心に、歴史小説、ノンフィクションなど、多 岐にわたる分野で活躍(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 復活の条件 (ISBN-13: 978-4334076955 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)