作者初の現代アクション作品が、文庫化されたようですね。
血で血を洗うバーサーク描写の連続ですが、力を振るう事の快楽、魅力を充分に（それが誰の中にも在ると自覚し）受け止めつつも、それに溺れる事はありません。
何かを喪失（本作品では記憶、過去）した主人公への、これから自分はどうするか？ という問いかけ＆選択の突き付けと、弱者や迫害される者達への視点がメインとなっているのはいつもと同じというか、作者の根元的なテーマなのでしょう。
「臭いものには蓋をしろ」的な、社会の一元的視点への怒りの余り、筆が滑ってそういった描写が続いてしまうシーンが見受けられるのも毎度の事ですが、もう慣れました。
あとがきに映画「レオン｣(とははっきり書いてませんが）との類似性を指摘されたとありましたが、あれは少女の視点を描いたように見せつつ、少女というイノセントな存在を描きたいという作り手の妄想の心地良さで終わってしまっている気がします。
それゆえ甘い感傷を味わえるのでしょうが。
実は自分がくそったれな人間だったと認識した男と、最低な人生を強いられてきた少女が一緒にそれに立ち向かい、今日と明日を切り開いていく本作品の方が、私はもっと心地良く晴れやかな気持ちになれました。
この作家の作品、落ちがちょっと駆け足になってしまい、惜しいなと思うこともあるのですが、本作品はとても上手くいっていると思います。
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