こんなに読み入った本は久しぶりでした。主役が各方面での成功者である”世にも奇妙な物語”、といった話で、面白かったです。
これが解説で言われるように「百物語」的小説というならば、もうシリーズ化していくつも出してほしいと願うくらいですが、今のところこの本を含め2冊までしか出ていません。この素晴らしい世界観には、もったいないくらいだと思います。
短編小説でありながら、最後のヤクザの章では、作中全体を通じたメッセージ性がオチとなっていて、それが沙高樓というひとつの場所で物語が語られていくという構成と非常にマッチしています。文学が如何に深いものかを思い知らされます。読み手もまたこの沙高樓のラウンジにいて話を聞いているような感覚で、それも面白かったです。
その道の成功者たちが語り手となって、専門的な話のなかに、不思議で奇妙な点がどんどん広がっていきます。その不思議さは、語られること本来の不思議さと、語り手の巧妙な仕掛け、語り方とが入り交じったものになっており、その独特な違和感が、最後の章で重要な役割を果たしていました。
個人的に最もワクワクしたのは、どの話でも、あるいは沙高樓それ自体も、”肝心なところ”が徹底してこちらの想像に委ねられて、語られないというところです。
ただ、前述した通り、語り手はみんなその道の成功者たちです。著者の浅田先生は一体どこまで深く広い方なんだと驚くほどに、各方面の専門的な話が展開されます。興味深い話でありながら、共感は難しいので、これもまた沙高樓の世界観であると理解した上で読んでいかないと、なかなかページが進みにくくなるかもしれません。
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沙高樓綺譚 (徳間文庫 あ 28-4) 文庫 – 2005/11/1
浅田 次郎
(著)
各界の名士たちが集う「沙高楼」。世の高みに登りつめた人々が、女装の主人の元、今夜も秘密を語り始める??。やがて聴衆は畏るべき物語に翻弄され、その重みに立ち上がることもできなくなるのだ。卓抜なる語り部・浅田次郎の傑作ミステリー。
- 本の長さ356ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2005/11/1
- ISBN-104198923299
- ISBN-13978-4198923297
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登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2005/11/1)
- 発売日 : 2005/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 356ページ
- ISBN-10 : 4198923299
- ISBN-13 : 978-4198923297
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,572,230位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1951年、東京都出身。1995年『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、1997年『鉄道員』で直木賞、2000年『壬生義士伝』で柴田錬三郎賞、2006年『お腹召しませ』で中央公論文芸賞と司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で吉川英治文学賞を、それぞれ受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 終わらざる夏 上 (ISBN-13: 978-4087713466 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2024年1月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一つの節が長いが時間が経つのを忘れて一気に読んでしまいかねない面白さ。
2015年10月18日に日本でレビュー済み
誰しもが抱える心の闇を、手放す(話す)ことで、重荷がスッと軽くなる。 言えると癒える。
本来ならば、墓場まで黙っているべきことでも。
毒気があるネタかな、でも、オーナーに女装家をもってくるなら、もう少しスポットがあたっても・・・。
本来ならば、墓場まで黙っているべきことでも。
毒気があるネタかな、でも、オーナーに女装家をもってくるなら、もう少しスポットがあたっても・・・。
2018年9月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本のお話は読むだけで知識と知恵がつきます。また、その知らない世界の絵 が面白く嬉し楽しい。小説の形をとった人生模様でしょう。読んで知らない世界を知ることができる、これ大きなメリット。
歳を経て蓄積された作者の知識と世の中のシステムの様子が透けて見えます。面白い、この一言に尽きます。
歳を経て蓄積された作者の知識と世の中のシステムの様子が透けて見えます。面白い、この一言に尽きます。
2021年5月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
そんな時代、そんな人生があってもおかしくないんやろなという短編集。
2016年7月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
さすが、浅田次郎先生!
あっという間に読んでしまいました。
次のも買おうと思います。
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2019年5月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「ゆうちゃんの声がなにも聞こえないの」
リンちゃんの愛らしさとかしつこさだとか女のすべてを表して
抱きしめたいような、逃げ出したいような、じれったいのが良かったです。
リンちゃんの愛らしさとかしつこさだとか女のすべてを表して
抱きしめたいような、逃げ出したいような、じれったいのが良かったです。
2015年2月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
沙高樓に集う人々のとっておきの話に釘づけです。読みはじめると区切りの良いところまで行かないと安心できない小説です。まるで自分もそのメンバーの
一人と錯覚させられそうな展開です。
一人と錯覚させられそうな展開です。