徳間書店が主宰する日本SF新人賞の第11回の受賞作。新人ながら1961年生まれと、ちょっと遅咲き。著者略歴を読むと東京理科大理学部化学科卒で現在、公務員とのこと。
なるほど、その経歴にふさわしく、人類が植民した惑星における新種の森林熱症候群という設定やその説明も非常にリアル。また、解説で山田正紀氏が書いているように、危機管理における行政の対応などについても非常にリアルだ。
ストーリーも、一方ではその症候群の原因解明や蔓延している薬物の取り締まり、さらにはその惑星で流行っているスカイダイビングに情熱を燃やす青年など、いくつかのストーリーを並行的に進めながら、最後の場面に収斂させていくのは見事だと思う。環境問題についての示唆もあり、なかなか面白かった。
ただ、あまりにも整った展開と結末(あえて書かないけど)のために、この小説に付けられた「冒険SF」の「冒険」のところが、逆に薄くなってしまっているのが残念。SFか否かにかかわらず、冒険小説の醍醐味は、登場人物が危難に遭遇し、そこからどう切り抜けるか、どう振舞うのかにあるのに、この小説では、予定調和的であまり意外ではない。そのため、登場人物の魅力も伝わってこない。
でも、とても面白い小説だった。これを自分より年上の公務員の人が書くとはね。未来の情報処理の描き方もとてもリアルで、よく書けていると思う。
次作に期待したい。
それにしても、良作を生み出してきた日本SF新人賞が終わってしまうのは残念。
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樹環惑星――ダイビング・オパリア―― (徳間文庫) 文庫 – 2010/11/5
自治惑星オパリア。人類の居住地域は高地に限られており、その周囲は深い森に覆われていた。森は多様な化学物質を放出している。そんなオパリアで、新型の感染性低地熱が発生。森の研究を続ける生態学者シギーラが現地に飛ぶ。一方星間評議会機構に属する諸世界では、違法の新型麻薬が蔓延。危機管理局員ジーマは、その源がオパリアの森にあると推定。森の利権を握るアストラジェニック社との確執はいかなる事態を巻き起こすことに……。
- 本の長さ471ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2010/11/5
- ISBN-104198932514
- ISBN-13978-4198932510
商品の説明
出版社からのコメント
第11回日本SF新人賞受賞作。選考委員長の山田正紀氏が大推薦。森で覆われた奇妙な惑星を舞台とする、冒険SFの快作。
著者について
1961年、新潟県生まれ。東京理科大学理学部化学科卒業。公務員。本書で第11回日本SF新人賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2010/11/5)
- 発売日 : 2010/11/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 471ページ
- ISBN-10 : 4198932514
- ISBN-13 : 978-4198932510
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,313,201位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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