初版上下二巻本を友人だと思っていた奴に貸したら、ついに返って来なかった。
つい最近、生涯の親友だと信じていたT・Nにも騙され、かつての外道の件を憶い出し文庫版を購入。
第一巻の白眉は、P93~の小林多喜二。
共産党員だったため、張り込みをしていた刑事たちに追われて逃走。
「逃げながら足袋はだしとなり、着ていたトンビ(当時の外套の一種)もぬぎすてたが、
溜池の電車通りで格闘の末逮捕され、築地署に連行された」
「留置場で寒さのために意識を回復し、便所にゆこうとしたが歩行不能で、かつがれていった」
「出た大便も小便も真っ赤であった」
「拷問による腸や泌尿器の出血のためであった」
「それから十分ばかりして、彼は絶命した」
官憲の横暴は昔から万民に知られるところだが、戦前戦中の凄味を思い知らされる。
それにしても、あの頃の特高には、専門の拷問係(須田巡査部長)まで設置されていたことに驚く。
以下は多喜二の親友かつ同志でもある、詩人橋爪健の『多喜二虐殺』からの抜粋。
「硬直して土色に青ざめた顔は、極度の苦痛のため筋肉がよじれきって、まるで別人のような凄まじい形相だった」
「その左のこめかみが直径一寸ぐらいの皮が丸くはぎとられて、肉の露出した傷口にドス黒い血痕がこびりついていた」
「頬には鋭いキリを突き刺したような傷あとがいくつもあり」
「顎の下がわは釘ぬきでえぐられたようにささくれだって黒血がひからびついていた」
この後、もっともっと悲惨な描写と、家族の並々ならぬ悲嘆の様子が続く。
共産党員とユダヤ人は「強硬さ」という点において近似だが、これだけ、あれだけ仲間が悲惨な目に遭えば、さも有りなん。
著者は東京医科大卒の理系であり、敗戦の要因を「科学、科学的教育の不手際」と断言。
核家族化が進み、身近な死を体験し難くなった1980年代半ば、「死のポルノグラフィー化」を警告する風潮があった。
本書が出たのは、まさにその時期であり、あの時代に「死のデータベース化」を試みるとは!
現代に必要なのは「科学的考察・思考」であり、対極にあると錯覚されがちな文学も、それを必要としている。
そういった意味では、荒俣宏の快(怪?)著『理科系の文学史』との併読をお薦めしたい。
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人間臨終図巻1<新装版> (徳間文庫) 文庫 – 2011/11/2
山田 風太郎
(著)
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安寧のなかに死ぬか、煉獄の生を終えるか? そして、長く生きることは、幸せなのか? この人々は、あなたの年齢で、こんな風に死にました……。戦後日本を代表する大衆小説の大家・山田風太郎が、著名人(英雄、武将、政治家、作家、芸術家、芸能人など)、923人の死に様を切り取った、稀代の名著。読みやすくなって新装版で登場!
- 本の長さ445ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2011/11/2
- 寸法10.7 x 1.7 x 14.9 cm
- ISBN-104198934665
- ISBN-13978-4198934668
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商品の説明
出版社からのコメント
戦後を代表する大衆小説の大家、山田風太郎氏没後10年。稀代の名作が活字も大きくなって新装版で登場! 全4巻。
著者について
1922年生まれ、2001年没。推理小説、忍法帖、明治ものなどで名を馳せた、戦後日本を代表する娯楽小説の大家。『誰にも出来る殺人』『甲賀忍法帖』『警視庁草紙』など、著書多数。2000年、第4回日本ミステリー文学大賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2011/11/2)
- 発売日 : 2011/11/2
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 445ページ
- ISBN-10 : 4198934665
- ISBN-13 : 978-4198934668
- 寸法 : 10.7 x 1.7 x 14.9 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 33,308位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 194位徳間文庫
- カスタマーレビュー:
著者について
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1922年、兵庫県生まれ。東京医科大学卒業。47年、「宝石」新人募集に応募した「達磨峠の事件」がデビュー作。48年「眼中の悪魔」で第2回探偵作家 クラブ賞短編賞を受賞。その後「甲賀忍法帖」を始めとした忍法帖シリーズなどを精力的に発表した。2000年、日本ミステリー文学大賞受賞。01年7月死 去(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 八犬傳 下(新装版) (ISBN-13: 978-4331614044)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年1月20日に日本でレビュー済み
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それでも気になって読み進めた。
古今東西の有名人の臨終までの記録。
でも注意しないと自分が知っている話と違うものもあった。
ジャンルは小説(と思っている)なのでそれでもいいと思うが、違いすぎるものは遺族からクレームがあったかもしれない。
それにしても、自分には気が重くなるものも少なからずあった。
第二巻を手に取るのは少し先となりそう。
古今東西の有名人の臨終までの記録。
でも注意しないと自分が知っている話と違うものもあった。
ジャンルは小説(と思っている)なのでそれでもいいと思うが、違いすぎるものは遺族からクレームがあったかもしれない。
それにしても、自分には気が重くなるものも少なからずあった。
第二巻を手に取るのは少し先となりそう。
2023年5月3日に日本でレビュー済み
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後何年生きるのだろう?意外に短いかも知れないと思う日々。まだ読んでいない名著はないか?いや、でもその存在すら知らないのでは?
というわけでひょんなことからこの本の存在を知り読んでみてびっくり。こんな本があったとは。なんで今まで読まなかったのだろう?後にも先にもこういう本は出ないだろうな。
読み応えもあり、知らない文言は辞書を引き引き読みました。著者の辛辣な言葉もあって読ませる。
4巻は100歳以上?と思ったら3巻と全く同じだった。新装版かどうかで違うのだった。
一言「風邪は万病のもと」
というわけでひょんなことからこの本の存在を知り読んでみてびっくり。こんな本があったとは。なんで今まで読まなかったのだろう?後にも先にもこういう本は出ないだろうな。
読み応えもあり、知らない文言は辞書を引き引き読みました。著者の辛辣な言葉もあって読ませる。
4巻は100歳以上?と思ったら3巻と全く同じだった。新装版かどうかで違うのだった。
一言「風邪は万病のもと」
2023年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
昔、人に勧められて読んだのを、歳を取ったので読み直そうかと思い購入。1巻から4巻まで。
それぞれの人について、もっと知りたい気がしました。作者が医師の資格を持っているので、もう少し医学的なことも加えれば面白かったのにと残念です。
それぞれの人について、もっと知りたい気がしました。作者が医師の資格を持っているので、もう少し医学的なことも加えれば面白かったのにと残念です。
2022年3月1日に日本でレビュー済み
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さすがの文章!生きることの素晴らしさが伝わってきます。おもしろいです
2022年1月24日に日本でレビュー済み
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歴史上、ほとんどの人が知っている人々の臨終模様。受験のために暗記したものが大半だが、確かに彼らは存在し、その時代を生き、何かを残し、そして没していったのだ。
2021年6月17日に日本でレビュー済み
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ふと興味を持って読み始めたのですが、面白くて一気に読破しました。
人の死がこんなに多様で、こんなにドラマティックなものだとは知りませんでした。
それから、出版当時と現在とでは、病名が変わっている点がありましたので、念のために指摘しておきます。
「精神分裂病」→「統合失調症」
「精薄」→「知的障害」または「精神遅滞」
人の死がこんなに多様で、こんなにドラマティックなものだとは知りませんでした。
それから、出版当時と現在とでは、病名が変わっている点がありましたので、念のために指摘しておきます。
「精神分裂病」→「統合失調症」
「精薄」→「知的障害」または「精神遅滞」
2017年3月28日に日本でレビュー済み
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一巻から四巻をまとめ買い。一気に読むと感覚が麻痺してくるので、時間を置いてつまみ読みしています。
私自身、購入前にどんな内容かとても知りたかったので、全巻跨っての抜粋です。
土の匂いのする童話を書いた宮沢賢治(一巻)は、無理に面会を申し出る農夫に病をおして応じ、それが死の一因となった。
凄惨な『蟹工船』を書いた小林多喜二(一巻)は、自身も激しい拷問を受けて死亡。
海賊掃討に出向いて自ら海賊となったキャプテン・キッド(二巻)は首吊り刑に処された後、遺体にタールを塗られテムズ河に晒され、数年間他の船乗り達への見せしめとなった。
喜劇王チャプリン(四巻)は人付き合いの良さと人間嫌いの両面があったが、晩年は後者を押し通した。クリスマスの朝に老衰で亡くなり、その翌年に棺ごと遺体が盗まれた。
『シャーロックホームズ』のコナン・ドイル(三巻)は良識な紳士であり、柳の椅子に座り家族に見守られて静かに目を閉じた。
『解体新書』の杉田玄白(四巻)は虚弱な体質だったが、節制と勤勉な運動を心掛けて大長命を保ち、晩年まで往診に歩いた。
大阪の句会の後病床についた松尾芭蕉(二巻)は「一生を旅で過し草をしき土を枕にして死ぬ自分を覚悟していたが、大勢の人々につきそわれて死ぬとは冥加につきる」と涙を浮かべた。
その人の生前の魂の在り様みたいなものが感じられて、はぁーと感嘆することしきりです。
病や自殺など痛々しい最後の方もいるので時折辛くなりますが、それでも読み込んでしまいます。
豊臣秀吉(二巻)の辞世の句は他人の代作だろう、
32才で暗殺された坂本龍馬(一巻)はもう十年長生きしたら後の小説や映画のヒーローにはならなかったに違いない、
妻と愛人について詩を作った高杉晋作(一巻)はいい気なものだ、
等々、著者の山田風太郎先生の冷静な考察と突っ込みが所々に入ります。けれどそこが味わい深くて良いです。
個人的には、江戸川乱歩(三巻)、横溝正史(四巻)での著者の個人的な記載が印象に残りました。
乱歩先生の告別式に出席された際の文章は静謐で美しく、激励のつもりで横溝氏に送ったハガキのやり取りには思わず笑ってしまいました。
私自身、購入前にどんな内容かとても知りたかったので、全巻跨っての抜粋です。
土の匂いのする童話を書いた宮沢賢治(一巻)は、無理に面会を申し出る農夫に病をおして応じ、それが死の一因となった。
凄惨な『蟹工船』を書いた小林多喜二(一巻)は、自身も激しい拷問を受けて死亡。
海賊掃討に出向いて自ら海賊となったキャプテン・キッド(二巻)は首吊り刑に処された後、遺体にタールを塗られテムズ河に晒され、数年間他の船乗り達への見せしめとなった。
喜劇王チャプリン(四巻)は人付き合いの良さと人間嫌いの両面があったが、晩年は後者を押し通した。クリスマスの朝に老衰で亡くなり、その翌年に棺ごと遺体が盗まれた。
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『解体新書』の杉田玄白(四巻)は虚弱な体質だったが、節制と勤勉な運動を心掛けて大長命を保ち、晩年まで往診に歩いた。
大阪の句会の後病床についた松尾芭蕉(二巻)は「一生を旅で過し草をしき土を枕にして死ぬ自分を覚悟していたが、大勢の人々につきそわれて死ぬとは冥加につきる」と涙を浮かべた。
その人の生前の魂の在り様みたいなものが感じられて、はぁーと感嘆することしきりです。
病や自殺など痛々しい最後の方もいるので時折辛くなりますが、それでも読み込んでしまいます。
豊臣秀吉(二巻)の辞世の句は他人の代作だろう、
32才で暗殺された坂本龍馬(一巻)はもう十年長生きしたら後の小説や映画のヒーローにはならなかったに違いない、
妻と愛人について詩を作った高杉晋作(一巻)はいい気なものだ、
等々、著者の山田風太郎先生の冷静な考察と突っ込みが所々に入ります。けれどそこが味わい深くて良いです。
個人的には、江戸川乱歩(三巻)、横溝正史(四巻)での著者の個人的な記載が印象に残りました。
乱歩先生の告別式に出席された際の文章は静謐で美しく、激励のつもりで横溝氏に送ったハガキのやり取りには思わず笑ってしまいました。