著者のデビュー作にして、『海底密室』(徳間デュアル文庫刊)とは姉妹作にあたるSFミステリーの文庫化。
(『海底密室』の主人公・遊は『M.G.H.』の主人公・凌の叔母)
主人公は新婚カップルの向けの懸賞宇宙旅行のために従姉妹の舞衣と偽装結婚して宇宙ステーションの白鳳に行くことになったが、そこで殺人事件が発生して……
私は『海底密室』(話の時系列ではこちらが古い)を先に読んだのでこれを基準に考えると両作品には類似点が多い。
どちらも宇宙・海底という場所は違っても容易に他者が入り込めない場所で、偶然居合わせた者たちの間で連続殺人事件が起こる。
これは本格推理小説の定番<嵐の山荘>の要素を取り入れている。
そして、「誰が、何故殺したか?」ではなく「誰が、どの様に殺したか?」というロジックを優先させた<ハウダニット:How done it>要素を取り入れたやや本格推理小説よりのミステリー小説と言える。
そして、ワトスン役に高度な解析プログラムで構成されたAIが登場する点も同じ。
海底と宇宙という場所自体が殺人事件の大掛かりな舞台装置となっているのが斬新である。
どちらも、かなり細かく舞台が練りこまれた秀逸な作品。
「SF+ミステリー」「SF+ファンタジー」「ファンタジー+ミステリー」などいろんなジャンルを掛け合わせた小説は結構あるが、駄作が結構多い。
だが『M.G.H.』と『海底密室』はSFとミステリーがうまく融和した傑作です。
個人的な意見ですが、三雲さんはこの手の作品の方が向いているし、文才を遺憾なく発揮できるような気がします。
私には他の作品(『レベリオン』・『ランブルフィッシュ』など)よりも読み応えがあり、面白いです。
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M.G.H.: 楽園の鏡像 (徳間デュアル文庫 み 1-3) 単行本 – 2006/6/1
日本初の多目的宇宙ステーション『白鳳』で発生した、不可解な出来事。無重力の空間をゆっくりと漂う死体は、まるで数十メートルの高度から“墜落”したかのようだった。果たして、事故なのか、事件なのか? 従兄弟の森鷹舞衣の“計略”により、偽装結婚をして『白鳳』見学に訪れていた若き研究者・鷲見崎凌は、謎の真相を探るため、行動を開始することとなる……。斬新な設定とスマートな論理的解決で、各界に衝撃を与えた本格SFミステリー。第1回日本SF新人賞受賞作品がついに文庫化!!
- 本の長さ349ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2006/6/1
- ISBN-104199051600
- ISBN-13978-4199051609
登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2006/6/1)
- 発売日 : 2006/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 349ページ
- ISBN-10 : 4199051600
- ISBN-13 : 978-4199051609
- カスタマーレビュー:
著者について
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1970年大分県生まれ。横浜市在住。’98年に『コールド・ゲヘナ』で第5回電撃ゲーム小説大賞“銀賞”を受賞し、デビュー。’99年に『M.G.H.楽園の鏡像』で第1回日本SF新人賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『少女ノイズ』(ISBN-10:4334747582)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
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2009年11月7日に日本でレビュー済み
わたしがオッサンなんでしょうか、この主人公設定にはあまり感情移入ができなかった。
それと10年前の作品なのでしょうがないのでしょうが、登場するガジェットがどれも手垢まみれ。まあ、これはSF作品の宿命なので仕方ないでしょう。それでも10年前にもこれらはすべて元になるものがあったと思うけど。
ハードSFではなく、ラノベSFって感じですかねえ。
若い人には受けそうだと思いました。
それと10年前の作品なのでしょうがないのでしょうが、登場するガジェットがどれも手垢まみれ。まあ、これはSF作品の宿命なので仕方ないでしょう。それでも10年前にもこれらはすべて元になるものがあったと思うけど。
ハードSFではなく、ラノベSFって感じですかねえ。
若い人には受けそうだと思いました。
2010年4月3日に日本でレビュー済み
第1回日本SF新人賞受賞作
SF的設定を活かした本格ミステリ
多目的宇宙ステーションの無重力の空間に漂う「墜落したような」死体の謎を探る
2000年に単行本として出版された作品の文庫化
仮想現実と現実の差についての議論は、2010年の現在においては少々陳腐化してしまった感も・・・
SFならではの特殊な設定を上手に活かし、興味深い「謎」を提供してくれます
SF的設定を活かした本格ミステリ
多目的宇宙ステーションの無重力の空間に漂う「墜落したような」死体の謎を探る
2000年に単行本として出版された作品の文庫化
仮想現実と現実の差についての議論は、2010年の現在においては少々陳腐化してしまった感も・・・
SFならではの特殊な設定を上手に活かし、興味深い「謎」を提供してくれます
2007年11月8日に日本でレビュー済み
思考の目的は、自分のことを他人に伝えることではない。理解することだ。理解できない、物理現象や、歴史や、自然や社会を。
そして自分以外の誰かを受け入れようとすることだ。それが思考の存在価値だ。
なるほどなあ〜〜と思った作中の文章であります。
そして自分以外の誰かを受け入れようとすることだ。それが思考の存在価値だ。
なるほどなあ〜〜と思った作中の文章であります。