安定した面白さです。
絵柄が、『それ町』の終盤の頃の雰囲気に変わっていますが、
表現力が増した分、ギャグとして面白く仕上がっています。
ダメ人間を中心とするナンセンス系で、ダジャレで落とすことも
しばしば。
特に、『ひとで』と題された4コマなど、単にリズムと勢いで
描いておいて、ここまでバカバカしく笑えるなど、拍手ものです。
一方で、新興宗教や心霊、宇宙人など、非日常的なネタについても
造詣が深く、ちょっとしたSFとして、十分に成り立ちます。
ただ、本巻で『憑かれた』オチが増えた気がします。
悪くはありませんが、パターンとして特殊なので目立ってしまい、
ちょっと残念に思います。
とは言え、全てが水準以上の濃厚な話で、油断がなりません。
特に、多くの人が「ほっこりする」「ほのぼのした」という
第一印象をそのままに受け取ってしまいがちですが、その中に
女性は土俵に上がれない話題や、有名ユーチューバーといった
油断のならない小ネタを、遠慮なしに突っ込んでくる辺りは、
『社会派』と称しても、過言ではないでしょう。
クスッと笑わせておいて、はたと気づかせる。
合気道の達人に膝カックンされたような気分になります。
全体が緩く繋がってはいますが、どこから読んでも問題なし。
寝る前に、パッと開いて読み進め、寝落ちしても影響なし。
催眠導入剤のような役割も果たせます。
なるほど、電子版などでは、ランダムに話を読める機能があれば、
さらに面白さが倍加するのに、と思う、今日この頃です。