>言葉は「歌」から始まった。そして、心はひとりじゃ生まれなかった。
この惹句に惹かれて購入。
様々な楽しい知見もさることながら、講師の岡ノ谷一夫氏がふと垣間見せる魂の「深さ」に驚く。
それが高校生たちのやわらかい魂に共鳴してゆく。
特に第4章「つながるために、思考するために(心はひとりじゃ生まれなかった)」がよい。
>僕は自分のお母さんに「どう考えても、あなたはロボットだと思う」と伝え、でも、こう考える自分がおかしいと思うので、病院に連れてってくださいと頼み、病院に行きました。いろんな検査を受けて、お医者さんんも困り果てて、「心の病気です」と言われました。そんなことは最初から、自分でわかっていたのにね。(中略)2週間くらい入院していたと思います。先生がクラス全員に書かせた手紙をもってきてくれて、その中に僕の好きだった女の子の手紙もあり、それを読んだら優しいことが書いてありました。人を好きになる気持ちを思いだしたら、なんだか治ってしまいました。(p228)
ここには、自分とは「分有」されたものであるという「こころの他者起源説」の実体験がある。
「意識」の問題は、「意識」の側から考える限り、自己言及のトートロジーに陥り、「意識」の濃淡しか表現しない。
哲学や文学がさんざんやり尽くした袋小路を、岡ノ谷氏は進化生物学という学問の方法で、別次元の括弧に入れ、観察する。
この観察の知見がスリリングで面白い。
他人のこころに気付くということから反照されて自分のこころが生まれるということ。こころの問題を、こころの内側からではなく観察可能な外側から、生物の進化の道筋から検討してゆく。
進化という大きな時間の流れを対象化した科学者が、自己史というナイーブな時間の襞を大切にしながら、魂のやわらかい高校生達に講義してゆく。
最後、「愛と死をみつめて」の大島みち子の日記を紹介しながら、
>家族と過ごす、恋人と過ごすことはどちらも大切なことです。そうしているうちに、時間は過ぎてゆき、死を迎えるのも、幸せな死に方です。でも、僕はできれば、残された最後の時間は、自分自身とのコミュニケーションに過ごしたいと思います。死んでゆく自分自身を、歴史の中でもういちど考えてみたい。
そのような時間が、言葉と心をもってしまった人間が死に行く前に味わうべき時間だと思います。(p278)
この言葉が、まるで祈りのように響いてくる。
楽しい科学の啓蒙書でありながら、一研究者の実存も浮かび上がる美しい本である。
軽妙な線のイラストもいい感じ。
紹介された、踊るオウム、スノーボールの動画も愉快でした。
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「つながり」の進化生物学 単行本(ソフトカバー) – 2013/1/25
岡ノ谷 一夫
(著)
伝え合い、通じ合い、つながる――言葉で心を伝えるのがコミュニケーションだ。
では、私たちが発する「言葉」と「心」は、どこから生まれた?
「ヒトのはじまり」の謎に楽しく迫る、高校生への連続講義。
メス鳥が媚びをうる? 声マネして、ダンスするゾウ?
感情の「踊る砂時計」モデル。「笑顔」で人をだませない理由とは?
「人間くさい」動物たちと、ユーモアあふれる最先端研究から、言葉と心の起源が見えてくる。
言葉は「歌」から始まった。そして、心はひとりじゃ生まれなかった。
「コミュニケーション能力が大事」なんて世間のルールより、「ヒトはどんな生物か」を知ることが、人間をしあわせにする。
私たちの心は、進化の贈り物だ。
では、私たちが発する「言葉」と「心」は、どこから生まれた?
「ヒトのはじまり」の謎に楽しく迫る、高校生への連続講義。
メス鳥が媚びをうる? 声マネして、ダンスするゾウ?
感情の「踊る砂時計」モデル。「笑顔」で人をだませない理由とは?
「人間くさい」動物たちと、ユーモアあふれる最先端研究から、言葉と心の起源が見えてくる。
言葉は「歌」から始まった。そして、心はひとりじゃ生まれなかった。
「コミュニケーション能力が大事」なんて世間のルールより、「ヒトはどんな生物か」を知ることが、人間をしあわせにする。
私たちの心は、進化の贈り物だ。
- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日出版社
- 発売日2013/1/25
- 寸法12.8 x 1.9 x 18.8 cm
- ISBN-104255006954
- ISBN-13978-4255006956
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商品の説明
著者について
岡ノ谷一夫(おかのや・かずお)
東京大学大学院総合文化研究科教授。科学技術振興機構岡ノ谷情動情報プロジェクト研究総括。
理化学研究所脳科学総合研究センター情動情報連携チームリーダー。
1959年生まれ。慶応義塾大学卒業。米国メリーランド大学大学院修了、博士号取得。千葉大学文学部助教授、理化学研究所チームリーダー等を経て現職。
専門は生物心理学、動物行動学、言語起源論。
著書に『さえずり言語起源論』、『ハダカデバネズミ』(共著、共に岩波科学ライブラリー)、『言葉はなぜ生まれたのか』(文藝春秋)、『言葉の誕生を科学する』(共著、河出書房新社)などがある。
趣味は、撥弦楽器(ギター、リュート)演奏、短歌詠み、模型工作。
東京大学大学院総合文化研究科教授。科学技術振興機構岡ノ谷情動情報プロジェクト研究総括。
理化学研究所脳科学総合研究センター情動情報連携チームリーダー。
1959年生まれ。慶応義塾大学卒業。米国メリーランド大学大学院修了、博士号取得。千葉大学文学部助教授、理化学研究所チームリーダー等を経て現職。
専門は生物心理学、動物行動学、言語起源論。
著書に『さえずり言語起源論』、『ハダカデバネズミ』(共著、共に岩波科学ライブラリー)、『言葉はなぜ生まれたのか』(文藝春秋)、『言葉の誕生を科学する』(共著、河出書房新社)などがある。
趣味は、撥弦楽器(ギター、リュート)演奏、短歌詠み、模型工作。
登録情報
- 出版社 : 朝日出版社 (2013/1/25)
- 発売日 : 2013/1/25
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 296ページ
- ISBN-10 : 4255006954
- ISBN-13 : 978-4255006956
- 寸法 : 12.8 x 1.9 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 312,468位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年6月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
日本人は自我の確認においてつながりがキーワードといわれるが、それをコミュニケーションの視点から、さらに、鳥類や哺乳類、進化のプロセスから解き明かす(とらえなおす)ことは新鮮で面白いと思いました。
2015年3月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
テレビで見て欲しく成りましたが読んで又楽しい、偶に読むにはいいかな
2013年1月27日に日本でレビュー済み
前著『小鳥の歌からヒトの言葉へ』(岩波科学ライブラリー)で、ジュウシマツの歌のなかに「文法の種」を探り当て、また共著『ハダカデバネズミ』(岩波科学ライブラリー)では、裸で出っ歯のネズミたちがつくるユニークな社会を紹介した著者。本書は、そんなおもしろい研究を続けている著者による、待望の最新刊である。
本書の主題は、コミュニケーションと心。全4回の講義で、コミュニケーションの生物学的定義、言葉の起源、感情を表す正直な信号、そしてつながるためのコミュニケーションなど、関連するトピックを縦横無尽に論じている。もちろん、ジュウシマツにハダカデバネズミ、それに歌うテナガザルやダンスをするゾウといった、愛すべき動物たちが今回も登場している。
なかでも興味深かったもののひとつが、単語と意味についての「相互分節化仮説」だ。言葉の誕生以前に、たとえばわれわれの狩りと食事の際にそれぞれ歌が歌われていたとしよう。そこで、それらの歌における共通フレーズが切り出され、そしてそれが状況と対応づけられ、やがて(たとえば「みんなで○○しよう!」という)意味をもつようになった、というのである。こういった説がどれほど妥当するものなのか、「(感情の)踊る砂時計モデル」や「心の他者起源説」などとともに、ぜひ本書を読んで検討してみてほしい。
また、内容のみならず、「つくり」もすぐれている本書である。とくにハダカデバネズミの「弱チュー鳴き」やジュウシマツの見事な歌が出版社のウェブサイトで聴けたのは、読者としてなんともうれしいところ。
そんなこんなで、本当にワクワクさせてもらった1冊であった。待っていた甲斐あり。
本書の主題は、コミュニケーションと心。全4回の講義で、コミュニケーションの生物学的定義、言葉の起源、感情を表す正直な信号、そしてつながるためのコミュニケーションなど、関連するトピックを縦横無尽に論じている。もちろん、ジュウシマツにハダカデバネズミ、それに歌うテナガザルやダンスをするゾウといった、愛すべき動物たちが今回も登場している。
なかでも興味深かったもののひとつが、単語と意味についての「相互分節化仮説」だ。言葉の誕生以前に、たとえばわれわれの狩りと食事の際にそれぞれ歌が歌われていたとしよう。そこで、それらの歌における共通フレーズが切り出され、そしてそれが状況と対応づけられ、やがて(たとえば「みんなで○○しよう!」という)意味をもつようになった、というのである。こういった説がどれほど妥当するものなのか、「(感情の)踊る砂時計モデル」や「心の他者起源説」などとともに、ぜひ本書を読んで検討してみてほしい。
また、内容のみならず、「つくり」もすぐれている本書である。とくにハダカデバネズミの「弱チュー鳴き」やジュウシマツの見事な歌が出版社のウェブサイトで聴けたのは、読者としてなんともうれしいところ。
そんなこんなで、本当にワクワクさせてもらった1冊であった。待っていた甲斐あり。
2014年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
生物の講義形式の実況中継。
わかりやすく書かれています。
楽しい授業です。
わかりやすく書かれています。
楽しい授業です。
2020年8月12日に日本でレビュー済み
(僕の問題意識)
--人間は関係の網の目の中で生まれ「関係子」として関係の網の目を編み変えながらその人生を綾模様として残す関係論的な存在なのではないか?(↔︎近代社会が前提としていた独立自尊の存在なのではなく)
そういう関係論的な在り方について具体的にもっと読んでみたいと思い本書を手に取った。
(本書の内容)
>>>
[一文要約]
→“私の心は他者の心を写しとったものであり、まわりとの交流のあり方が変われば変わる”
--本書は人間の心の起源を生物進化における連続性において探るもの
--「コミュニケーション」「言葉」「感情」「心の他者起源説」がポイント
--「コミュニケーション」とは「送り手から受け手への信号の伝達がなされ、受け手の反応によって、長期的には送り手が利益を得るような相互作用」
--ここでいう利益とは、遺伝子を残すこと。
--自分を構成する遺伝子を拡散するための方略がコミュニケーションで、そのような行動を示すように社会的な動物は進化してきた。人間を含めて。
--言葉の起源は何か?鳥やネズミも歌を歌う。集団の生き残り(=遺伝子の拡散)に有利なメッセージを歌のパターンとして切り出したのがその起源。人間はそのパターンにシンボルとしての意味を担わせ複雑な記述・操作をする事が可能になった。
(例えばAを「mizu」という音、Bを「mizu」という音が象徴するシンボル的な意味においての「水という事物そのもの」だとする。この場合、動物は「AならばB」という認識はできるが、そこで終わる。しかし人間はさらに「BならばA」という認識ができるようになった。だから動物はmizuという音を聞いて水場に向かってそれを利用するのにとどまるのに対して、人間は水を水として認識して他の物と組み合わせ操作する事ができる。
ところで「AならばB」に対して「BならばA」は必ずしも成り立たないので、これは間違いや嘘の起源でもある。人間はシンボルとしての言葉を獲得したがゆえに間違ったり嘘をついたりすることができるようになった、、😅)
--感情の起源は、生物として生き残り(=遺伝子の拡散)に有利なものを「快」不利なものを「不快」と感じる情動。これを扱うのは脳の中の扁桃体。これに前頭野が絡んで情動をコントロールしようとして生まれたのが人間独自の感情。感情はある程度コントロールできるがしきれない。
--言葉は嘘をつく(例:上司の顔色を伺って嘘をつく)が、感情は正直(例: 笑顔を取り繕っても目が笑わない)で、人間のコミュニケーションにおいては両方が機能している。コミュニケーションにおいては感情などの「正直な信号」が保証されないと信頼性が担保されない。
--今はネットが発達して編集可能な(=嘘をつくことができる)言葉だけのやり取りが増えがちで、コミュニケーションの信頼性をどう担保するかが課題。
--人間の心の起源はどこにあるか?
--人間の発達過程を観察していると、赤ん坊が周りとやり取りする中で「どうやらその都合に合わせて色々と判断をする他者がいるらしい」という経験をし、他者に心があるとまず気がつく。人間は周りの人が次にどう出るかを推測しながら行動した方が暮らしやすく、そのように他人の行動を予測する能力には進化論的な適応価(=その個体が生き残り子孫を残す可能性)があるので、そういう「心の理論」を持つように自然淘汰で進化したと考えられる。
--他者に心があるという、心を推測する機能が進化し、発達し、その機能を自分に振り向けた結果が自分の心であると考えられる。(=心の他者起源説)
--自分に振り向けるメカニズムはミラーニューロン。
--最初は他人に心があると仮定して他人の行動をうまく予想することが適応的になり、次に他人の心を予想するシステムをミラーニューロンで照り返し流用する事で、自分の心を予測するようになった。自分の心は他者に心を仮定する能力の副産物としてできた、と考えられる。
--言語が他者に向けた歌から生まれたように、伝えたいと思う自分自身の心さえも、他者との相互作用から生まれてくる。心はコミュニケーションが生み出した最も重要なもの。
--ネットが発達しコミュニケーションのあり方が変わってきている。今後のコミュニケーションのあり方は心の在り方に大きな影響を与える。
--他者との相互交渉なしに発達した個体は破壊的になる事がコオロギで実証されている。
--これからのコミュニケーションのあり方がすごく重要。
>>>
(読後コメント)
--「心の他者起源説」、面白い。
--コミュニケーションのあり方、死活的に重要。
--上の要約からは省いたが、モノを考える際にHow?(しくみと、その発達の順番)とWhy?(「それは何のために?」という目的のうち短期的なものと、進化論的にみた長期的な目的)という視点が有効である、というその方法論は参考になった。(本書はそれらの視点を縦横無尽に駆使して書かれている。)
--「遺伝子」のしばりからは、自由になれないのかしらん?
--昔読んだ真木悠介『自我の起源』とテーマは被っている。そちらも読み直してみたくなった。
--真木の議論では確か、ドーキンスの「利己的な遺伝子」論をどう乗り越えるかがポイントだった気がする。
--真木は確か、交易において「都市」が自律・自立するのになぞらえて「自我」を理解していた気がする。そして「都市」が多層的であるように、生命的な交通において成立する「自我」も多層的なもの(=自身の内に微生物などを取り込んで共生しているようなイメージ?)としてとらえていた気がする(けどウロ覚え、、😭)
--真木の議論は遺伝子の縛りから多少なりとも自由になる可能性を示してた気がする。
--本書と読み比べる事で両書の理解が深まりそうだ🤔
--人間は関係の網の目の中で生まれ「関係子」として関係の網の目を編み変えながらその人生を綾模様として残す関係論的な存在なのではないか?(↔︎近代社会が前提としていた独立自尊の存在なのではなく)
そういう関係論的な在り方について具体的にもっと読んでみたいと思い本書を手に取った。
(本書の内容)
>>>
[一文要約]
→“私の心は他者の心を写しとったものであり、まわりとの交流のあり方が変われば変わる”
--本書は人間の心の起源を生物進化における連続性において探るもの
--「コミュニケーション」「言葉」「感情」「心の他者起源説」がポイント
--「コミュニケーション」とは「送り手から受け手への信号の伝達がなされ、受け手の反応によって、長期的には送り手が利益を得るような相互作用」
--ここでいう利益とは、遺伝子を残すこと。
--自分を構成する遺伝子を拡散するための方略がコミュニケーションで、そのような行動を示すように社会的な動物は進化してきた。人間を含めて。
--言葉の起源は何か?鳥やネズミも歌を歌う。集団の生き残り(=遺伝子の拡散)に有利なメッセージを歌のパターンとして切り出したのがその起源。人間はそのパターンにシンボルとしての意味を担わせ複雑な記述・操作をする事が可能になった。
(例えばAを「mizu」という音、Bを「mizu」という音が象徴するシンボル的な意味においての「水という事物そのもの」だとする。この場合、動物は「AならばB」という認識はできるが、そこで終わる。しかし人間はさらに「BならばA」という認識ができるようになった。だから動物はmizuという音を聞いて水場に向かってそれを利用するのにとどまるのに対して、人間は水を水として認識して他の物と組み合わせ操作する事ができる。
ところで「AならばB」に対して「BならばA」は必ずしも成り立たないので、これは間違いや嘘の起源でもある。人間はシンボルとしての言葉を獲得したがゆえに間違ったり嘘をついたりすることができるようになった、、😅)
--感情の起源は、生物として生き残り(=遺伝子の拡散)に有利なものを「快」不利なものを「不快」と感じる情動。これを扱うのは脳の中の扁桃体。これに前頭野が絡んで情動をコントロールしようとして生まれたのが人間独自の感情。感情はある程度コントロールできるがしきれない。
--言葉は嘘をつく(例:上司の顔色を伺って嘘をつく)が、感情は正直(例: 笑顔を取り繕っても目が笑わない)で、人間のコミュニケーションにおいては両方が機能している。コミュニケーションにおいては感情などの「正直な信号」が保証されないと信頼性が担保されない。
--今はネットが発達して編集可能な(=嘘をつくことができる)言葉だけのやり取りが増えがちで、コミュニケーションの信頼性をどう担保するかが課題。
--人間の心の起源はどこにあるか?
--人間の発達過程を観察していると、赤ん坊が周りとやり取りする中で「どうやらその都合に合わせて色々と判断をする他者がいるらしい」という経験をし、他者に心があるとまず気がつく。人間は周りの人が次にどう出るかを推測しながら行動した方が暮らしやすく、そのように他人の行動を予測する能力には進化論的な適応価(=その個体が生き残り子孫を残す可能性)があるので、そういう「心の理論」を持つように自然淘汰で進化したと考えられる。
--他者に心があるという、心を推測する機能が進化し、発達し、その機能を自分に振り向けた結果が自分の心であると考えられる。(=心の他者起源説)
--自分に振り向けるメカニズムはミラーニューロン。
--最初は他人に心があると仮定して他人の行動をうまく予想することが適応的になり、次に他人の心を予想するシステムをミラーニューロンで照り返し流用する事で、自分の心を予測するようになった。自分の心は他者に心を仮定する能力の副産物としてできた、と考えられる。
--言語が他者に向けた歌から生まれたように、伝えたいと思う自分自身の心さえも、他者との相互作用から生まれてくる。心はコミュニケーションが生み出した最も重要なもの。
--ネットが発達しコミュニケーションのあり方が変わってきている。今後のコミュニケーションのあり方は心の在り方に大きな影響を与える。
--他者との相互交渉なしに発達した個体は破壊的になる事がコオロギで実証されている。
--これからのコミュニケーションのあり方がすごく重要。
>>>
(読後コメント)
--「心の他者起源説」、面白い。
--コミュニケーションのあり方、死活的に重要。
--上の要約からは省いたが、モノを考える際にHow?(しくみと、その発達の順番)とWhy?(「それは何のために?」という目的のうち短期的なものと、進化論的にみた長期的な目的)という視点が有効である、というその方法論は参考になった。(本書はそれらの視点を縦横無尽に駆使して書かれている。)
--「遺伝子」のしばりからは、自由になれないのかしらん?
--昔読んだ真木悠介『自我の起源』とテーマは被っている。そちらも読み直してみたくなった。
--真木の議論では確か、ドーキンスの「利己的な遺伝子」論をどう乗り越えるかがポイントだった気がする。
--真木は確か、交易において「都市」が自律・自立するのになぞらえて「自我」を理解していた気がする。そして「都市」が多層的であるように、生命的な交通において成立する「自我」も多層的なもの(=自身の内に微生物などを取り込んで共生しているようなイメージ?)としてとらえていた気がする(けどウロ覚え、、😭)
--真木の議論は遺伝子の縛りから多少なりとも自由になる可能性を示してた気がする。
--本書と読み比べる事で両書の理解が深まりそうだ🤔
2014年3月19日に日本でレビュー済み
人間のコミュニケーションの起源を探ることがテーマとなっているが、それを人間がやっている以上、人間という枠組みの外には出られないというかもどかしさはある。
価値判断抜きの、完全な客観視は難しいということだ。
他の動物、特に鳥の歌を素材にして、「言語」という人間の特別な道具の謎に迫る道筋を、高校生相手の講義という形で、できるだけわかりやすく説いている。
起源を知ることで、最近の変化に対応できるとする最終章が興味深い。
コミュニケーションツールの変化に、人間のコミュニケーションのあり方自体を変化させて適応できるほどの時間はまだ経っていないが、今後について、考えるヒントが含まれている。
価値判断抜きの、完全な客観視は難しいということだ。
他の動物、特に鳥の歌を素材にして、「言語」という人間の特別な道具の謎に迫る道筋を、高校生相手の講義という形で、できるだけわかりやすく説いている。
起源を知ることで、最近の変化に対応できるとする最終章が興味深い。
コミュニケーションツールの変化に、人間のコミュニケーションのあり方自体を変化させて適応できるほどの時間はまだ経っていないが、今後について、考えるヒントが含まれている。
2013年6月17日に日本でレビュー済み
ストレスの原因はコミュニケーションによるものが多いと言われて久しいが、生物の進化を考えると人類の進化とともにコミュニケーションの方法も進化しているのがわかる。かつては遠隔地との相手とのコミュニケーションは電話か手紙だったが、現在はメールなどのネットが主体。つまり文字によるコミュニケーションが中心となっている。また、レスポンスのスピードから考えると手紙の代わりがメールになったとすると、手軽に書けるメールだとやはり誤解が生じたり意図が伝わらなかったりする。したがってSNSなどのリアルタイムコミュニケーションツールが普及するのも当然の流れだ思う。しかし、コミュニケーションの方法が進化したとしても、やはり五感を使ったコミュニケーションが最も大切であることは確か。ネット自体だからこそ原点に帰ることが重要だとこの本を読んで感じた。