JETさんは横溝正史など、探偵小説原作の漫画化を多数ものしている少女漫画家で、
妖しげで怪奇性の高い作品を得意にしているようです。本書には平成5年から翌年に
かけて連載されたシャーロック・ホームズもの『ぶなの木立ち』（「ぶな屋敷」のほうが
通りがいいですね）と『ギリシャ語通訳』二編、ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』の
全三編が収録されています。連載誌はいずれも本書を刊行している朝日ソノラマ社が
かつて発行していた『ハロウィン』です。この月刊誌は「ホラー・オカルト少女マンガ誌」
との売り出し文句で昭和61年に創刊されましたが、平成7年に休刊になっています。
あとがきによると、初めは『曲がった男』を描く予定がシャーロックの兄・マイクロフトを
描きたいがために『ギリシャ語通訳』に変えたとのこと。絵は上手いですね。いまだと
ホームズが少女漫画風の優男にされそうですが、本作品では渋い中年男に描かれて
おり、違和感がありません。全体的に英グラナダTV製作の『シャーロック・ホームズの
冒険』の影響が感じられます。当時の服装や風景を良く掴んでますから。ワトスンなど
デビッド・バークそっくりですし。筋書きも概ね原作に忠実です。良くできた漫画ですね。
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