まず驚かされたのが圧倒的な文学性。
哲学的で皮肉でもある答えがないような問いがアーティスティックな絵と共にどんどん出て来る。
単純な勧善懲悪の話やハッピーエンドで終わる話はほぼなくて、運命、死、罪、性、輪廻、そして人間そのものに対する岡田さんの考えや答えのようなものが漫画として表現されている。
そしてアーティスティックな絵と、絵のスタイルの多様さにも驚かされた。
イギリスの画家のオーブリービアズリーやピカソで有名なキュビズムのような絵もコマもありました。
wikipedia によると岡田さんには好きな画家がたくさんいて、特にムンクが好きだったそうです。
文学性と密接に関係している、物語の暗さ、希望のなさ、おぞましさも岡田作品を特別なものにしている重要なポイントだと思う。ニヒリズムと言ってもいいかもしれない。
わかり合えない人とは分かり合えないまま物語が終わるし、とてもポップでアーティスティックな絵でいじめや争い、猟奇的な殺人までも描かれていて、収録されている10作品中5作品の最後のコマにR.I.P. と書かれていた。
岡田さん自身によるあとがきにも運命には抗えないというようなことが書いてあったので、その思想が作品に強く影響を与えていると思う。
いずれにしても短編漫画こそ最も自由な芸術なんじゃないかと思うくらいいろいろなスタイルの漫画を体験できたし、一回読んだだけじゃわからない難解な物語やその裏に隠されたメッセージを探る楽しさも味わえた。
漫画が「第9の芸術」と呼ばれるようになって久しいですが、岡田さんの作品を読めば新しい観点からその芸術性を発見できると思います。
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ほんのすこしの水 (サンコミックス) コミック – 1978/5/25
岡田 史子
(著)
- 本の長さ237ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日ソノラマ
- 発売日1978/5/25
- ISBN-104257914807
- ISBN-13978-4257914808
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登録情報
- 出版社 : 朝日ソノラマ (1978/5/25)
- 発売日 : 1978/5/25
- 言語 : 日本語
- コミック : 237ページ
- ISBN-10 : 4257914807
- ISBN-13 : 978-4257914808
- カスタマーレビュー:
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2020年8月10日に日本でレビュー済み
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2024年3月13日に日本でレビュー済み
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これほど下らなく雑な映画を見た(途中で止め)のはトムハンクス主演の「天使と悪魔」その他スピルバーグ銘作品以来です。バカバカしさにも程が。
2012年1月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
シオドア・レトキーが“生き延びた”という事実に勇気づけられた私は、岡田史子を読み返す勇気をなかなか持てないでいる。 まさに薄氷を踏む緊張感に満ち満ちた作品群は、既にしてこの世に肉体があることを拒絶する死生感にとり憑かれている。カフカを笑うことはできても、岡田史子を笑うことはできない。精神の均衡の最も危うい処を暗闇に手探りで、極く細いロープ一本で渡っていく―そんな作品を描いておきながら、結婚し、子供を産み育てたのだ。誰にもできる芸当ではない。 向精神薬の影響であろう、やけに眼光鋭い細面であった彼女の風貌は、晩年見る影もなく変わってしまっていた。 もし生きていたら―無意味な仮定だ―どんな作品を描いていただろう。一時期復帰したものの、もう以前のような研ぎ澄まされたものは描けないと言って、また辞めてしまった。 だからこれは、奇跡中の奇跡だ。手にした者は知るだろう―ほんのすこしの水の苦さ―それを味わった者だけが、自らの中に他者を養っているのだ。
2017年2月13日に日本でレビュー済み
まだ、子供だった私の魂を揺さぶった作品です。作者は55才で亡くなっていらっしゃいました。この作品で世界観が変わります。50年近く前のCOMの世界です。懐かしい。