「医の倫理」よりも「ビジネスの論理」が優先された時、どんな惨憺たる結果を招くかは、言わずもがなである。しかし、昨今「日本の医療に市場原理を導入せよ」という声が上がっているのだ。本書では、医療に市場原理を導入したアメリカの、空恐ろしい現実が切々と訴えられている。
市場原理導入が医療にもたらすものは
1. 保険料負担の逆進性
高齢者、低所得者ほど、高額な医療費を払わなければならなくなる。保険料は、企業での地位が高く収入の多い人ほど安くなり、企業のバックアップのない低収入の人ほど高くなる。つまり、今の日本と全く逆になる。その結果、無保険者が増える。本書の中に、無保険者が病気になったときの壮絶な借金地獄の例が紹介されている。
2. 悪質な医療企業の増加
「サービスの質を落としてでも価格を下げてマージンを追求する」悪質な医療企業が参入しシェアを獲得した場合、良質な企業も悪質な企業をまねないと生き残れなくなる。これを、「バンパイア効果」という。本書で、株式会社病院の恐ろしい犯罪例が挙げられている。
3. 医療の質の低下
営利病院ほど質が悪く、事故の率が多い
4. 医療費が抑制される保証は無い
市場原理を導入したアメリカでは医療費上昇が続いた。米国の製薬会社は市場原理の恩恵を享受する一方、米国民は世界一高い薬剤を購入させられている。
本書では、混合診療が解禁されたときの危険性についても述べられている。特に政治家に読んで欲しい本である。
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市場原理が医療を亡ぼす: アメリカの失敗 単行本 – 2004/10/8
李 啓充
(著)
- 本の長さ268ページ
- 言語日本語
- 出版社医学書院
- 発売日2004/10/8
- ISBN-104260127284
- ISBN-13978-4260127288
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商品の説明
出版社からのコメント
頻発する株式会社病院の「犯罪」、財力に基づく凄惨な医療差別・・・・・・、市場原理の下で、米国医療はどうゆがめられてきたか?! 米国の事例を紹介しつつ、「混合診療解禁」、「医療機関経営への株式会社の参入容認」など、医療における「ビジネス・チャンスの創出」を目論む勢力が主導する改革議論に警鐘を鳴らす。
ビジネスの論理は医療をどう歪めるか? 市場主義者たちの改革議論を正面から斬る!
これを読まずして医療改革は語れない!!
ビジネスの論理は医療をどう歪めるか? 市場主義者たちの改革議論を正面から斬る!
これを読まずして医療改革は語れない!!
著者について
1980年、京都大学医学部卒業。天理よろづ相談所病院内科系ジュニアレジデント、京都大学大学院医学研究科を経て、90年よりマサチューセッツ総合病院(ハーバード大学医学部)で骨代謝研究に従事。ハーバード大学医学部助教授を経て、2002年より文筆業に専念。鋭い医事評論で知られる。著書に『市場原理に揺れるアメリカの医療』、『アメリカ医療の光と影』(医学書院)、訳書に『医者が心をひらくとき(上・下)』(ロクサーヌ・K・ヤング編、医学書院)などがある。大リーグ評論でも知られ、「週刊文春」に『大リーグファン養成コラム』を連載している。米国ボストン在住。
登録情報
- 出版社 : 医学書院 (2004/10/8)
- 発売日 : 2004/10/8
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 268ページ
- ISBN-10 : 4260127284
- ISBN-13 : 978-4260127288
- Amazon 売れ筋ランキング: - 858,946位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 101位医療倫理学
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
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2006年2月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年3月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
医療への市場原理の導入により、国民が被る不利益が、読ませるエピソードとともに綴られている。主張の一部を取り上げると以下のようになる。
世界で唯一、医療を市場原理にまかせたアメリカでは、倫理の崩壊した営利企業が患者を食い物にする事態が頻発し、医療制度は崩壊した。市場原理を導入により、アメリカでは医療費が大幅に上昇しただけでなく、質も低下した。
日本で医療に市場原理導入を声高に進める団体は、ビジネスチャンスの拡大を主眼としており、自分の関連団体の利益しか考えておらず、国民の健康は二の次である。そのような明らかに利益の相反のある集団が、医療の舵取りをしているのが今の日本だ。
混合診療解禁や医療機関の株式会社化により、医療経営が改善したり、患者の選択肢が増える、という一見聞こえのいい主張があるが、これによりアメリカでは現実に医療費はうなぎ上りに増大し、患者は貧しい者ほど必要な医療を受けられず、より多額の医療費を請求されている事実がある。
世界で唯一、医療を市場原理にまかせたアメリカでは、倫理の崩壊した営利企業が患者を食い物にする事態が頻発し、医療制度は崩壊した。市場原理を導入により、アメリカでは医療費が大幅に上昇しただけでなく、質も低下した。
日本で医療に市場原理導入を声高に進める団体は、ビジネスチャンスの拡大を主眼としており、自分の関連団体の利益しか考えておらず、国民の健康は二の次である。そのような明らかに利益の相反のある集団が、医療の舵取りをしているのが今の日本だ。
混合診療解禁や医療機関の株式会社化により、医療経営が改善したり、患者の選択肢が増える、という一見聞こえのいい主張があるが、これによりアメリカでは現実に医療費はうなぎ上りに増大し、患者は貧しい者ほど必要な医療を受けられず、より多額の医療費を請求されている事実がある。
2004年10月22日に日本でレビュー済み
~ボストン在住の日本人医療作家(医師)李 啓充氏が米国の医療制度について詳述した最新作。医療制度は分かりにくいのが常だが、李氏の軽妙なタッチで一気に読めるストリー展開をベースとした米国医療制度の解説書決定版と言える。具体的な米国医療のトピックを解説するのだが、それは日本で現在議論されている医療制度改革という名のもとの医療の市場化につ~~いて鋭く警鐘を鳴らす意図がある。この書を読めば今の医療改革の市場化の行き着く近未来が見えるという意味で、日米の医療を対比し考える上でも貴重な資料となる。しかもトピックのストリー展開が話しとしても面白く、米国医療事情としての読み物でもある。米国の医療が知りたい人、日本の医療改革内容を知りたい人の必読の書であるし、医療物のストリーとし~~ても十分に楽しめる内容となっている。この秋、是非お勧めの一冊である。~
2008年9月24日に日本でレビュー済み
アメリカ在住の李啓充医師がアメリカ医療の実態を紹介するシリーズ3冊目。
これまではアメリカ医療の紹介にとどめていたが、本書から、日本の医療構造改革批判を展開。医療政策評論とも言える内容になっている。
前作から引き続き、市場原理により運営されているはずのアメリカ医療における市場原理の矛盾をこれでもかというほど見せ付けられる。
このアメリカ医療の問題点を踏まえて、アメリカ医療をモデルとして進められている日本の医療構造改革批判が展開される。
このアメリカ医療制度批判から日本の医療構造改革批判への展開は圧巻といえるほど、強い説得力を持つ。国内からの視点では決して得られない鋭い批判である。
また、コスト、クオリティ、アクセスの観点から医療制度の「常識」を解りやすく解説しているくだりもあり、初心者でも気軽に読めるのが本書がさらに優れているところである。
日米を問わず、医療制度に関心のある方にお勧めの一冊である。
これまではアメリカ医療の紹介にとどめていたが、本書から、日本の医療構造改革批判を展開。医療政策評論とも言える内容になっている。
前作から引き続き、市場原理により運営されているはずのアメリカ医療における市場原理の矛盾をこれでもかというほど見せ付けられる。
このアメリカ医療の問題点を踏まえて、アメリカ医療をモデルとして進められている日本の医療構造改革批判が展開される。
このアメリカ医療制度批判から日本の医療構造改革批判への展開は圧巻といえるほど、強い説得力を持つ。国内からの視点では決して得られない鋭い批判である。
また、コスト、クオリティ、アクセスの観点から医療制度の「常識」を解りやすく解説しているくだりもあり、初心者でも気軽に読めるのが本書がさらに優れているところである。
日米を問わず、医療制度に関心のある方にお勧めの一冊である。
2006年9月8日に日本でレビュー済み
米国は日本と異なり、株式会社立医療機関が多く存在している。つまり、米国では医療は一般のサービスと同様に、営利活動の手段として認められている。ここでの「営利」とは、基本的に利益を配当性に分配する事を指していて、いわゆる「儲ける」こととは異なる点に注意が必要だ。また、米国には労働者を対象とする公的医療保険がない。これも日本とは異なる。医療経済学をある程度真面目に勉強すると、医療をレッセ・フェールにまかせては「市場の失敗」となる可能性が高いことは分る。にもかかわらず、米国では国民の殆どをカバーするような公的医療保険をつくれず、また医療を市場原理に委ね続けている。個々の医学領域では非常に優れた業績を発信する米国であるが、同時に国民に提供されている医療の質は極めて低いといわざるを得ない。米国の医療に社会保障としての機能はない。
‥というような問題意識を持つには良書。
‥というような問題意識を持つには良書。