短編「あやしい落下物体の巻」が同時収録されています。これは宇宙人の侵略兵器のエピソードです。「鉄人」は「アトム」に比べると、なんでもありの自由奔放なSF「ではない」という印象がありますが、実際は（これは読み切り短編だから例外としても）巨大蟻や宇宙生物などが登場していて、意外と地に足のついてないエピソードも多いですね。本来、バリエーション豊かな発想として喜ぶべきですが、「アトム」と違って世界観的に違和感があります。
本編の方では不乱拳博士との戦いが続きます。余裕たっぷりに悠然と行動していた博士が、単なるギャングであるサスペンス氏の暴力の前に言いなりになってしまうのは、肩透かしであるとともに、妙なリアルさがあります。
人造人間モンスターや巨大アカエイなどに続き、本巻で遂にバッカスが登場します。これまでも怪ロボット２号や恐竜ロボットなど、鉄人と渡り合えたメカは存在したのですが、一般にライバルというとバッカスから数え始められるようです。実際、ただ強いだけでなくカッコよく、初戦の鮮やかな描写など、演出も一線を画しています。鉄人より細身であるのに、ロケットを（外付けでなく）内蔵し、口から熱線を吐き、力や強度も鉄人と互角以上。二戦目以降は一種の混戦になることが多く、存分に活躍できないのですが、水・陸・空で渡り合った挙句に鉄人に勝利する初戦は印象深いです。操縦機も腕時計型でコンパクト。
なお、サスペンス氏が奪ったバッカスに対し、不乱拳博士は妨害電波で、正太郎たちは操縦者を狙うことで対抗する場面があります。これは、のちのギルバート戦などでも行われる「搦め手の戦法」ですが、操縦機争奪戦から始まった漫画だけあって、正面対決にこだわらないところが、これまたリアルですし、クレバーですね……。初戦で鉄人が負けているので、勝つことにリアリティを出したかったのでしょうが、正面から戦ってほしかったところであります。
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