著者のトマス・マローン教授は,MITのコーディネーション科学研究センター長.日本にも頻繁に来られるので直接講演を聴いたことのある人も多いかもしれない.
本書では,情報通信技術,特にインターネットの発達により,ビジネスにおけるコミュニケーションコストが大幅に小さくなった時代の新しいマネジメントスタイル(分散型マネジメント)を,具体的な事例(リナックス,イーベイ,モンドラゴン協同組合,HPなど)を用いて説明/提唱している.
もちろん,モチベーションと創造性を高めるために社員に権限を委譲する「緩やかな階層性」タイプの「分散型マネジメント」は,企業の中央研究所の運営などでは昔から行われてきた.本書では,集中型マネジメントと分散型マネジメントのメリット/デメリットを整理・分析すると共に,より先進的な「分散型マネジメント」として「投票による民主的マネジメント」や「市場原理に基づくマネジメント」を紹介している.
「緩やかな階層性」はともかく,「投票による民主的マネジメント」や「市場原理に基づくマネジメント」が現実の企業経営にどこまで浸透するかはわからない.
ただ,本書でも強調されているように,「集中」か「分散」かの二者択一ではなく,両者の利点をうまく組み合わせる方法が現実的である.HP社の市場原理を導入した社内インキュベーション制度「VCカフェ」のような事例を読むとその可能性を感じることができる.
すべてのマネージャにとって必読の書というわけではないが,組織変革をミッションとしている人は一読すべきであろう.
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フューチャー・オブ・ワーク (Harvard business school press) 単行本 – 2004/9/28
トマス・W. マローン
(著),
高橋 則明
(翻訳)
日本のプロ野球に激震が走っている。その激震の中心にいるのが、ITビジネスの花形「楽天」と「ライブドア」だ。かれらの参入で、古い体質だったプロ野球界に、新しい革命の風が起ころうとしている。 かの渡辺恒夫氏をして、「我々が知らない会社」と言わしめたITビジネスが、実はこれからのビジネス環境を変えようとしているのを、目の当たりにしているのが、いまの日本の状態なのである。 20世紀のビジネス・トレンドは、新しい情報技術(IT)を、より大規模で、集中化されたビジネスの王国を作るということに使ってきた。だが、21世紀に入った今日、新しい情報技術(IT)は、さらに次の段階を迎えている。集中化という長く続いたトレンドを逆転させた民主主義の高まりに、新しいテクノロジーが拍車をかけ、ビジネスにおいて新しい流れをうながす刺激になりはじめているのだ。 電子メールやPHS、携帯電話、インターネットなどの新たな通信テクノロジーは新しい段階に突入して、ビジネス環境に何をもたらすのか? 簡単に手に入る情報がビジネス・シーンをどう変えようとしているのか?このことを意識しないでは今日のビジネスを語ることはできない。 そして、この本の中にこそ、その答えがある。 ITによって、多くの労働者が選択肢を増やし、みずからが決定をくだすために必要な世界各地の情報を、歴史上はじめて、経済的な制約なしに得られるようになってきている。そのために、現在のビジネスでは、かつては限られた組織でしか持てなかった種類の自由を、より多くの者が享受できるようになった。みずから決断することになれば、ただ命令に従うよりも、人々は献身的かつ懸命に仕事をし、創造性を発揮することも多くなる。 このことが、過去の組織では考えられなかった変化をもたらし始めている。未来の分散化された組織を効率的に育てるためには、今までのように上司が決めた目標を率先して達成しようとするだけではなく、組織にできることに関して個々のビジョンを作る必要性が高まっており、この変化への対応をいち早く獲得することが、ビジネスでの成功の秘訣である。 それをいち早く成し遂げた企業の実例を数多く紹介しながら、ビジネスの未来での成功のビジョンを展開する、この刺激的な本はビジネスマン必読の書である。
- 本の長さ261ページ
- 言語日本語
- 出版社武田ランダムハウスジャパン
- 発売日2004/9/28
- ISBN-104270000368
- ISBN-13978-4270000366
商品の説明
著者について
マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院、パトリック・J・マクガヴァン記念講座教授。スタンフォード大学、ライス大学で学んだのち、ゼロックス社パロ・アルト・リサーチセンターなどをへて現職。リーダーシップと情報技術についての講座を担当。情報技術革新によって組織のあり方がどう容変するかをテーマに研究を重ね、数々の論文、セミナーなどを通じて第一線で活躍する。 MITコーディネーション・サイエンス・センターの設立者であり、代表を務める。
登録情報
- 出版社 : 武田ランダムハウスジャパン (2004/9/28)
- 発売日 : 2004/9/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 261ページ
- ISBN-10 : 4270000368
- ISBN-13 : 978-4270000366
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2006年2月26日に日本でレビュー済み
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2005年10月16日に日本でレビュー済み
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ネットワーク技術、特にインターネット技術の発達により集中化された組織から分散化された組織が、今後の変化の激しい環境に対応するためには必要となるという論旨。
言葉を変えれば組織をマネジメントするためには「命令と管理」から「調整と育成」への転換が必要だと述べている。
確かに人々の価値観が多様化し、環境の急激な変化により求められるスキル、ナレッジが変わっていく状況で、集中化された組織では変化への対応に時間がかかり、その組織が廃れていくということが実際に起こっている。
逆にそのような個性が強い組織をマネジメントするためにはどうすればいいのか?
思うに、インパクトがあるビジョンがなければ収集がつかずに、異なるスキル、ナレッジを持った人間を取り込むことができないのではないかと思う。
最近日本でも古い体質を持った企業でも中途採用が行われている。
その異文化で育った人間を採用したはいいが、取り込めずに不協和音をもたらしている話をよく聞く。
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、異文化で育った人間をその文化になじませるためには時間がかかるし、過去のことはそう簡単には変えれない。
ではどうするかといえば、リーダーが将来に向けた明確なビジョンを示し、そのビジョンを共有することでベクトルをあわせていくことが更に重要なると強く感じる。
本にある事例はどちらかというと特殊事例で現在の日本の組織にはなじまない部分が多いが、近い将来日本でもこのような組織体制を検討する際の材料となるのではないかと思った。
言葉を変えれば組織をマネジメントするためには「命令と管理」から「調整と育成」への転換が必要だと述べている。
確かに人々の価値観が多様化し、環境の急激な変化により求められるスキル、ナレッジが変わっていく状況で、集中化された組織では変化への対応に時間がかかり、その組織が廃れていくということが実際に起こっている。
逆にそのような個性が強い組織をマネジメントするためにはどうすればいいのか?
思うに、インパクトがあるビジョンがなければ収集がつかずに、異なるスキル、ナレッジを持った人間を取り込むことができないのではないかと思う。
最近日本でも古い体質を持った企業でも中途採用が行われている。
その異文化で育った人間を採用したはいいが、取り込めずに不協和音をもたらしている話をよく聞く。
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、異文化で育った人間をその文化になじませるためには時間がかかるし、過去のことはそう簡単には変えれない。
ではどうするかといえば、リーダーが将来に向けた明確なビジョンを示し、そのビジョンを共有することでベクトルをあわせていくことが更に重要なると強く感じる。
本にある事例はどちらかというと特殊事例で現在の日本の組織にはなじまない部分が多いが、近い将来日本でもこのような組織体制を検討する際の材料となるのではないかと思った。
2005年1月24日に日本でレビュー済み
インターネットに代表される「情報伝達コストの低下」によって、組織の意思決定プロセスが「集中化」から「分散化」に向かうように働くことがいくつかの類型で描かれています。論理展開は説得力があり、実際に組織で取り入れられることもあるのかな、と思うような具体例がいろいろ出てきます。
やや脱線しますが、「システムの適切な部分に厳格な基準を設ければシステムの他の部分はより柔軟で分散化が可能になる」「権力を得るためには権力を手放すことが最良」、といった、著者独特の洞察がなかなか核心をついていて面白いです。
尚、欠点を2つ。翻訳書によくあることですが、本書で引用されている参考文献について、その紹介が全くされていないので、原典を追えず不親切です。翻訳もこなれていない箇所が散見されます。
やや脱線しますが、「システムの適切な部分に厳格な基準を設ければシステムの他の部分はより柔軟で分散化が可能になる」「権力を得るためには権力を手放すことが最良」、といった、著者独特の洞察がなかなか核心をついていて面白いです。
尚、欠点を2つ。翻訳書によくあることですが、本書で引用されている参考文献について、その紹介が全くされていないので、原典を追えず不親切です。翻訳もこなれていない箇所が散見されます。
2004年10月10日に日本でレビュー済み
人間は、遠い昔の狩猟採集民族の時代から、農耕定住化に変化する過程で組織化が進み、文字の発明、印刷技術の進歩、鉄道の普及を経て、現代のIT革命まで、「情報伝達コストの低下」の歴史を歩んできた。本書ではこの「情報伝達コスト」を中心に、論旨が展開されている。そして、組織構造というものは、(1)孤立した集団、(2)意思決定が集中する大きな集団、(3)意思決定が分散する大きな集団、という大きな変化を遂げている、と著者は指摘する。組織形態の変遷を、情報伝達の効率で根拠づける考え方には、納得できる。
将来の組織は民主的階層性を持つ、と予想し、その急進的な形態では、部下がマネージャーを投票で選ぶ例などを、示している。共感できる主張だ。常日頃から思うのだが、マネージャーは監督者ではなく代表者であり、部下が投資する時間と労力と知恵という資本を有効利用できなければ、彼ら「投資家」から解任されてもおかしくない。
本書では、権限委譲や個人の自由、創造性、価値観については、組織・集団の構造から考えた場合の「必然性」として、位置づけており、自己啓発や動機付けという、人間の内面への追求をは、あまり行っていない。この点は数多い組織論の中でも、ユニークなのではないであろうか。分散化、調整、育成というキーワードで描いている未来の組織の構造については、検証が不十分で予想の域にとどまっている印象もあるが、著者の主張を実証する企業が増えていくことは、かなり高い確率で、言えるであろう。
将来の組織は民主的階層性を持つ、と予想し、その急進的な形態では、部下がマネージャーを投票で選ぶ例などを、示している。共感できる主張だ。常日頃から思うのだが、マネージャーは監督者ではなく代表者であり、部下が投資する時間と労力と知恵という資本を有効利用できなければ、彼ら「投資家」から解任されてもおかしくない。
本書では、権限委譲や個人の自由、創造性、価値観については、組織・集団の構造から考えた場合の「必然性」として、位置づけており、自己啓発や動機付けという、人間の内面への追求をは、あまり行っていない。この点は数多い組織論の中でも、ユニークなのではないであろうか。分散化、調整、育成というキーワードで描いている未来の組織の構造については、検証が不十分で予想の域にとどまっている印象もあるが、著者の主張を実証する企業が増えていくことは、かなり高い確率で、言えるであろう。