これは良書。いままで写楽の謎解き本はいろいろ読んできましたが、説得力という点でもショッキングという点でもダントツであります。
出版業界人によるキャラクタービジネスとしての写楽論という視点がまず興味深い。
写楽作品も含め、浮世絵がアートとして認められたのは明治も後半以降。海外での人気の高さが逆輸入されてからの話で、出版当時の江戸においてはあくまで民衆が安値で楽しめるサブカルチャーでしかありません。版元の蔦屋も写楽自身も自分たちがやっていることをぜんぜん芸術だとは思わないで、ビジネスとしてどんな絵を描いたら歓迎されるか、どうやって売り出したら成功するかを考えていたはず。いわれてみると当たり前過ぎる御指摘でして、正体探しなどではなく、こうした観点からの検討が、正しい意味で歴史の研究に貢献できるものではないでしょうか。
本書でもとりわけ目からウロコの解釈だったのが、役者の真に迫ったと賞賛される写楽の大首絵のリアリティが、西洋風の肖像画のようなリアリズムのためのリアリズムの産物では決してなくて、50人近い歌舞伎役者を描き分けるためのマンガ的にデフォルメされたパターン化の表現が、結果としてリアルな似顔絵に見えたのではないか……との御指摘。従来の写楽論を根底からひっくり返してしまうような大胆の発想ですが、なるほど、この解釈だとさまざまな疑問がすっきり気持ちよく説明できてしまうのですね。
他にも、現在の評価とはあべこべに蔦屋と写楽にとってのメインイベントは2期~3期の細判の全身像の大量販売だったとか、現存の枚数を人気のバロメーター扱いする解釈はマーケティングの上でも有り得ないとか(大判の方が儲けになるなら細判量産路線に転向するはずがない!)、写楽作品をアートと見る通説が陥る「落とし穴」の数々はなるほどごもっともと納得できることばかり。現在の価値観を尺度にして過去の流行を論じることがいかにナンセンスかを教えてもらえます。これらの結論が奇説のための奇説ではなく、現実的なマーケティング分析の上に成り立っていることが素晴らしい。
そして、地味にポイント高いのが「世界三大肖像画家をクルトが提唱した」という話が日本人の創作だとはっきり指摘している点! 明らかなデマなのに、出版社もテレビ局も作家センセイ方もなかなか改めようとしないんですよねえ。デマをはっきりデマだと指摘してくれる、こうした良心的な著作こそ、写楽に関心を持つ人たちにちゃんと読まれるべきではないでしょうか。
¥1,022¥1,022 税込
ポイント: 10pt
(1%)
無料配送 6月12日-14日にお届け
発送元: CIPECQ Shop 販売者: CIPECQ Shop
¥1,022¥1,022 税込
ポイント: 10pt
(1%)
無料配送 6月12日-14日にお届け
発送元: CIPECQ Shop
販売者: CIPECQ Shop
¥454¥454 税込
配送料 ¥280 6月19日-21日にお届け
発送元: e-本屋さん【6月7日20時~~6月9日までメール等のお問合せ対応お休みとなります】 販売者: e-本屋さん【6月7日20時~~6月9日までメール等のお問合せ対応お休みとなります】
¥454¥454 税込
配送料 ¥280 6月19日-21日にお届け
発送元: e-本屋さん【6月7日20時~~6月9日までメール等のお問合せ対応お休みとなります】
販売者: e-本屋さん【6月7日20時~~6月9日までメール等のお問合せ対応お休みとなります】
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
プロジェクト写楽 新説 江戸のキャラクター・ビジネス 単行本 – 2011/4/28
富田 芳和
(著)
ダブルポイント 詳細
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,022","priceAmount":1022.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,022","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"iieTxD%2FgrFvHU2%2B8%2B7UAAfsOvp7jauIzXLQvVdKVTN5exFYPbIIo3woX%2FqFtNC2FUlzUhG0%2FRMLHk3c5SEpR%2FEBXMnYbNuXT5%2FYwOLtt%2Fd2Osj2IBeClLCd13bdk7MupW4BkMvHGWDo37K%2F2ZdJpi5B2IkFG8SuVqNbyTVSSwvJIoi2EAfslGQWKhRRqxbdS","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥454","priceAmount":454.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"454","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"iieTxD%2FgrFvHU2%2B8%2B7UAAfsOvp7jauIzse9BFJKmod9tx5VgQ1x21ltjxp%2FdvHKaIZZL7%2FTetgjKnz4Sdn1dOGe0NliK5FSYi0HT4JjkU1UD0KNBk0NA5GuS7L6HeM27LwdaZD5Ec5giIphjt2qXUE4clISrBjvhCq3dlwGV1ZClquKbSWjWYceP%2BeL96Fko","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
マンガ・アニメの原点は江戸時代にあった!
写楽の真実に迫る衝撃の推理と、そこから見えてくるビジネス戦略
国際的にも高い評価を受けている写楽は、わずか10ヶ月の間に膨大な木版画作品をこなし、こつ然と消息を絶った謎の浮世絵師である。そのため写楽の正体については多くの議論が戦わされてきた。
本書では、写楽作品の従来とは異なる分類や画法の分析、能面の造形原理などを通して、写楽の手法が現代のマンガ、アニメに通じるキャラクター制作の原型となったこと示すほか、蔦屋重三郎のプロデューサーとしての手腕を考察。「写楽」が江戸の歌舞伎界という一大エンターテインメント市場をターゲットにしたビジネスプロジェクトであったことを解明する。
写楽の真実に迫る衝撃の推理と、そこから見えてくるビジネス戦略
国際的にも高い評価を受けている写楽は、わずか10ヶ月の間に膨大な木版画作品をこなし、こつ然と消息を絶った謎の浮世絵師である。そのため写楽の正体については多くの議論が戦わされてきた。
本書では、写楽作品の従来とは異なる分類や画法の分析、能面の造形原理などを通して、写楽の手法が現代のマンガ、アニメに通じるキャラクター制作の原型となったこと示すほか、蔦屋重三郎のプロデューサーとしての手腕を考察。「写楽」が江戸の歌舞伎界という一大エンターテインメント市場をターゲットにしたビジネスプロジェクトであったことを解明する。
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社武田ランダムハウスジャパン
- 発売日2011/4/28
- ISBN-104270006447
- ISBN-13978-4270006443
商品の説明
著者について
富田芳和
1954年東京生まれ。早稲田大学文学部美術史学専攻過程終了。
旬刊誌「新美術新聞」編集長、美術専門誌「アート・トップ」編集長を経て、
現在は美術専門のライター。編集者として活動。
また、東京の地域エリアにおける江戸文化プロジェクトの推進にかかわる。
美術企画出版代表、国際浮世絵学会会員。
1954年東京生まれ。早稲田大学文学部美術史学専攻過程終了。
旬刊誌「新美術新聞」編集長、美術専門誌「アート・トップ」編集長を経て、
現在は美術専門のライター。編集者として活動。
また、東京の地域エリアにおける江戸文化プロジェクトの推進にかかわる。
美術企画出版代表、国際浮世絵学会会員。
登録情報
- 出版社 : 武田ランダムハウスジャパン (2011/4/28)
- 発売日 : 2011/4/28
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 256ページ
- ISBN-10 : 4270006447
- ISBN-13 : 978-4270006443
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,422,626位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 361,850位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中5つ
5つのうち5つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
3グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2015年9月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本当のことはわからない。でも、これが真実なんだろうって思える本でした。腑に落ちる、納得できる。更に文章が読みやすい。買ってよかった一品です。
2020年5月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
久々の快作。これは面白いです。しかも「そうかも」と思わせる。
自分の知識の範囲が想像の限界を形成してしまっていて、こういう本を読むといかに狭いところで考えているなと、しばし感傷に浸ってしまいました。
今までいろんな諸説を読んできて、僕の考えを整理すると
1.写楽は斎藤さんに決まり(内田さんの功績)
2.ではあの1期の大首絵のフォルムは
①オランダ人説(島田説)
②斎藤さんが西洋の美術に精通していた(内田説)
③斎藤さんが役者絵に能の体系を注入することであのフォルムが出来た(富田説)
大きな意味で上記の3説が妥当かなと思ってます。(ここは楽しみの世界で証拠はでてこないでしょう)
それで、2期以降の話は、島田説はまだ未完みたいで言及無し(まあ小説なんでこれで終わりかも)、内田説は4期まで斎藤さんが書きに書きまくり、その結果疲れ果てて、時期が来たので能役者に戻った。
富田説は今の漫画のプロダクションみたいに組織的に制作した。プロダクションの名前が「写楽」であって責任者は蔦屋さん。(このプロダクション的な発想は島田氏も富田氏もある意味同じ考えかな)
プロダクションのメンバーについては本誌の中でなかなか面白い推察が展開されている。
ちょっと本作から離れた文章になりましたが、この本に関していえば、今までにない切り口で、しかも荒唐無稽でなく、ひょっとしたらそうかもと思うことが多く。もうびっくりの連続でした。
こんな本が出てくるのも、写楽の魅力ですね。まだまだ楽しめるかも。
自分の知識の範囲が想像の限界を形成してしまっていて、こういう本を読むといかに狭いところで考えているなと、しばし感傷に浸ってしまいました。
今までいろんな諸説を読んできて、僕の考えを整理すると
1.写楽は斎藤さんに決まり(内田さんの功績)
2.ではあの1期の大首絵のフォルムは
①オランダ人説(島田説)
②斎藤さんが西洋の美術に精通していた(内田説)
③斎藤さんが役者絵に能の体系を注入することであのフォルムが出来た(富田説)
大きな意味で上記の3説が妥当かなと思ってます。(ここは楽しみの世界で証拠はでてこないでしょう)
それで、2期以降の話は、島田説はまだ未完みたいで言及無し(まあ小説なんでこれで終わりかも)、内田説は4期まで斎藤さんが書きに書きまくり、その結果疲れ果てて、時期が来たので能役者に戻った。
富田説は今の漫画のプロダクションみたいに組織的に制作した。プロダクションの名前が「写楽」であって責任者は蔦屋さん。(このプロダクション的な発想は島田氏も富田氏もある意味同じ考えかな)
プロダクションのメンバーについては本誌の中でなかなか面白い推察が展開されている。
ちょっと本作から離れた文章になりましたが、この本に関していえば、今までにない切り口で、しかも荒唐無稽でなく、ひょっとしたらそうかもと思うことが多く。もうびっくりの連続でした。
こんな本が出てくるのも、写楽の魅力ですね。まだまだ楽しめるかも。