アインシュタインの科学的功績、後年の平和活動、プライベートをほぼ時系列に追った伝記作品。
アインシュタインには多数の伝記があるが、その中でも一般向けに平易に書かれている一冊ではないかと思う。
ただ、上下巻で800pを越す大著。先日ナショナルジオグラフィックチャンネルで放映されたアインシュタインの伝記ドラマ『ジーニアス』とかなりかぶっていたので、このドラマを見てからだと読みやすいかも(ただし、ドラマも45分×10話)。
上巻で特に面白かったのは、奇跡の年である1905年、アインシュタインが特殊相対性理論、光電効果理論、ブラウン運動、分子の大きさ計算する論文などを発表するまでのエピソードだ。幼少期から高等部での科学への接し方、数学や物理への直感(イメージを頼りに理論を構築する思考法?)、発表当時の勤務していていた特許局での仕事の合間の研究など、興味深いエピソードとともに描かれている。権威に盲目にならない科学的態度(政治的態度)、イメージで考える彼の思考法などが1905年の論文に結実しているさまがわかる。特殊相対性理論の記述も言葉を慎重に選んで書かれていると思う。
ただ、10年後の1915年に発表される一般相対性理論誕生までのエピソードはついていけなかった。有名な慣性質量と重力質量の等価性の発想までは理解できるものの、テンソル、リーマン幾何を使って理論を構築していくところは流石に本書だけで概要をつかむのは難しい。
重力場の方程式の構築にあたってアインシユタインは、二つの戦略をとる。物理学に対する彼の感覚から導かれるものをもとに(本書では触れられていないが思考実験をもとに)定式化する方法、そして数学を指南してくれたグロスマンたちが勧めたテンソル解析を用いて、より形式的な数学的要求をもとに方程式を演繹する方法だ。両者を並行して進めていくなかで数学的な方法を「プロトタイプ」理論としてちょこちょこと発表、数学者ヒルベルトにその意味を理解してもらおうと熱心に説明しすぎたため、彼との理論確立に向けての競争が始まるのだが、このあたりは物理的な素養、数学的な素養があればもっと楽しめただろう。
p293にある計量テンソル、リーマン幾何については、図解するなど初学者向けのフォローがあったほうがよかったかもと思う。このあたりは入門書で概要をつかんでおいてから読んだ方がアインシュタインの発想法が的確に理解できると思う。
また、科学的発想とともに驚いたのが、最初の妻、ミレーバに対する狭小な態度、発言の数々だ。
彼女の神経質的な性格に嫌気がさした、というところなのだろうけど、アイザックソンも
“アインシユタインが科学の問題を扱うときに示す強固な忍耐力と、個人的な厄介事を扱う際の忍耐力のなさは同じ程度なのである。”
と書くくらい、アインシュタインのミレーバに対する態度はひどい。
(p279の彼女に対する最後通牒は驚いたし、人としてどうかと思う)。
二番目の妻エルザと連れ子のイレザとの妙な三角関係についても少し触れられているが、アインシュタインの家族に対する態度はいまの常識とは相容れないところが多々ある。常識はずれということではなく、純粋に宇宙の理解に没頭するための手段(悪く言えば食事など日常生活を維持するための手段)としてしか考えていなかったのだろう。
上巻は日食時の星食現象による重力場の理論の立証によって話は終わるが、彼の科学的な業績はほぼ上巻で書き尽くされている。
科学的業績、それを生み出した思考実験がとてもわかりやすくまとめられている。彼の業績の全体像を知りたかったらまず手にしたい一冊だろう。
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アインシュタイン その生涯と宇宙 上 単行本(ソフトカバー) – 2011/11/16
20世紀最大の天才と言われ、世界の人々を魅了し続けるアインシュタイン。
未公開資料で解き明かす彼の頭脳と心。決定版評伝!
20世紀最大の天才と言われながら、世界の人々を魅了し続けるアインシュタイン。
彼の創造性がいったいどのようにして生まれたのかは、誰でも知りたいと思うだろう。
著名な伝記作家の著者は、今まで公開されなかった膨大なアインシュタインの私的書簡をはじめ、
彼にまつわる数々のエピソード、彼の科学理論展開などを、時系列の中でその事実関係を徹底的に検証し、
結果として、このたぐいまれな人物の生活・愛・知性を包括し、その人間性を浮かび上がらせることに成功している。
アインシュタイン評伝の決定版。
上巻は、その生い立ちから幼少期のエピソード、高校大学で目立ち始めるその独創性、
豊かな恋愛体験、相対性理論の発見、第1次世界大戦の影、最初の結婚からその破綻まで。
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上巻は、その生い立ちから幼少期のエピソード、高校大学で目立ち始めるその独創性、
豊かな恋愛体験、相対性理論の発見、第1次世界大戦の影、最初の結婚からその破綻まで。
- 本の長さ440ページ
- 言語日本語
- 出版社武田ランダムハウスジャパン
- 発売日2011/11/16
- ISBN-104270006498
- ISBN-13978-4270006498
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商品の説明
著者について
1952年生まれ。作家。ワシントンDCに拠点を置くアスペン研究所の理事長兼CEO。CNNの委員長兼CEOも勤める。また米タイムズ誌では編集長を勤めた。 オバマ政権下になって、大統領の要請により、ボイス・オブ・アメリカ、自由欧州放送、および他の国際放送を管轄する米政府放送管理局の委員長に任命された。
登録情報
- 出版社 : 武田ランダムハウスジャパン (2011/11/16)
- 発売日 : 2011/11/16
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 440ページ
- ISBN-10 : 4270006498
- ISBN-13 : 978-4270006498
- Amazon 売れ筋ランキング: - 589,375位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 94,346位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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