パリのガイドブックはそれこそ汗牛充棟、ゴマンとあって、それぞれ多彩な特色を競っている。
本書は、パリの地理や歴史について一通りの知識は有しているが、さらにその背景や由来について
――とりわけ「美観」という視点から――踏み込んだ知見を得たいと希望する読者にぴったりの、
比較的硬派な本である。
たとえば、世界でも稀な「放射状都市」であるパリにあって、サンルイ島だけはどういう理由で
縦横の直交空間となっているのか、といった類のテーマに興味をもつとすれば、本書はまさにうっ
てつけであると言えるだろう。じっさい、ヴィクトワール広場とヴァンドーム広場が、そしてヴォ
ージュ広場とドーフィヌ広場がそれぞれ対をなす広場として設計されたなどとはまったく知らなか
ったので、蒙を啓いてくれた著者に感謝したい（たんに当方の無知にすぎないのかな）。
各ページの上部３分の１が写真（白黒）のスペースになっていて、それを眺めているだけでも楽
しい。惜しむらくは、各章ごとに簡略でいいから地図が欲しかった。再版時にはぜひご検討願いた
い。
パリが好きで、一般のガイドブックでは飽き足らないが「学術書」にはちょっと手が出ない、と
いう人に向いていると思う。ただ、気になったこととして、「フランソワ１３世」という王様がし
ばしば出てくるが、もしかして「ルイ１３世」では？
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