とても品位のあるゆたかさを感じさせてくれる文章でした。
これから他の作品を読んでみたいと思います。
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ユルスナールの靴 単行本 – 1996/10/1
須賀 敦子
(著)
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日1996/10/1
- ISBN-104309010970
- ISBN-13978-4309010977
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
20世紀フランスを代表する作家ユルスナールに深く魅せられた筆者が、作家の生きた軌跡、その作品、作中人物の辿った道を自らのそれと幾重にも交錯させ、筆者自身が長く身を置いたヨーロッパへの思いをこめて綴るエッセイ。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (1996/10/1)
- 発売日 : 1996/10/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 244ページ
- ISBN-10 : 4309010970
- ISBN-13 : 978-4309010977
- Amazon 売れ筋ランキング: - 481,690位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 688位フランス文学研究
- - 11,327位日本文学
- - 83,867位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1929-1998)1929年生まれ。聖心女子大学卒業。
24歳で初めてイタリアを訪れ、29歳からの13年をイタリアで過ごす。1961年、ジュゼッペ・リッカと結婚、谷崎潤一郎をはじめとする日本文学の伊訳を多数出版。6年後に夫が急逝。1971年帰国。1972~1984年慶応義塾大学外国語学校で講師を務める。1973年上智大学国際部比較文化学科非常勤講師、同部大学院現代日本文学科兼任講師(後に比較文化学部教授)。
56歳でイタリア体験をもとにした文筆活動を開始。1991年『ミラノ 霧の風景』(白水社)で女流文学賞、講談社エッセイ賞を受賞。1998年心不全で他界。主な著書に『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』(ともに文藝春秋)、『トリエステの坂道』『地図のない道』(ともに新潮文庫)ほか。主な訳書にナタリア・ギンズブルグ『ある家族の会話』、アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』(ともに白水社)ほかがある。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年5月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
須賀敦子さんの全八巻になる著作集を読んでいて、とくに、「ユススナールの靴」は彼女の文章が「ふかさ」を増す一つのきっかけになっていることは、堀江敏幸さんが追悼本でお書きになっているように有名な話である。この「ふかさ」への探求とは、「ヴェネツィアの宿」のなかで、
「どうすればこの本は深いとか深くないとかわかるのですか」
とシスターにたずねるくだりにあるように、須賀敦子は本を読むこと、作家の紡ぎだす世界を探求するのに貪欲な人だった。それは、彼女が創作の世界にはいるまでの過程で、ギンズブルクの「ある家族の会話」、「マンゾーニ家の人々」で魅せる、あのふっくらとした手でさすってもらっているような柔らかい文章で描かれた、ナタリアの世界をなぞらえていった作品群、「ミラノ霧の風景」あるいは「トリエステの坂道」にあるものに共通しているが、ヨーロッパの北の暗闇にも通じるようなユルスナールの作品を追ってゆくような作業のなかで、創られたこの作品は「ふかさ」の彼女なりの到達点であったのではあるまいか、そんなふうに、読んでゆけば、この評伝から以降の文章は彼女の白鳥の歌といってもよい。
「どうすればこの本は深いとか深くないとかわかるのですか」
とシスターにたずねるくだりにあるように、須賀敦子は本を読むこと、作家の紡ぎだす世界を探求するのに貪欲な人だった。それは、彼女が創作の世界にはいるまでの過程で、ギンズブルクの「ある家族の会話」、「マンゾーニ家の人々」で魅せる、あのふっくらとした手でさすってもらっているような柔らかい文章で描かれた、ナタリアの世界をなぞらえていった作品群、「ミラノ霧の風景」あるいは「トリエステの坂道」にあるものに共通しているが、ヨーロッパの北の暗闇にも通じるようなユルスナールの作品を追ってゆくような作業のなかで、創られたこの作品は「ふかさ」の彼女なりの到達点であったのではあるまいか、そんなふうに、読んでゆけば、この評伝から以降の文章は彼女の白鳥の歌といってもよい。
2018年7月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私自身は、この本は出版されてすぐに買ったのですが、ハードカバーだったので、入院中の方がベッドで読まれるのは文庫本のほうがいいと考えて、この本を贈りました。「すごくいい本だった」と喜んでいただきました。
2017年10月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
須賀さんの本は好きです。本の最後で多田さんも書いてたのですが、三声のポリフォニーで至福の時を過ごせました。
2013年4月9日に日本でレビュー済み
芦屋生まれの須賀敦子さんは、1953年7月、神戸港をパリに向けて船出する。「きっちりと足に合った靴さえあれば、自分はどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、自分は生きてきたような気がする」という彼女は、晩年になって、フランス人作家、マルグリット・ユルスナールに出会い、その作品の痕跡をなぞるように、ヨーロッパで生きた自分の半生を回想する。
ユルスナールの代表作品である『ハドリアヌス帝の回想』と『黒の過程』は、対照的なヨーロッパを描いている。前作は、紺碧の海とオリーブが眩しい南欧の古代ローマ皇帝の魂の物語であり、後者は、北部ヨーロッパのルネッサンス期に生きた錬金術師、異端者がさまよう精神の物語である。
須賀さんは、ヨーロッパを南北に縦断する、これらの作品の舞台に自らもたたずみ、呼吸することで、自分の姿を探し出すように、重厚な歴史と厳しい風土に裏付けられたヨーロッパを、内面から静かに美しく描く。
ヨーロッパを描いた日本人のエッセイは数多いが、その魂と、ノマド(放浪者)のように生きてきた自分の足跡を、コインの両面のように透かし彫りで語れる日本人は少ない。須賀さんの文章には、論理の透徹さとともに、繊細で柔らかな包容力がある。言葉が放つ「癒す力」がある。オーラのような芳しさ、心の隙間を満たしてくれる繊細さがある。
ユルスナールの代表作品である『ハドリアヌス帝の回想』と『黒の過程』は、対照的なヨーロッパを描いている。前作は、紺碧の海とオリーブが眩しい南欧の古代ローマ皇帝の魂の物語であり、後者は、北部ヨーロッパのルネッサンス期に生きた錬金術師、異端者がさまよう精神の物語である。
須賀さんは、ヨーロッパを南北に縦断する、これらの作品の舞台に自らもたたずみ、呼吸することで、自分の姿を探し出すように、重厚な歴史と厳しい風土に裏付けられたヨーロッパを、内面から静かに美しく描く。
ヨーロッパを描いた日本人のエッセイは数多いが、その魂と、ノマド(放浪者)のように生きてきた自分の足跡を、コインの両面のように透かし彫りで語れる日本人は少ない。須賀さんの文章には、論理の透徹さとともに、繊細で柔らかな包容力がある。言葉が放つ「癒す力」がある。オーラのような芳しさ、心の隙間を満たしてくれる繊細さがある。
2012年3月3日に日本でレビュー済み
エッセイ、小説への誘い、著者の来し方が渾然となった不思議な作品です。
冒頭に「「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。」と述べられ、その哀しいまでの「ひたむきさ」に魅せられます。
透明感のある文章も流石です。須賀さんの他の本も読むべしと思います。
冒頭に「「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。」と述べられ、その哀しいまでの「ひたむきさ」に魅せられます。
透明感のある文章も流石です。須賀さんの他の本も読むべしと思います。
2010年12月25日に日本でレビュー済み
ハドリアヌス帝の後をたどるユルスナール。
そのユルスナールの遍歴を追う須賀さん。
ユルスナールは、1800年というときを隔て、ただし土地は同じヨーロッパで、ハドリアヌス帝を追い求める。
須賀さんは、年齢は20歳ほどしか違わないユルスナールを、ヨーロッパと日本という精神風土の上での距離を隔て、それを埋めることを模索しつつ、追う。
これらの遍歴の過程に、ユルスナールの作品や、その登場人物のことも織り込まれ、著者と歴史と文学とが渾然一体となった一冊である。
そのユルスナールの遍歴を追う須賀さん。
ユルスナールは、1800年というときを隔て、ただし土地は同じヨーロッパで、ハドリアヌス帝を追い求める。
須賀さんは、年齢は20歳ほどしか違わないユルスナールを、ヨーロッパと日本という精神風土の上での距離を隔て、それを埋めることを模索しつつ、追う。
これらの遍歴の過程に、ユルスナールの作品や、その登場人物のことも織り込まれ、著者と歴史と文学とが渾然一体となった一冊である。
2007年4月29日に日本でレビュー済み
フランス人作家のマルグリット・ユルスナールの人生に
須賀敦子さんが思いを織り込んだ本です。
二人の人生の歩みは、表向きだいぶちがうけれど
思いのかさなる部分があって、私自身も共感をおぼえました。
須賀さんの深い教養に裏打ちされた、作家への寄り添いというか
その作品と人生を、自身の生きた言葉でやさしく撫でていくアプローチは
この本をとても愛しいものにしていると思います。
かるいエッセイや、ストーリー重視の娯楽ものもいいけれど
やわらかな陽射しのもとで風を感じつつ、この本を読むと
時代も国籍もこえて、世界の奥深さとすばらしさを感じます。
長期休暇におすすめです。
須賀敦子さんが思いを織り込んだ本です。
二人の人生の歩みは、表向きだいぶちがうけれど
思いのかさなる部分があって、私自身も共感をおぼえました。
須賀さんの深い教養に裏打ちされた、作家への寄り添いというか
その作品と人生を、自身の生きた言葉でやさしく撫でていくアプローチは
この本をとても愛しいものにしていると思います。
かるいエッセイや、ストーリー重視の娯楽ものもいいけれど
やわらかな陽射しのもとで風を感じつつ、この本を読むと
時代も国籍もこえて、世界の奥深さとすばらしさを感じます。
長期休暇におすすめです。