そうそうたるメンツによる推薦文で固められているところに何に怯えてるんだ?と読む前から疑ってかかってしまいますが、ツイッターなどでも好評でもう(確か)4刷りまで行ったとのことで、あまりにもの評判の高さに興味を覚え読んでみました。
内容は、タイトルから推察されるとおり、断片的な話がそれぞれ固有のつながりとしてあるのではなく、あたかも椅子を積み重ねるように入れ替え可能であり、それが実は私たちの日々の暮らしにも当てはまるのだということを表しているように素直に読むと読めます。
じゃぁ素直に読まなければどうなるのかというと、大してどうもならないのですが(笑)、本作の売りはそういうコンセプトよりも、各断片的な物語で語られる人間観察眼ではないかと思います。現代的というか、いちいちごもっとも、と思える様な。
つっこんで言ってしまうと、ジェンダー論やってる怖いおばさんの本を読んでいるような、または斎藤美奈子の特徴的なさばさばした語り口を思い出させます。急いで付け加えておくと、本作は現代社会における女性が受けがちな心理的な圧迫感をそれぞれのシーンの会話で見事に表現しているのですが、それとバランスをとるかのように男性の感性も描かれていて、これも女性が書いているとは思えないくらいよく分かるなぁ、さすが作家だなと思ってしまいます。
ただし、そこに落とし穴があるような気もして、どちらかと言うと、と言うまでもなく女性視点の挿話の方が多いですし内容も踏み込んだものになっていると思います。そうなってくると、そこに現れるのは本作の意図したスタッキング可能が、むしろ、スタッキング(不)可能を孕んでいるのではないか、というかそれが実は狙いだったのではないか、ということろまで考えさせられます。
まぁコンセプトはともかく、基本的には断片的な主にジェンダー的な偏差を含んだ会話やシーンの連なりになるので、それらの内容に共感できなければ、そもそも面白くない小説となってしまうと思います。上記に述べた理由で、どちらかというと女性向けだと思います。男性の場合は、反発を感じるか、すっと受け止めるか(少数派と思いますが)、感情は反発しつつも理性で納得する(多分このパターン多いと思う)かのいずれかになると思います。
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スタッキング可能 単行本 – 2013/1/18
松田 青子
(著)
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購入オプションとあわせ買い
日本社会を皮肉に照射する表題作「スタッキング可能」をはじめ、雑誌掲載時より話題の「もうすぐ結婚する女」など、たくらみに満ちた松田青子初の単行本が、多くの推薦者により贈り出される!
★豪華メンバー推薦!!★
●青木淳悟さん(作家)----「なぜ私は私なのか?----あのときの私が誰でもありえたと信じさせてくれる小説。」
●市川真人さん(文芸批評家)----「匿名と交換可能が溢れる現代を、交換不能な才能の新人作家が描くだまし絵……だまされるな! 」
●岸本佐知子さん(翻訳家)----「この毒、この笑い、このリズム。みんなも癖になるといいのに。」
●柴崎友香さん(作家)----「どんどん書いてください! もっと読みたいです! 」
●島田虎之介さん(漫画家)----「ただ書く、のではなく、一歩踏み出して、書く。不意打ちされた。」
●豊崎由美さん(書評家)-----「センスがよくて、おかしくって、超絶面白い! わたしの中で、松田青子はミランダ・ジュライとスタッキング可能です。」
●長嶋有さん(作家)----「『だまっておかしいと思っている人』の思いに圧倒されます! 」
●福永信さん(作家)----「ぼくらはずっと松田青子を待っていた。いや、松田青子がぼくらのことを待っていたんだ。」
●フジモトマサルさん(漫画家)----「息継ぎもそこそこに、一気に読みました。記念すべき門出に乾杯! 」
●法貴信也さん(画家)----「すごい! なまえだけで世界が切りとれるような気がしてきた。」
ほか、金氏徹平さん(アーティスト)、名久井直子さん(デザイナー)も推薦!!
表題作「スタッキング可能」に加え、「マーガレットは植える」「もうすぐ結婚する女」、さらには連作掌編「ウオーター・プルーフ嘘ばっかり! 」を収録。
★豪華メンバー推薦!!★
●青木淳悟さん(作家)----「なぜ私は私なのか?----あのときの私が誰でもありえたと信じさせてくれる小説。」
●市川真人さん(文芸批評家)----「匿名と交換可能が溢れる現代を、交換不能な才能の新人作家が描くだまし絵……だまされるな! 」
●岸本佐知子さん(翻訳家)----「この毒、この笑い、このリズム。みんなも癖になるといいのに。」
●柴崎友香さん(作家)----「どんどん書いてください! もっと読みたいです! 」
●島田虎之介さん(漫画家)----「ただ書く、のではなく、一歩踏み出して、書く。不意打ちされた。」
●豊崎由美さん(書評家)-----「センスがよくて、おかしくって、超絶面白い! わたしの中で、松田青子はミランダ・ジュライとスタッキング可能です。」
●長嶋有さん(作家)----「『だまっておかしいと思っている人』の思いに圧倒されます! 」
●福永信さん(作家)----「ぼくらはずっと松田青子を待っていた。いや、松田青子がぼくらのことを待っていたんだ。」
●フジモトマサルさん(漫画家)----「息継ぎもそこそこに、一気に読みました。記念すべき門出に乾杯! 」
●法貴信也さん(画家)----「すごい! なまえだけで世界が切りとれるような気がしてきた。」
ほか、金氏徹平さん(アーティスト)、名久井直子さん(デザイナー)も推薦!!
表題作「スタッキング可能」に加え、「マーガレットは植える」「もうすぐ結婚する女」、さらには連作掌編「ウオーター・プルーフ嘘ばっかり! 」を収録。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2013/1/18
- 寸法13.5 x 2 x 19.5 cm
- ISBN-104309021506
- ISBN-13978-4309021508
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商品の説明
著者について
1979年兵庫県生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業。訳書に『はじまりのはじまりのはじまりのおわり』(アヴィ=著/トリシャ・トゥサ=画 福音館書店)がある。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2013/1/18)
- 発売日 : 2013/1/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 192ページ
- ISBN-10 : 4309021506
- ISBN-13 : 978-4309021508
- 寸法 : 13.5 x 2 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 840,326位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 19,154位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読み始めた最初のうちは面白いと思ったのだけど、読み進めるうちにちょっときつくなってきた。全部を読み終えたいま、別の言い方をすれば、発想は良いと思ったのだけど、全体の構成がどうだろうと思った(この感想は、以下に取り上げている表題作「スタッキング可能」以外の本書所収作品にも当てはまる)。
たとえば表題作「スタッキング可能」は、ひとつのオフィスビルを舞台にしていて、そのビルで働いているひとを登場人物にしている。5階で働いているA田さんとか、6階で働いているE野さんとか、たくさん出てくる。名前をイニシャルトーク風にしているのは、登場人物の匿名性や交換可能性を高めるというか、強烈な個性を持った人物として扱わないためというか、その辺にいるひとりとして扱うためだろうけれど、そうした交換可能で没個性的な人物たちのエピソードが延々と続いて行く感じは、小説の面白さや完成度にどう関係しているのだろう? あるいは、交換可能で没個性的な人物たちのエピソードを書くにしても、一般的な小説のように1ページ目からページを順にめくり読んでいくという形式で良かったのだろうか、もっと別の読ませ方があったのではないだろうか?
同じことを別の言い方で書くと、この小説は、もっとエピソードを増やして長くもできただろうし、あるいは逆に短くもできただろうと感じる。つまり、長さに必然性があるように感じられなかった。
という感じで、「スタッキング可能」というタイトルに反して、小説内の出来事が積み重なっていかない感じがした。いずれにしても、着想自体は面白いと思うので、もうちょっと練って、どう作品に落とし込むかが見つかると、より良い作品になるのではないかと思った。
たとえば表題作「スタッキング可能」は、ひとつのオフィスビルを舞台にしていて、そのビルで働いているひとを登場人物にしている。5階で働いているA田さんとか、6階で働いているE野さんとか、たくさん出てくる。名前をイニシャルトーク風にしているのは、登場人物の匿名性や交換可能性を高めるというか、強烈な個性を持った人物として扱わないためというか、その辺にいるひとりとして扱うためだろうけれど、そうした交換可能で没個性的な人物たちのエピソードが延々と続いて行く感じは、小説の面白さや完成度にどう関係しているのだろう? あるいは、交換可能で没個性的な人物たちのエピソードを書くにしても、一般的な小説のように1ページ目からページを順にめくり読んでいくという形式で良かったのだろうか、もっと別の読ませ方があったのではないだろうか?
同じことを別の言い方で書くと、この小説は、もっとエピソードを増やして長くもできただろうし、あるいは逆に短くもできただろうと感じる。つまり、長さに必然性があるように感じられなかった。
という感じで、「スタッキング可能」というタイトルに反して、小説内の出来事が積み重なっていかない感じがした。いずれにしても、着想自体は面白いと思うので、もうちょっと練って、どう作品に落とし込むかが見つかると、より良い作品になるのではないかと思った。
2013年2月18日に日本でレビュー済み
スタッキング椅子→収納に優れた機能的腰掛け→便利な腰掛けOL といったような含みもあるのか。
揃いのマグカップ、揃いの積み重ね椅子のように似通った外見と似通った意識を知らずに共有するかのような代替可能な人物たちが、代替可能なフロアが重なった、代替可能なビルの中、代替可能なオフィス街にある代替可能な都市に一見整然と収納されている、という感じ。テレビのチャンネルが切り替わるように各々のスタッキング可能な意識がエレベーターという通路によって一瞬つながったり切り替わったり。 そこからはみ出すような毒や疎外感やひと匙ほどの狂気も、スタッキングマグに注がれたインスタントコーヒーほどの苦さか、と思わせておきながら、どうにも得体の知れぬねじくれた異様さをも滲ませる匙加減が絶妙だ。(オランウータン上司のくだりも、ガロ系コミック風の絵柄で妙にリアルに迫ってくる気がした。何か出典はあるのだろうか?)
少し残念だったのは、ラスト近くの語り手にスタッキング椅子について言及させる事で、作者自ら作品の構造をばらしてしまうこと。読み解きの楽しみが限定されてしまう気するのだが…。とはいえ、とても面白く一気に読み、感想を誰かに言いたくなってしまった。コージーミステリが作品の中どんな役割を果たしてるのか、とか、他の方がどう読んだのかも知りたい。
揃いのマグカップ、揃いの積み重ね椅子のように似通った外見と似通った意識を知らずに共有するかのような代替可能な人物たちが、代替可能なフロアが重なった、代替可能なビルの中、代替可能なオフィス街にある代替可能な都市に一見整然と収納されている、という感じ。テレビのチャンネルが切り替わるように各々のスタッキング可能な意識がエレベーターという通路によって一瞬つながったり切り替わったり。 そこからはみ出すような毒や疎外感やひと匙ほどの狂気も、スタッキングマグに注がれたインスタントコーヒーほどの苦さか、と思わせておきながら、どうにも得体の知れぬねじくれた異様さをも滲ませる匙加減が絶妙だ。(オランウータン上司のくだりも、ガロ系コミック風の絵柄で妙にリアルに迫ってくる気がした。何か出典はあるのだろうか?)
少し残念だったのは、ラスト近くの語り手にスタッキング椅子について言及させる事で、作者自ら作品の構造をばらしてしまうこと。読み解きの楽しみが限定されてしまう気するのだが…。とはいえ、とても面白く一気に読み、感想を誰かに言いたくなってしまった。コージーミステリが作品の中どんな役割を果たしてるのか、とか、他の方がどう読んだのかも知りたい。
2014年11月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
途中まで読んだ感想としては、作家としての独自性も素晴らしいけど、現代社会というものを相当勉強した方ではないかと思いました。芥川賞、直木賞を受賞してほしいとの呼び声も一読して理解出来ました。書き続けることで達成できるといいですね。応援しています。
2013年5月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
読んでいて面白くなくはないのだけれど、でも軽いですね。
軽いからウケるんだろうな(それにアオコさんが美人だから?)。
会社勤めの女性たち(男性も出てくるけど)の、「あー、こういうのってあるよね」ということが、女性もののブランド名を豊かにちりばめながら、次々に出てくる。
サービス精神旺盛で、盛り沢山。
その中に文学的な仕掛けももちろんあって、文学少年少女をくすぐってくれる。
自分は「選ばれし者」なのか、それとも他の誰とも交換可能な非存在にすぎないのか。D山という人物が自信を持って言う――「私が一番ここにいないと」。
だけど、結局は半径3メートルの世界を出ないんだなあ。
それが消化不良の感を残す。
同じく交換可能性(スタッキング可能性)や不在を扱った秀抜な作品、青木淳悟の『私のいない高校』と比較してみると、この小説の不足、未熟が見えてくる。
面白かったのは「マーガレットは植える」という短編の方。
作者本人のインタビューによれば、これは「マーガレットハウエル」の変換間違いから着想した作品だそうだ。創作のきっかけからしてそんなダジャレみたいものだからだろうか、表題作よりも常識をはるかに突き抜けた、ぶっ飛んだ内容で実に面白い。
「上司がオランウータン」なんていうよりずっとシュール。
よけいなサービスなどせずに、この調子で貫いた中長編を書いてくれたら、青木淳悟を超えられるんじゃないかと思った。
軽いからウケるんだろうな(それにアオコさんが美人だから?)。
会社勤めの女性たち(男性も出てくるけど)の、「あー、こういうのってあるよね」ということが、女性もののブランド名を豊かにちりばめながら、次々に出てくる。
サービス精神旺盛で、盛り沢山。
その中に文学的な仕掛けももちろんあって、文学少年少女をくすぐってくれる。
自分は「選ばれし者」なのか、それとも他の誰とも交換可能な非存在にすぎないのか。D山という人物が自信を持って言う――「私が一番ここにいないと」。
だけど、結局は半径3メートルの世界を出ないんだなあ。
それが消化不良の感を残す。
同じく交換可能性(スタッキング可能性)や不在を扱った秀抜な作品、青木淳悟の『私のいない高校』と比較してみると、この小説の不足、未熟が見えてくる。
面白かったのは「マーガレットは植える」という短編の方。
作者本人のインタビューによれば、これは「マーガレットハウエル」の変換間違いから着想した作品だそうだ。創作のきっかけからしてそんなダジャレみたいものだからだろうか、表題作よりも常識をはるかに突き抜けた、ぶっ飛んだ内容で実に面白い。
「上司がオランウータン」なんていうよりずっとシュール。
よけいなサービスなどせずに、この調子で貫いた中長編を書いてくれたら、青木淳悟を超えられるんじゃないかと思った。
2013年2月28日に日本でレビュー済み
個々の独白に対して「合う」「合わない」はあるかもしれないが、それだけを基に評価を下してしまったら、この作品(表題作のこと)を「きちんと読んだ」ことにはならないと思う。いや、もちろん私が完璧にばっちりとこの作品を読めているなどと言う気は毛頭ないけれども、流石に多少は形式面における工夫のことは意識しなければならないのではないか。
同じフロアで繰り広げられる表面的な会話の裏で当事者たちがどう感じているのか、視点を次々と切り替えながら描き出される。「本音」と「建前」が絡み合う重層構造を表現する手法として、極めて適したやり方だと思う。
こうして様々な人々の様々な考え方、その「スタッキング不可能」な行き違いを表す一方で、本作を読んでいると、別々のフロアでほとんどまったく同じ思考を行っている別々の人間の独白が何の違和感もなく接続される。名前が記号だと思って読み飛ばしていると、例えば、中盤でタンブラーを愛用してコージーミステリを愛読する女性社員に心の中で詫びながらも同僚とのレズビアン会議に身を投じる男の社員は、冒頭のB田とは全くの別人であることに気づけない。
もちろん、我々が生きるこの現実世界に於いて、ここまでパーフェクトな類似はそうそう起こるものではない(と信じたい)。場面設定も人物名も匿名性の高い、一種の「アレゴリー」だと私は感じた。
エレベーターの縦軸におけるスタッキングの可能性と、フロアの横軸におけるスタッキングの不可能性をあらわにする作者の視点は非常に冷めた、容赦のないものだ。しかし、物語全体としてはとても前向きなトーンを感じさせるところがいい。人間が皆所詮だれか他の人とスタッキング可能な存在だとしても、そのこと自体を笑い飛ばすような、明るい力のある作品だ。
映像では、こうはいかない。小説でしかできないことだ。
同じフロアで繰り広げられる表面的な会話の裏で当事者たちがどう感じているのか、視点を次々と切り替えながら描き出される。「本音」と「建前」が絡み合う重層構造を表現する手法として、極めて適したやり方だと思う。
こうして様々な人々の様々な考え方、その「スタッキング不可能」な行き違いを表す一方で、本作を読んでいると、別々のフロアでほとんどまったく同じ思考を行っている別々の人間の独白が何の違和感もなく接続される。名前が記号だと思って読み飛ばしていると、例えば、中盤でタンブラーを愛用してコージーミステリを愛読する女性社員に心の中で詫びながらも同僚とのレズビアン会議に身を投じる男の社員は、冒頭のB田とは全くの別人であることに気づけない。
もちろん、我々が生きるこの現実世界に於いて、ここまでパーフェクトな類似はそうそう起こるものではない(と信じたい)。場面設定も人物名も匿名性の高い、一種の「アレゴリー」だと私は感じた。
エレベーターの縦軸におけるスタッキングの可能性と、フロアの横軸におけるスタッキングの不可能性をあらわにする作者の視点は非常に冷めた、容赦のないものだ。しかし、物語全体としてはとても前向きなトーンを感じさせるところがいい。人間が皆所詮だれか他の人とスタッキング可能な存在だとしても、そのこと自体を笑い飛ばすような、明るい力のある作品だ。
映像では、こうはいかない。小説でしかできないことだ。
2013年3月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
登場人物の名前がA村だのE田だったりだの、とても読みづらく誰が誰だったっけ?という方に意識がむいてしまい、とても読みづらかったです。
そして、もう一度読んでみたものの読み返すほどの内容でもありませんでした。
そして、もう一度読んでみたものの読み返すほどの内容でもありませんでした。