『
どろんころんど
』や「カメリ」シリーズの舞台となった泥だらけの世界。
人間たちはテレビの中へ消えてしまった。ヒトデをベースにした人工生命の「ヒトデナシ」が人間たちに代わって世界を再建している、あるいは再建しようと行動していることが彼らヒトデナシの目的となっている世界。
語り手の「私」もまたひとりのヒトデナシ。
彼の語るところのよれば、ヒトデナシは自我を持たない、らしい。ところが彼はひょんなことからテレビを手に入れ、それをきっかけに世界を客観視できるようになった。私、という意識を持ったヒトデナシは家を造り、町を造りそして妻と出会う。
ところが、世界再建のシナリオは彼の変化とまるで関係なく進み、彼は「ヒトバシラ」の一体に擬されてしまう。やっとみつけた自分の世界を喪いたくなかった彼は「自分をもうひとり作ることにした」。
もう一つの物語は世界そのものについて。
「昔々あるところに、どんなものでも作ることができるそれはそれは便利な工場があった。」からはじまる、世界が泥の中に沈み、泥の中から生まれた男がささやかな世界を作り出す物語。メタフィクション。
泥の海から町が造られ、町には空き地に猫までいて。自我を持った男が突如生まれたり彼にどこからともなく現れた妻が出来たり。泥の海はまるで惑星ソラリス。
自分を見失いそうになっている不安定な大人の読み手には、かなり来る、ある意味きつい「はるか未来のむかし話」。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
