絵画ではなくて、橋に関するエッセー集を中野京子が書いているらしい。そこで、その「中野京子が語る橋をめぐる物語」を手に取ってみる。北海道新聞に連載されたエッセーを加筆・訂正したそうだが、中野はそう言えば、北海道出身なのであった。
さすがに中野らしくて、いろいろな橋を取り上げて、そこに伝わる物語を独特の観点から伝えてくれる。今回は得意のヨーロッパだけではなく、中国、日本、米国の橋も登場する。さすがに中野だけあって、それほどおもしろい橋ではなくとも、それなりに読める話として登場する。
印象的な話のひとつとしては、マクデブルク水路橋を挙げてみよう。この水路橋は、エルデ川と言うヨーロッパの大河のひとつを跨ぐという川であり、橋である。完成したのが2003年だというから、ちょうど20年前に建造されたことになる。この水路橋については以前から計画があったのだが、このマクデブルクという都市が運悪いことに東ドイツになってしまってこの計画を実行に移すことができなかったという。1989年にベルリンの壁が破壊され、やっとドイツは統一されて、1997年に計画が再考されてたった6年で完成したのである。ドイツらしい堅実な橋であり、スペインやフランスだともっと違うものになっただろう、きっと丈夫で何十年も持ちこたえるのではないかと思える橋にできあがっている。
さてニコライ・ゴーゴリ(英語ではNikolai Gogolと言うらしい。1809~1852)の名作、実を言うとこの作品しか読んだことがないのだが、「外套」に登場するアカーキー・アカーキウェッチに絡む話も取り上げられている。この可愛そうな下級役人は、必死の思いで貯めた金でコートを仕立ててもらったのだが、同僚が用意してくれた祝いの晩にコートを強奪されてしまう。彼は上級役人に自分がどれだけひどい目にあったか申し立てるのだが、蔑視されるだけで憤怒と狼狽のうちに死んでしまう。そしてこの世に怨みを持った彼は、サンクト・ペテルブルクのカリンキン橋に幽霊として現われるようになった。
いつもと同じように、中野らしい、ちょっと変わった視点からいろいろな話を楽しむことができた。
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中野京子が語る 橋をめぐる物語 単行本 – 2014/3/12
中野 京子
(著)
橋は異なる世界を結ぶもの、ドラマが生まれる舞台です。
怖い橋、空想の橋、史実の中の橋、血なまぐさい橋、愛の橋、
この世とあの世をつなぐ橋などさまざまな橋の興味深い話が、
引き込まれるような文章で生き生きと語られております。
悪魔の橋/犬の飛び込み橋/行きどまりの断橋/暗殺者の橋/水面下の橋/
ツイン・タワーに架けられた橋/アントワネットは渡れない/流刑囚の渡る橋/
ロンドン橋、落ちた/若きゲーテの渡った橋/地獄も何のその/樵のろうろく橋/
印象派が描いたポン・ヌフ/美妃の橋/エッシャーの世界のような/小役人の幽霊/
ペルシャ王の舟橋/透明な橋/味噌買い橋/三島由紀夫の『橋づくし』…
怖い橋、空想の橋、史実の中の橋、血なまぐさい橋、愛の橋、
この世とあの世をつなぐ橋などさまざまな橋の興味深い話が、
引き込まれるような文章で生き生きと語られております。
悪魔の橋/犬の飛び込み橋/行きどまりの断橋/暗殺者の橋/水面下の橋/
ツイン・タワーに架けられた橋/アントワネットは渡れない/流刑囚の渡る橋/
ロンドン橋、落ちた/若きゲーテの渡った橋/地獄も何のその/樵のろうろく橋/
印象派が描いたポン・ヌフ/美妃の橋/エッシャーの世界のような/小役人の幽霊/
ペルシャ王の舟橋/透明な橋/味噌買い橋/三島由紀夫の『橋づくし』…
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2014/3/12
- ISBN-104309022731
- ISBN-13978-4309022734
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商品の説明
出版社からのコメント
中野さんの書かれる文章を読むと、中毒症状のようなものが現れます。
心地よく流れるような文章、縦横無尽にエピソードからエピソードへと
軽やかにうつるさま、
思いがけない話の顛末……ページをめくる手がとまらずに、次から次へ
と物語を求めてしまいます。
「橋をめぐる物語」は、奇妙な橋、怖い橋、運命が変わる橋など不思議
な物語も多く収録してあり、
私たちをちょっぴり異次元の世界に誘う、橋渡しをしてくれます。
普段なにげなく渡る橋が違って見えたとき、暗渠になり名前だけが残っ
ているなど橋の名残を見つけたとき、
どんな物語が秘められているのか気になりだしたら、あなたも中野さん
に次いで「橋フェチ」の仲間入りです。
ようこそ!
心地よく流れるような文章、縦横無尽にエピソードからエピソードへと
軽やかにうつるさま、
思いがけない話の顛末……ページをめくる手がとまらずに、次から次へ
と物語を求めてしまいます。
「橋をめぐる物語」は、奇妙な橋、怖い橋、運命が変わる橋など不思議
な物語も多く収録してあり、
私たちをちょっぴり異次元の世界に誘う、橋渡しをしてくれます。
普段なにげなく渡る橋が違って見えたとき、暗渠になり名前だけが残っ
ているなど橋の名残を見つけたとき、
どんな物語が秘められているのか気になりだしたら、あなたも中野さん
に次いで「橋フェチ」の仲間入りです。
ようこそ!
著者について
北海道生まれ。早稲田大学講師。
専門はドイツ文学、西洋文化史。新聞、雑誌に連載を持ち、 テレビ出演や講演会などでも人気。
著書に『怖い絵1〜3』『危険な世界史』『名画の謎』
『はじめてのルーヴル』など多数。
専門はドイツ文学、西洋文化史。新聞、雑誌に連載を持ち、 テレビ出演や講演会などでも人気。
著書に『怖い絵1〜3』『危険な世界史』『名画の謎』
『はじめてのルーヴル』など多数。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2014/3/12)
- 発売日 : 2014/3/12
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 4309022731
- ISBN-13 : 978-4309022734
- Amazon 売れ筋ランキング: - 867,906位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
北海道生まれ。早稲田大学講師。専門はドイツ文学・西洋文化史(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (ISBN-13: 978-4334035662 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年3月29日に日本でレビュー済み
各省のタイトルにしている漢字一文字「奇」「驚」「史」「怖」にまつわる古今東西の”橋”のエピソード集である。中野センセ専門の西洋絵画の話ではない。表紙のヤン・ファン・エイクの「宰相ロランの聖母」は、画面に”橋”が出ているから表紙にしているだけで、本文には出てこない…
エッシャーの世界のようなドイツ・エルベ川に架かるマルデブルク水路橋、スイス・ウーリ州にあるロイス川に架かる悪魔の橋、オランダ・ハルステンにある要塞に架かるサンクン橋、等々…一つとしてまともな橋はない。日本でもよく知られたゴールデン・ゲート・ブリッジですら・・・まともな話は伝わっていない。
橋以外にも中野センセのうんちくが盛りだくさん入っているのがうれしい&楽しい。日本昔はなし、グリム童話、三島由紀夫、ゴーゴリ、ショスタコビッチ、ルノワール等々。それに、映画!
お得意の”怖い絵”は、今回はブリューゲルの「悪女フリート」だけ!というのも面白いけど、いつものように、その文章は快調で面白い&よくわかる。
エッシャーの世界のようなドイツ・エルベ川に架かるマルデブルク水路橋、スイス・ウーリ州にあるロイス川に架かる悪魔の橋、オランダ・ハルステンにある要塞に架かるサンクン橋、等々…一つとしてまともな橋はない。日本でもよく知られたゴールデン・ゲート・ブリッジですら・・・まともな話は伝わっていない。
橋以外にも中野センセのうんちくが盛りだくさん入っているのがうれしい&楽しい。日本昔はなし、グリム童話、三島由紀夫、ゴーゴリ、ショスタコビッチ、ルノワール等々。それに、映画!
お得意の”怖い絵”は、今回はブリューゲルの「悪女フリート」だけ!というのも面白いけど、いつものように、その文章は快調で面白い&よくわかる。
2014年3月30日に日本でレビュー済み
『
怖い絵
』シリーズで多くの読者を魅了した著者が、2011年4月から月に一度北海道新聞の夕刊に連載している「橋をめぐる」エッセイをまとめた一冊です。
「困難を乗り越える表象」、「人生が交差する場所」、「この世ならぬものと出会う所」、「異界そのもの」…。そう著者が評する橋を古今東西から30拾い集め、新聞紙面という限られた紙数の中で随想文にまとめています。
私は著者の日本語の筆致が好きで、こうして新しい著書が出るたびに欠かすことなく手にしています。今回は「橋」を共通のテーマに掲げ、著者は文学、歴史、映画、美術、音楽など幅広い見識を自らの引き出しから取り出しながら論じて行きます。そして著者が最終的に描くのは、人の営みの楽しさ、不可思議さ、哀れさ、愚かさの数々。
アメリカのTVドラマ『 グッド・ワイフ 』第3シーズン第16回「転落の後」は橋から身投げする女性をめぐる訴訟の話ですが、その投身自殺場面にヘンデルのオペラ『セルセ』中のアリア「オンブラ・マイ・フ(なつかしい木陰)」がかかります。どうしてこの曲なのかと思っていましたが、この本によれば、「オンブラ・マイ・フ」は第一幕でかかる歌ですが、『セルセ』の第二幕には有名な舟橋のエピソードが出てくるとの由。「橋の完成式典で突風が起こり、崩落してしまうのだ」(72頁)。なるほど、そういう橋つながりだったのですか。
北海道新聞での連載は今も続いているそうです。3年後くらいには、続編が出されるのではないでしょうか。その日をゆっくりと待ちたいと思います。
「困難を乗り越える表象」、「人生が交差する場所」、「この世ならぬものと出会う所」、「異界そのもの」…。そう著者が評する橋を古今東西から30拾い集め、新聞紙面という限られた紙数の中で随想文にまとめています。
私は著者の日本語の筆致が好きで、こうして新しい著書が出るたびに欠かすことなく手にしています。今回は「橋」を共通のテーマに掲げ、著者は文学、歴史、映画、美術、音楽など幅広い見識を自らの引き出しから取り出しながら論じて行きます。そして著者が最終的に描くのは、人の営みの楽しさ、不可思議さ、哀れさ、愚かさの数々。
アメリカのTVドラマ『 グッド・ワイフ 』第3シーズン第16回「転落の後」は橋から身投げする女性をめぐる訴訟の話ですが、その投身自殺場面にヘンデルのオペラ『セルセ』中のアリア「オンブラ・マイ・フ(なつかしい木陰)」がかかります。どうしてこの曲なのかと思っていましたが、この本によれば、「オンブラ・マイ・フ」は第一幕でかかる歌ですが、『セルセ』の第二幕には有名な舟橋のエピソードが出てくるとの由。「橋の完成式典で突風が起こり、崩落してしまうのだ」(72頁)。なるほど、そういう橋つながりだったのですか。
北海道新聞での連載は今も続いているそうです。3年後くらいには、続編が出されるのではないでしょうか。その日をゆっくりと待ちたいと思います。