著者の作品『離陸』『薄情』を読んだ後に手にした本作。2作が比較的ヘヴィで濃密な長編だったこともあり、ポンポンポンとライトに疾走していく文章のテンポやリズムの心地よさが際立ちました。
絲山作品にふれるといつも、文芸というのはそのテーマやコンテンツもさることながら、文字どおり「文の芸」なんだなあ、という気持ちになりますが、今回もその「文の芸」を堪能することができました。一度乗ったら途中下車できないジェットコースターのように、文の放つ速度でグイグイと先へ進んでいきます。こんなに速く進んでしまうともったいないような……という気にもなりますが、やっぱりその速度で進むのが一番心地よいのでしょう。そして読み終えると一刻も早く次の絲山作品にふれたい欲求が膨らみます。
コンテンツのほうは、五十代の男女の恋愛模様を柱に、どこにでもありそうでなかなかなさそうな、ちょっと不思議な人間関係が展開していきます。その中で、世間のいわゆる「平均」「標準」のようなものからそれぞれどこか少しハミ出しながらも、捨て鉢になるでもなく、悲観するでもなく、過大な夢を描くでもなく、淡々と粛々と自分の生を誠実に引き受けて生きていく登場人物たちの姿をとても好ましく感じました。
最後の最後に用意されていたサプライズも粋でした。「なーんだ、そうだったのか!」とクスクス笑いながら、じんわりと静かな幸福感にしばし浸ることができました。絲山作品の、あまり感動させすぎないところが一貫して好きです。本作もその加減が絶妙でした。
同時収録の「ネクトンについて考えても意味がない」も、ミズクラゲの思考を借りて静かに静かに命を哲学する、温かな佳作。
この著者はメインストリームに乗っかることができない存在たちの弱さをしっかりと抱きしめて受容しているんだな、と思わせてくれるところがいずれの作品にも通底していて、読むたびにホッとします。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥1,540¥1,540 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥1,540¥1,540 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥16¥16 税込
配送料 ¥240 6月12日-14日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】 販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
¥16¥16 税込
配送料 ¥240 6月12日-14日にお届け
発送元: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
販売者: バリューブックス 【防水梱包で、丁寧に発送します】
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
小松とうさちゃん 単行本 – 2016/1/19
絲山秋子
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,540","priceAmount":1540.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,540","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"MNq5abHJsO0CRrtaXYelCGsCUGJkyFmRC5nHL4QwD3anFRXkvARndkF3dYuBPzUGBR6I0JMHtsnFrNscZdv4dp6eeud1CKhJxgEl1boK%2FfS1tghJdr5zvw8hpgSlyI%2FtmUVHCIr12GA%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥16","priceAmount":16.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"16","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"MNq5abHJsO0CRrtaXYelCGsCUGJkyFmRwxgONCKLvuG18HYtuYPM1wx5oJG3ftOFySGmJL%2FJDW2qJEN2HI%2B%2Feo0OoQ%2FeiLW%2BRozK6OH1WMZMLvHGRYZBHF9WzHNp8xPgkJH3TOcN4w7BaMJHYbObJQPCEWL%2FGomLUAC%2FRhZ2pqzD6QR1IxEIuA%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
ーー「小松さん、なんかいいことあった?」
52歳の非常勤講師小松の恋と、
彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱
52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。
52歳の非常勤講師小松の恋と、
彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱
52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2016/1/19
- ISBN-104309024394
- ISBN-13978-4309024394
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1966年東京都生まれ。2003年「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端康成文学賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞を受賞。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2016/1/19)
- 発売日 : 2016/1/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 192ページ
- ISBN-10 : 4309024394
- ISBN-13 : 978-4309024394
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,310,607位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 30,509位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1966年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。住宅設備機器メーカーに入社し、2001年まで営業職として勤務する。03年「イッツ・オンリー・ トーク」で文學界新人賞を受賞。04年『袋小路の男』で川端康成文学賞、05年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、06年『沖で待つ』で芥川賞を 受賞する(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 ダーティ・ワーク (ISBN-13: 978-4087465679 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
星5つ中4.1つ
5つのうち4.1つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
34グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2016年1月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年1月9日に日本でレビュー済み
さえない非常勤講師とネトゲにハマるサラリーマンという組み合わせにひかれて購入。
最初は、もっさいおじさんかと思っていたうさちゃん(すみません(^_^;))でしたが
話が進むにつれ、心強い相棒のように思えてきました。
後半の彼の活躍ぶりは、読んでみてのお楽しみ💕
この二人の話をもっともっと読みたいです😄
最初は、もっさいおじさんかと思っていたうさちゃん(すみません(^_^;))でしたが
話が進むにつれ、心強い相棒のように思えてきました。
後半の彼の活躍ぶりは、読んでみてのお楽しみ💕
この二人の話をもっともっと読みたいです😄
2016年4月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
注文から商品の到着までか早かったです。
評判通り、本の内容も良かったです。
評判通り、本の内容も良かったです。
2022年5月5日に日本でレビュー済み
〇 病人見舞いサービス業という変わった職業のみどり52歳と大学講師の小松52歳が、たまたま新幹線で隣に座ったのをきっかけに知り合って初心で純な恋を実らせるという物語。小松の居酒屋仲間の宇佐美が世間知らずな小松の恋路を助ける。宇佐美は多人数が匿名で参加するオンラインゲームにはまっていて、実はみどりがゲーム仲間だったことが最後に判明する、というあり得ない偶然がおまけに付いてくる。何はともあれハッピーハッピーな物語である。
〇 最後のハッピーエンドに至るまでは、小松の仕事、みどりのくらし、宇佐美のゲームの3つの独立した物語が同時並行で進む。全然関係なさそうな別の3つのストーリーが最後に合流してひとつの世界が姿を現わすという仕掛けは、作者としてはしてやったりというところなのだろう。わたしは、大学講師の立場や収入がこんなに厳しいことを初めて知ったし、病人見舞いサービスという仕事もたしかにありそうに思ったし、オンラインゲームがどんなものかもよく知ることができた(ただちょっと退屈した)、という意味でもなかなかに興味深かった。
〇 ところで本当のところこの小説はどう読むべきなのだろうか? それなりに楽しい時間を過ごしながらさらさらと読んで(文章はテンポが良くて快適だ)、ほんわかと温かい後味を味わうと(何といっても初老の恋が成就するのだ)、さらりと忘れて後には何も残らない。そんな小説だと思った。もちろんそれはそれで良い。ただ「お忙しいかも知れませんがぜひお読みになってごらんなさい。読む価値はありますよ」と勧めるような小説ではないということだ。
〇 最後のハッピーエンドに至るまでは、小松の仕事、みどりのくらし、宇佐美のゲームの3つの独立した物語が同時並行で進む。全然関係なさそうな別の3つのストーリーが最後に合流してひとつの世界が姿を現わすという仕掛けは、作者としてはしてやったりというところなのだろう。わたしは、大学講師の立場や収入がこんなに厳しいことを初めて知ったし、病人見舞いサービスという仕事もたしかにありそうに思ったし、オンラインゲームがどんなものかもよく知ることができた(ただちょっと退屈した)、という意味でもなかなかに興味深かった。
〇 ところで本当のところこの小説はどう読むべきなのだろうか? それなりに楽しい時間を過ごしながらさらさらと読んで(文章はテンポが良くて快適だ)、ほんわかと温かい後味を味わうと(何といっても初老の恋が成就するのだ)、さらりと忘れて後には何も残らない。そんな小説だと思った。もちろんそれはそれで良い。ただ「お忙しいかも知れませんがぜひお読みになってごらんなさい。読む価値はありますよ」と勧めるような小説ではないということだ。
2021年9月18日に日本でレビュー済み
とにもかくにも現実味がすごい。
書き割り感が全然なく、ウェットなのに読みやすい。その点に著者の腕が光る。
欠けた部分を各々抱える小松とうさちゃんとみどりが交錯し合う。その混ざり具合が心地よい。
人間の悲哀が程よく滲み出ている。
その後のくらげの話も小松とうさちゃんの掌編も何か刺さる。
もろもろあって、くたびれた人向けですね。沁みますよ。
書き割り感が全然なく、ウェットなのに読みやすい。その点に著者の腕が光る。
欠けた部分を各々抱える小松とうさちゃんとみどりが交錯し合う。その混ざり具合が心地よい。
人間の悲哀が程よく滲み出ている。
その後のくらげの話も小松とうさちゃんの掌編も何か刺さる。
もろもろあって、くたびれた人向けですね。沁みますよ。
2019年10月19日に日本でレビュー済み
相変わらず心の奥襞の小さいしこりをピンセットでつまみ出して、
目の前に置いて、しばし眺めて、持ち上げて、ちょっと噛んでみて、
やおら言葉にしたような絲山ワールドを
待っていたおつまみが来たように味わうのでした。
目の前に置いて、しばし眺めて、持ち上げて、ちょっと噛んでみて、
やおら言葉にしたような絲山ワールドを
待っていたおつまみが来たように味わうのでした。
2016年5月9日に日本でレビュー済み
面白かった。そして新しい小説だった。
小松から宇佐美へ、みどりへ、八重樫へ、物語の主体が次々と入れ替わり、時間も現在と過去を行き来するのに、人物・場面切り替えの記述は一切なく、よどみなく一律の調子で文章が綴られていく。それなのに読み手のこちらは一つも混乱することなく物語世界を牽引されて、無意識のうちに未体験のなめらかな読書体験を堪能させられている。すごいな、絲山秋子。力まずに軽やかにすごいことをする。感服しました。
小松から宇佐美へ、みどりへ、八重樫へ、物語の主体が次々と入れ替わり、時間も現在と過去を行き来するのに、人物・場面切り替えの記述は一切なく、よどみなく一律の調子で文章が綴られていく。それなのに読み手のこちらは一つも混乱することなく物語世界を牽引されて、無意識のうちに未体験のなめらかな読書体験を堪能させられている。すごいな、絲山秋子。力まずに軽やかにすごいことをする。感服しました。
2016年4月28日に日本でレビュー済み
不思議な気持ちの流れを感じることのできる小説だと思います。
事実は小説よりも奇なりといいますが自然災害や意外な事件に取り巻かれているとなにやら不安な不穏感あふれる世の中と、
それでいて妙に凪いでいる自分の周りの現実にギャップを感じませんか?
この小説はカバーの絵や表題から受ける印象のとおりで、
すこしだけ見慣れないけど特別あり得ない架空なハナシではなく、
ほんのちょっとだけ変わった生活をおくっている(月3万円の講義を掛け持ちして生計を立てている非常勤講師のおじさんとか、入院患者にダミーの人間関係を演じてお見舞い業をしている中年女性とかです)登場人物たちが極めてまっとうで自然な動きで感情をめぐらしたり、
ちょっとだけ前向きに人生を進めたりします。
とても自然と言うか無理のない展開で違和感を感じずに読めるのですが、やはり小説なので作者はちゃんと結末や山場を仕込んでくれていますし
感動や共感といったものがじんわりときもちのいい読後感として胸に残る仕掛けになってます。
例えれば新聞の心温まる小さな記事や、はじめてのおつかい、で家族の暮らしぶりが垣間見えたときのような気持ちです。
不思議な気持ちの流れとはそんな意味で書いてみました。
作中に交互に挟まれるネットゲームについて実は異物感がずーっと残っていたのですがきちんと納得できる終わり方に落としてくれています。
読了後、最初から読み直してまた違った読み感覚にニヤニヤしたくなりますので楽しみにしておいてください。
事実は小説よりも奇なりといいますが自然災害や意外な事件に取り巻かれているとなにやら不安な不穏感あふれる世の中と、
それでいて妙に凪いでいる自分の周りの現実にギャップを感じませんか?
この小説はカバーの絵や表題から受ける印象のとおりで、
すこしだけ見慣れないけど特別あり得ない架空なハナシではなく、
ほんのちょっとだけ変わった生活をおくっている(月3万円の講義を掛け持ちして生計を立てている非常勤講師のおじさんとか、入院患者にダミーの人間関係を演じてお見舞い業をしている中年女性とかです)登場人物たちが極めてまっとうで自然な動きで感情をめぐらしたり、
ちょっとだけ前向きに人生を進めたりします。
とても自然と言うか無理のない展開で違和感を感じずに読めるのですが、やはり小説なので作者はちゃんと結末や山場を仕込んでくれていますし
感動や共感といったものがじんわりときもちのいい読後感として胸に残る仕掛けになってます。
例えれば新聞の心温まる小さな記事や、はじめてのおつかい、で家族の暮らしぶりが垣間見えたときのような気持ちです。
不思議な気持ちの流れとはそんな意味で書いてみました。
作中に交互に挟まれるネットゲームについて実は異物感がずーっと残っていたのですがきちんと納得できる終わり方に落としてくれています。
読了後、最初から読み直してまた違った読み感覚にニヤニヤしたくなりますので楽しみにしておいてください。