「マルケスの再来」と名高いホルへ・フランコの代表作です。いわゆる「ファム・ファタール」に類別されるロサリオという女性の死がまず示され、その収斂された現在を起点として、そこから拡散する形でその奥行きを読者に見せる構成です。あまりあらすじを説明することに意味を見出せないので割愛しますが、「ロサリオは無数の物語を語ることができ、それらは全部ちがう話と思われたが、しかし結局はみな同じで、ロサリオが運命との勝負に勝とうとむなしくも挑戦している物語なのだった。」という文章が全体を集約しているように思います。ただ、「マルケスの再来」という評言に大きな期待を持ち過ぎると、マルケスの顕著な特質である冗長さが本家に及ばないぶん、すこし肩すかしを食らうかもしれません。個人的には「欲望の翼」等の時期のウォン・カーワイの作品を連想しました。
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ロサリオの鋏 (Modern&Classic) 単行本 – 2003/12/13
第二のガルシア・マルケスと言われる新進作家の話題作。中南米のスラムを舞台に、美貌の殺し屋を巡る痛ましくも美しいラブ・ストーリー。彼女は8歳で犯され、男の局部を鋏で突いて復讐したことから鋏のロサリオと呼ばれていた。
ホルヘ・フランコ (フランコ,ホルヘ)
1962年、コロンビア生まれ。著書『呪われた愛』、『悪い夜』、『パライソ・トラベル』。『ロサリオの鋏』はベストセラーとなり、(スペインのハムレット国際小説賞受賞)、第二のガルシア・マルケスといわれている。
ホルヘ・フランコ (フランコ,ホルヘ)
1962年、コロンビア生まれ。著書『呪われた愛』、『悪い夜』、『パライソ・トラベル』。『ロサリオの鋏』はベストセラーとなり、(スペインのハムレット国際小説賞受賞)、第二のガルシア・マルケスといわれている。
- 本の長さ229ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2003/12/13
- ISBN-104309203981
- ISBN-13978-4309203980
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
中南米のスラムを舞台にした、美貌の殺し屋を巡る痛ましくも美しいラブ・ストーリー。8歳で犯され、男の局部を鋏で突いて復讐し、鋏のロサリオと呼ばれる女は、鋏と銃弾、セックスと報復、快楽と苦悩の人生を生きてきた…。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2003/12/13)
- 発売日 : 2003/12/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 229ページ
- ISBN-10 : 4309203981
- ISBN-13 : 978-4309203980
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,078,116位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 266位スペイン・ポルトガル文学研究
- - 344位その他の外国文学作品
- - 394位スペイン文学
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2004年4月21日に日本でレビュー済み
この本は衝撃的な場面から始まり、最後まで一気に読ませてしまうような力があります。話は本の題名でもある「ロサリオ」の言葉を、彼女の恋人の親友が自分の思いと共に語るという形をとっています。それは告白のようで、起こっている事件の深刻さとあいまって読んでいて切なくなります。残念なのは、本の舞台であるコロンビア独特の社会背景を知らないと分かりにくい点があることです。
2005年7月17日に日本でレビュー済み
80年代後半。コロンビア第2の都市メデジン。
メデジンカルテル・エスコバル一派と、麻薬マネーを狙う反政府ゲリラ、
大物麻薬犯の米国引渡しをねらう政府が三つ巴の麻薬戦争を繰り広げていた。
その際、政府要人・ゲリラ暗殺の急先鋒となったのがシカリオと呼ばれる
殺し屋たちだった。シカリオ部隊の幹部たちは、そのほとんどがどん底の
スラムから犯罪に犯罪を重ね這いあがってきたアウトローだったという。
本書は、そんな時代に生きた女シカリオの物語である。
本書の時間設定は、主人公ロサリオが銃弾に倒れ息を引きとるまでの数時間。
語り手で上流階級出身のアントニオ(ラストではじめて名が判明する)が、
病院に担ぎこまれたロサリオに付き添いつつ、横恋慕する彼女を追憶する。
筋を追うのは止したほうが良いだろう。読者はその疾走感に、ただひたすら
身を委ねるべきなのだ。この乾ききった青春小説・甘ったるい犯罪小説を、
メデジンの恐るべき夜を味わうべきなのだ。
フラッシュバックなど映画技法を用いた表現法や、若者特有の俗語会話などを
散りばめた作風はむしろ、初期のバルガスジョサ『都会と犬ども』あるいは
近い世代でグアテマラ出身のロドリゴ・レイローサを髣髴とさせる。
なお、俗語訳についての不満はさておき、指摘をひとつ。
本書が2000年に獲ったのは「スペインのハムレット国際小説賞」ではなく、
国際推理作家協会の「ダシール・ハメット国際小説賞」では?
ラテンアメリカのみならず世界文学の新たな才能の登場に、まずは喝采。
メデジンカルテル・エスコバル一派と、麻薬マネーを狙う反政府ゲリラ、
大物麻薬犯の米国引渡しをねらう政府が三つ巴の麻薬戦争を繰り広げていた。
その際、政府要人・ゲリラ暗殺の急先鋒となったのがシカリオと呼ばれる
殺し屋たちだった。シカリオ部隊の幹部たちは、そのほとんどがどん底の
スラムから犯罪に犯罪を重ね這いあがってきたアウトローだったという。
本書は、そんな時代に生きた女シカリオの物語である。
本書の時間設定は、主人公ロサリオが銃弾に倒れ息を引きとるまでの数時間。
語り手で上流階級出身のアントニオ(ラストではじめて名が判明する)が、
病院に担ぎこまれたロサリオに付き添いつつ、横恋慕する彼女を追憶する。
筋を追うのは止したほうが良いだろう。読者はその疾走感に、ただひたすら
身を委ねるべきなのだ。この乾ききった青春小説・甘ったるい犯罪小説を、
メデジンの恐るべき夜を味わうべきなのだ。
フラッシュバックなど映画技法を用いた表現法や、若者特有の俗語会話などを
散りばめた作風はむしろ、初期のバルガスジョサ『都会と犬ども』あるいは
近い世代でグアテマラ出身のロドリゴ・レイローサを髣髴とさせる。
なお、俗語訳についての不満はさておき、指摘をひとつ。
本書が2000年に獲ったのは「スペインのハムレット国際小説賞」ではなく、
国際推理作家協会の「ダシール・ハメット国際小説賞」では?
ラテンアメリカのみならず世界文学の新たな才能の登場に、まずは喝采。
2004年1月5日に日本でレビュー済み
彼を「マルケスの再来」と言わしめる理由であり、ラテンアメリカ文学の特徴であるようにも思えるものが、1.時空の飛躍と2.日常的な暴力である。
小説内でしばしば前後する時間、そして空間の飛躍。それだけではない。登場人物の心さえもが読者の想像の及ばないところに飛んでいってしまうのだ。私は繰り返されるあまりにも唐突な飛躍に疲労してしまう。この時空の飛躍は、「百年の孤独」には更に大胆な形で現れているが、本書ではより滑らかに、映画の中のカメラがスパンするように取り入れられている。
もう一つの暴力について。本書や「百年の孤独」で繰り返される殺人はあまりに日常的で、人が死ぬという感覚を麻痺させる。さらに驚くべきことは、日本の読者にはおそらく限りなく非現実的なこの殺人が、この都市においては本当の日常であり現実そのものであるということだ。ここに最大の異質感、違和感を感じる。しかしこの感覚こそがラ米文学の特徴であり最大の魅力だ。
そういった意味で本書はマルケスの系譜を確実に引き継いだ作品である。
小説内でしばしば前後する時間、そして空間の飛躍。それだけではない。登場人物の心さえもが読者の想像の及ばないところに飛んでいってしまうのだ。私は繰り返されるあまりにも唐突な飛躍に疲労してしまう。この時空の飛躍は、「百年の孤独」には更に大胆な形で現れているが、本書ではより滑らかに、映画の中のカメラがスパンするように取り入れられている。
もう一つの暴力について。本書や「百年の孤独」で繰り返される殺人はあまりに日常的で、人が死ぬという感覚を麻痺させる。さらに驚くべきことは、日本の読者にはおそらく限りなく非現実的なこの殺人が、この都市においては本当の日常であり現実そのものであるということだ。ここに最大の異質感、違和感を感じる。しかしこの感覚こそがラ米文学の特徴であり最大の魅力だ。
そういった意味で本書はマルケスの系譜を確実に引き継いだ作品である。
2004年3月10日に日本でレビュー済み
友達の彼女に叶わぬ恋心を抱いてしまう男。この女は勝気で我が儘で嘘つきで、恋の弱みに付け込んで男をまるで“都合のいい男”扱いする。だけど恋人にも見せない弱い部分を男には見せるし、男の方も女の真情を分ってるのは自分だけだと思っている......
なんてニューミュージック(!)な題材なんだけど、舞台はコロンビア。彼女は美貌の殺し屋。貧富の差、暴力、麻薬、マフィア、レイプといった背景と、残虐で奔放な女のキャラの前では、こうした男の純情も日本的なウェットな感じではなく、なぜか、素直に共感を持って読むことが出来てしまう。社会的な背景や彼女を取り巻く境遇には悲惨なものがあるし、実際、銃で撃たれた彼女は男に看取られて死んでしまうのだが、著者の陽性、ユーモア、現代性、軽やかな文体が、この物語をうまく料理している。多分、一気に読めてしまい、重い濃密な内容に反して、とても爽やかな読後感を持つと思う。
なんてニューミュージック(!)な題材なんだけど、舞台はコロンビア。彼女は美貌の殺し屋。貧富の差、暴力、麻薬、マフィア、レイプといった背景と、残虐で奔放な女のキャラの前では、こうした男の純情も日本的なウェットな感じではなく、なぜか、素直に共感を持って読むことが出来てしまう。社会的な背景や彼女を取り巻く境遇には悲惨なものがあるし、実際、銃で撃たれた彼女は男に看取られて死んでしまうのだが、著者の陽性、ユーモア、現代性、軽やかな文体が、この物語をうまく料理している。多分、一気に読めてしまい、重い濃密な内容に反して、とても爽やかな読後感を持つと思う。
2004年1月4日に日本でレビュー済み
彼を「マルケスの再来」と言わしめる理由であり、ラテンアメリカ文学の特徴であるようにも思えるものが、1.時空の飛躍と2.日常的な暴力である。
小説内でしばしば前後する時間、そして空間の飛躍。それだけではない。登場人物の心さえもが読者の想像の及ばないところに飛んでいってしまうのだ。私は繰り返されるあまりにも唐突な飛躍に疲労してしまう。この時空の飛躍は、「百年の孤独」には更に大胆な形で現れているが、本書ではより滑らかに、映画の中のカメラがスパンするように取り入れられている。
もう一つの暴力について。本書や「百年の孤独」で繰り返される殺人はあまりに日常的で、人が死ぬという感覚を麻痺させる。さらに驚くべきことは、日本の読者にはおそらく限りなく非現実的なこの殺人が、この都市においては本当の日常であり現実そのものであるということだ。ここに最大の異質感、違和感を感じる。しかしこの感覚こそがラ米文学の特徴であり最大の魅力だ。
そういった意味で本書はマルケスの系譜を確実に引き継いだ作品である。
小説内でしばしば前後する時間、そして空間の飛躍。それだけではない。登場人物の心さえもが読者の想像の及ばないところに飛んでいってしまうのだ。私は繰り返されるあまりにも唐突な飛躍に疲労してしまう。この時空の飛躍は、「百年の孤独」には更に大胆な形で現れているが、本書ではより滑らかに、映画の中のカメラがスパンするように取り入れられている。
もう一つの暴力について。本書や「百年の孤独」で繰り返される殺人はあまりに日常的で、人が死ぬという感覚を麻痺させる。さらに驚くべきことは、日本の読者にはおそらく限りなく非現実的なこの殺人が、この都市においては本当の日常であり現実そのものであるということだ。ここに最大の異質感、違和感を感じる。しかしこの感覚こそがラ米文学の特徴であり最大の魅力だ。
そういった意味で本書はマルケスの系譜を確実に引き継いだ作品である。