原題"The Mandala of Sherlock Holmes"。
『空き家事件』の「ぼくは2年間チベットへ旅して、ラサを訪ね、ダライ・ラマと数日を過ごしたりして…」の一文から敷衍された、ホームズ空白時代のパスティーシュ。“ライヘンバッハの滝で死んだはずの男は生きていた!”式の長編です。空白時代のこととて、ワトスン役は、インド人の諜報部員ハリー・チュンデル・ムーケルジー君です。この「未発表原稿」は、彼の子孫が、インドで、地震で崩れ落ちた壁の中から見つけたことになっています。
帯にも書かれている目次を表示します。
第1部 インドへ
謎のノルウェー人/赤の恐怖/シャーロック・ホームズの回想/動植物の研究/真鍮製の象/闇の中の銃弾/国境急行/ヒマラヤ杉の下で/本物の悪漢
第2部 チベットへ
旅支度、再び/ヒンドゥスタン=チベット街道を行く/絶体絶命/チベットへのパスポート/世界の屋根の上で/神々の都/ノルブ・リンカの茶会
第3部 時空を超えて
空飛ぶ剣/盗まれた曼陀羅/闇の男/トランスヒマラヤ山脈へ/シャンバラの氷の寺院/知恵の目が開く/最後の挨拶
カバーの見返し部分に載っている著者紹介によると、ジャムヤン・ノルブは、チベットを代表する作家。ダラムサーラにあるチベット学研究所所長でノンフィクション、戯曲、伝統歌劇の脚本を書き、チベット文化やチベット解放運動について欧米で講演を続けている、とあります。
従って、インドからチベットあたりの「東洋」の描写に無理がなく、西洋人作家にありがちな勘違いや偏見に苦笑することもなく、けれど外国人読者にも判りやすく、読み進められますが。
1冊の本としては、まとまりがありません。第1部のインドでは、ホームズ物らしい推理や謀殺、モラン大佐の名前が出て、ホームズも探偵らしいのですが、第2部は「チベット探検記」になり(旅行記と思えば、それなりに楽しめます。こんな楽しい旅行の最中に、ホームズが悪癖の注射器を振り回すなんて!と、怒り出さずに読める人なら)、第3部になると、すっかりオカルト小説です。確かに帯にも「チベット仏教の精神世界を織り込んだ」とはありますが、「シャーロック・ホームズ対ドラキュラ」みたいになってます。オカルトやファンタジー小説は好きなほうですが、ホームズ物はホームズ物として読みたいと思いました。
チベット・ファンにもホームズ・ファンにも、インディー・ジョーンズ・ファンにも(^_^;)中途半端な1作。
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シャーロック・ホームズの失われた冒険 単行本 – 2004/3/11
ホームズが『最後の事件』でライヘンバッハの滝に落ちて姿を消して以来、『空家の冒険』で復活するまでの三年間をチベットで過ごした。本書はこの『大空白時代』の彼の冒険を実在人物達の中で再現を試みた傑作小説。
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2004/3/11
- ISBN-104309204074
- ISBN-13978-4309204079
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ホームズは「最後の事件」でライヘンバッハの滝に落ちて姿を消して以来、「空家の冒険」で復活するまでの3年間をチベットで過ごした。この「大空白時代」の、彼の冒険を実在人物たちの中で再現しようとした物語。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2004/3/11)
- 発売日 : 2004/3/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 384ページ
- ISBN-10 : 4309204074
- ISBN-13 : 978-4309204079
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,351,830位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2004年3月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年4月12日に日本でレビュー済み
原題の"The mandala of Sherlock Homes"を直訳した方が、原作の内容を違和感なく伝えるものになったでしょう。探偵小説というよりは、インドとチベットを舞台としたライダー・ハガードばり秘境冒険心霊小説です。
といっても、コナン・ドイル自身、かの有名な『失われた世界』で、そのようなジャンルの代表的作家になっているのだし、また、心霊研究協会の会長を務めたり、『霧の国』で霊媒の世界を描いたりと、けっこう精神世界に深入りしているので、これも不思議ではありません。ただ、宿敵モリアーティ教授の人種にかんしてだけは、いささか無理があったと思います。そこを除けば、けっこうハイレベルまで行っています。
それと、これはぜひ、多くの人に読んでもらいたいと思ったことは、チベット人である作者によって後日談として書かれた、中国共産党軍によるチベット弾圧と文化抹殺の生々しい記述です。あたらめて、チベットを救うためいったい何ができるかを、自問自答させられました。
といっても、コナン・ドイル自身、かの有名な『失われた世界』で、そのようなジャンルの代表的作家になっているのだし、また、心霊研究協会の会長を務めたり、『霧の国』で霊媒の世界を描いたりと、けっこう精神世界に深入りしているので、これも不思議ではありません。ただ、宿敵モリアーティ教授の人種にかんしてだけは、いささか無理があったと思います。そこを除けば、けっこうハイレベルまで行っています。
それと、これはぜひ、多くの人に読んでもらいたいと思ったことは、チベット人である作者によって後日談として書かれた、中国共産党軍によるチベット弾圧と文化抹殺の生々しい記述です。あたらめて、チベットを救うためいったい何ができるかを、自問自答させられました。