思ったより面白くなかった。カレーソーセージの起源を遡ると見せて、ある女性の戦時下の禁断の愛の物語、以上。
それを劇的に描けばすごく面白くなっただそうに、妙に冷静に質実剛健に書いているから中途半端。
でもこれってドイツの特徴そのまま。私たちはもはや世界中の文学を楽しめる時代に生きているけど、まだまだナチスの傷跡は続く国にとってはいくら他がグローバル化したからと言っても閉塞感からは抜けられないのかもしれない。
ドイツで大変評判になって映画化もしたそうだが、私には真面目くさい文章に時折鮮烈な表現が挟まるところにわざとらしさを感じ、せっかく題材が面白いのに作者の技量が足りないと感じた。
心理描写と会話がごちゃつく感じに、おそらく作者は文献とか評論は得意だけど、それが「物語を描く才能」ではないことに気づかず作家デビューしているような感覚を受けた。偉そうに批判しているが、こうした硬い文章がお好きな方は大変ハマるでしょうね。
私はこれを、もしジュンパラヒリが、ジュリアンバーンズが、はたまたオンダーチェが書いたなら、猛烈な傑作になっただろうと思ってしまう。

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カレーソーセージをめぐるレーナの物語 (Modern&Classic) 単行本 – 2005/6/10
カレーソーセージというファストフード誕生を巡る一人の女性の悲恋の物語。食べ物が人間に与える幸福と苦悩が、敗色濃いナチス・ドイツで脱走兵をかくまいつつ、不器用だがしたたかに日常を生きるレーナの人生と共に語られる。
- 本の長さ221ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2005/6/10
- ISBN-104309204392
- ISBN-13978-4309204390
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2005/6/10)
- 発売日 : 2005/6/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 221ページ
- ISBN-10 : 4309204392
- ISBN-13 : 978-4309204390
- Amazon 売れ筋ランキング: - 462,800位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2012年3月29日に日本でレビュー済み
NHKの旅番組とかドイツ語講座で、ちょくちょく紹介されるようになったのがこのカリーブルストなるさしておいしくもない立ち食いスナック。アメリカ、イギリス、オランダ、そしてドイツといった禁欲を旨とするプロテスタントの国の料理たるもの、確かに美味しくはないけど・・・・・。
それはさておき、本書は、「僕」がこのカレーソーセージに惚れ込んだがゆえに、それを発明した女性料理研究家の半生を聞くという近過去小説である。この前の戦争(と言っても京都人のいうように応仁の乱でもなく、新旧キリスト教の30年戦争でもない)で、ドイツ軍から脱走した一等兵と人妻との不倫ものがたり。そこにてっきり戦死したものとばかりと思っていた夫が帰ってきて、ばったり若いツバメと鉢合わせ、てなことになるやら、いやはや、もう上を下への大騒ぎ(っていうほどのスラップ・スティックでもない)。
またまたそれはさておいて、この本はなかなか、面白い小説ではある。ウーヴェ・ティムなる作家からして、始めて知ることになる人だったが、本書はなかなか現地でも評判だったらしい。
それはさておき、本書は、「僕」がこのカレーソーセージに惚れ込んだがゆえに、それを発明した女性料理研究家の半生を聞くという近過去小説である。この前の戦争(と言っても京都人のいうように応仁の乱でもなく、新旧キリスト教の30年戦争でもない)で、ドイツ軍から脱走した一等兵と人妻との不倫ものがたり。そこにてっきり戦死したものとばかりと思っていた夫が帰ってきて、ばったり若いツバメと鉢合わせ、てなことになるやら、いやはや、もう上を下への大騒ぎ(っていうほどのスラップ・スティックでもない)。
またまたそれはさておいて、この本はなかなか、面白い小説ではある。ウーヴェ・ティムなる作家からして、始めて知ることになる人だったが、本書はなかなか現地でも評判だったらしい。
2005年9月6日に日本でレビュー済み
ドイツの小説です。
カレーソーセージとは日本でいうたこ焼き。
アメリカでいうホットドック。
それぐらいドイツではメジャーな食べ物だそうで
基本は細かく切ったソーセージにケチャップとカレー粉のソースをかけるものだけど屋台によってレシピが違うとか。
これはそのカレーソーセージがいかにしてうまれたかを語るフィクション。
カレーソーセージ誕生の裏には、第二次世界大戦とひとつの恋愛があった・・・。というタイトルからはおよそ想像もつかない重厚な物語が展開していきます。
カレーソーセージを生み出した老女が語りを基本として描かれますが
文体は語り手が色々と変わり、ちょっととっつきづらいかな。
それでも容は大変おもしろく、お涙頂戴でもありません。戦争の中、ありのままを受け入れて逞しく生きる女性の姿勢が胸を打ちます。オススメです。
カレーソーセージとは日本でいうたこ焼き。
アメリカでいうホットドック。
それぐらいドイツではメジャーな食べ物だそうで
基本は細かく切ったソーセージにケチャップとカレー粉のソースをかけるものだけど屋台によってレシピが違うとか。
これはそのカレーソーセージがいかにしてうまれたかを語るフィクション。
カレーソーセージ誕生の裏には、第二次世界大戦とひとつの恋愛があった・・・。というタイトルからはおよそ想像もつかない重厚な物語が展開していきます。
カレーソーセージを生み出した老女が語りを基本として描かれますが
文体は語り手が色々と変わり、ちょっととっつきづらいかな。
それでも容は大変おもしろく、お涙頂戴でもありません。戦争の中、ありのままを受け入れて逞しく生きる女性の姿勢が胸を打ちます。オススメです。
2005年9月26日に日本でレビュー済み
本書を読んで、いったいカレーソーセージなる食べ物がどんな味なのか作って試さない人がいるでしょうか。それほど本書で描かれるこの魅惑的な食べ物は、あこがれと賞賛に満ちていますね。しかし出発点はカレーソーセージなんですが、そこからひろがる物語は終戦まぢかの二度目の大戦を舞台に、当時のドイツの一般市民の日常と戦争に囚われた人たちを描いて間然するところがありません。ミニマムな状況を描きながら、それをとりまく世界が自然と浮き上がって見えてくるところなどたいしたものだと思いました。
語り手が自由自在に入れかわる手法も、とても新鮮でした。映画ではとても効果的に使われているこの手法を、これだけ大胆に小説にとりいれて成功している例をぼくは知りません。普通なら混乱しそうなものですが、本書ではとても自然に馴染めてしまう。ウマイですね。
しかしこのレーナという女性、ヒロインとしてはいささか年くってるわけですが、とても魅力的だ。気風がいいというか、大胆というか、いいかえれば大雑把な性格ってことになるのかもしれませんが、戦争という混乱した時代で生き残っていこうと思えば、こういう性格でないとダメなのかもしれませんね。ひとつ本書を読んで驚いたのが、ドイツ市民の中にはナチス党員じゃない人もいたっていう事実です。主人公のレーナは、敗戦が決まってから新聞で報道されたアウシュビッツの惨状をみて、ショックを受けるんです。これがとても意外でした。そうなのか、そうだったのかと目からウロコの落ちる思いでした。
とにかく、本書は良かった。ささやかながらとてもいい映画を観たような幸せな気持ちになれました。
語り手が自由自在に入れかわる手法も、とても新鮮でした。映画ではとても効果的に使われているこの手法を、これだけ大胆に小説にとりいれて成功している例をぼくは知りません。普通なら混乱しそうなものですが、本書ではとても自然に馴染めてしまう。ウマイですね。
しかしこのレーナという女性、ヒロインとしてはいささか年くってるわけですが、とても魅力的だ。気風がいいというか、大胆というか、いいかえれば大雑把な性格ってことになるのかもしれませんが、戦争という混乱した時代で生き残っていこうと思えば、こういう性格でないとダメなのかもしれませんね。ひとつ本書を読んで驚いたのが、ドイツ市民の中にはナチス党員じゃない人もいたっていう事実です。主人公のレーナは、敗戦が決まってから新聞で報道されたアウシュビッツの惨状をみて、ショックを受けるんです。これがとても意外でした。そうなのか、そうだったのかと目からウロコの落ちる思いでした。
とにかく、本書は良かった。ささやかながらとてもいい映画を観たような幸せな気持ちになれました。
2005年9月22日に日本でレビュー済み
魅力的なレシピが登場する小説というのがある。藤原伊織の「テロリストのパラソル」に出てくるホットドッグ、ありゃ旨そうだった。小説の筋よりも、あのレシピに痺れた。そういえば、あのホットドッグの隠し味もカレー粉だったな。
この小説は、カレーソーセージ発明の由来を、孫ほどの語り手が、86歳の婆さんにヒアリングするという構成である。カレーソーセージの由来はほんの最後にしか出てこなくって、そこに至るまでの婆さんの“戦時下の恋ばな”が小説の要だ。そして、婆さんの恋、というか、若い愛人との出会い、ひと時の二人の暮らし、別れ、再会が、なんとも素敵なのである。文中の言葉を借りれば、“それは巷でさんざん語られている戦争物語とはまったくちがっている”。つまり、それは大時代的に語られる物語とは違っていて、ものすごく身近で切実でリアルで抱きしめたくなるような物語なのだ。
この素敵な昔話は、本文をじっくり味わってもらうしかないのだけど、カレーソーセージが小説の添え物かと言うと、それも違っている。婆さんの恋とカレーソーセージの由来は、やはり切っても切れない関係なのである。なぜ婆さんが馴染みのないカレーを材料に選んだかっていうと、それが大切な人の大事な想い出と結びついていたからだ。“味の記憶”“記憶の味”っていうのがこの小説の主題のひとつになっている。
まあ、ドイツに行ったら絶対、屋台でカレーソーセージを食べたくなることは請け合いである。こんな素敵な思い出と結びついた料理をひとつでも持っていたら、その人の人生は、もうそれだけでOK!だろうな。
この小説は、カレーソーセージ発明の由来を、孫ほどの語り手が、86歳の婆さんにヒアリングするという構成である。カレーソーセージの由来はほんの最後にしか出てこなくって、そこに至るまでの婆さんの“戦時下の恋ばな”が小説の要だ。そして、婆さんの恋、というか、若い愛人との出会い、ひと時の二人の暮らし、別れ、再会が、なんとも素敵なのである。文中の言葉を借りれば、“それは巷でさんざん語られている戦争物語とはまったくちがっている”。つまり、それは大時代的に語られる物語とは違っていて、ものすごく身近で切実でリアルで抱きしめたくなるような物語なのだ。
この素敵な昔話は、本文をじっくり味わってもらうしかないのだけど、カレーソーセージが小説の添え物かと言うと、それも違っている。婆さんの恋とカレーソーセージの由来は、やはり切っても切れない関係なのである。なぜ婆さんが馴染みのないカレーを材料に選んだかっていうと、それが大切な人の大事な想い出と結びついていたからだ。“味の記憶”“記憶の味”っていうのがこの小説の主題のひとつになっている。
まあ、ドイツに行ったら絶対、屋台でカレーソーセージを食べたくなることは請け合いである。こんな素敵な思い出と結びついた料理をひとつでも持っていたら、その人の人生は、もうそれだけでOK!だろうな。
2005年7月15日に日本でレビュー済み
主人公の1人『脱走兵』となるのはオスロの本部海図室勤務だった海軍一等兵曹。ナルヴィクシールドと騎兵でも工兵でも歩兵でもない海軍なのに優秀乗馬者章(これが物語上、重要な小道具になる)授章者。第三帝国末期に良くある話で休暇途中に原隊に戻れず、3日間の対戦車即席訓練の後パンツァーファーストを持たされて前線に送られることに。彼を匿った女主人公はドイツ降伏の後も二人の生活を続けることを望み、銃殺を恐れ外出できない彼にウソの戦況を知らせる。「デーニッツ総統のドイツ軍は米英軍と停戦し、共に赤軍を東へ押し返している」この虚構の生活の結末は?カレーソーセージ秘話誕生とどうつながるのか!?