文化大革命の狂気から改革開放後の金満経済まで中国40年の激動を描いた小説「兄弟」。まさに傑作だが、そこでは「当然あるべきはずの」天安門事件には一切触れされていなかった。これについて余華は「書いたとしても、どうせ削らなければ出版できなかった」とし、一方で「天安門事件は物語の大筋に直接関係ない」とも語っていた。
私は、この見解については何か釈然としないものを感じていた。
本作はその一つの解答である。
1989年5月「自分たちの血と肉で軍隊や戦車を阻止できる」と情熱をたぎらした1万人のデモに遭遇したことを、余華は「それは私の人生の中で、重要なときだった」と書く。「彼らの声は光よりも遠くまで伝わる。体の熱は声よりも遠くまで伝わる」と。
一方で、豊かになった現代中国については「極端に抑圧された時代が社会の激変にさらされると、必然として正反対の極端に放縦な時代がやってくる。ブランコと同じで、こちら側で高いところまで揺れれば、向こう側も必ず高いところまで行く」と辛辣だ。
天安門事件は中国の為政者にとってはもちろんタブーだが、彼らが力づくで抑えているわけでもない。デモを経験した人たちも記憶が薄れ、いまの中国の若い世代は事件を知らない、と余華はいう。
現代中国に対する作者の覚めた視線が伝わってくる好著。もちろんユーモアのセンスも抜群である。

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ほんとうの中国の話をしよう 単行本 – 2012/10/13
最も過激な中国人作家が、「人民」「領袖」「草の根」など、10のキーワードで綴った体験的中国論。文革から天安門事件を経て現在に至る中国社会の悲喜劇をユーモラスに描いたエッセイ。
中国国内で発禁処分! 最も過激な中国人作家・余華(『兄弟』『活きる』など)が、毛沢東の文化大革命、鄧小平の改革開放、天安門事件から、現在にいたる中国社会の変容をユーモアを交えてつづった体験的中国論。「人民」「領袖」「読書」「草の根」「魯迅」「格差」「革命」など、10のキーワードで読みひらくほんとうの中国の姿。「中国はわずか三十年で、政治至上の国から金銭第一の国に変身してしまった」
「[天安門事件直前の]1989年春の北京は、アナーキストの天国だった。警察が急に姿を消し、大学生と市民が自発的に警察の任務を果たした。あのような北京が再現することは、おそらくないだろう。共通した目標と共通した願望が、警察のいない都市の秩序を整然と維持していた。街に出れば、友好的な空気が流れていることを感じる。地下鉄もバスも切符を買わずに乗れた。人々はお互いに微笑み合い、よそよそしさがみじんもなかった。(……)当時の北京は、「四海の内はみな兄弟」とも言うべき都市になっていた」(本書「人民」より)
中国国内で発禁処分! 最も過激な中国人作家・余華(『兄弟』『活きる』など)が、毛沢東の文化大革命、鄧小平の改革開放、天安門事件から、現在にいたる中国社会の変容をユーモアを交えてつづった体験的中国論。「人民」「領袖」「読書」「草の根」「魯迅」「格差」「革命」など、10のキーワードで読みひらくほんとうの中国の姿。「中国はわずか三十年で、政治至上の国から金銭第一の国に変身してしまった」
「[天安門事件直前の]1989年春の北京は、アナーキストの天国だった。警察が急に姿を消し、大学生と市民が自発的に警察の任務を果たした。あのような北京が再現することは、おそらくないだろう。共通した目標と共通した願望が、警察のいない都市の秩序を整然と維持していた。街に出れば、友好的な空気が流れていることを感じる。地下鉄もバスも切符を買わずに乗れた。人々はお互いに微笑み合い、よそよそしさがみじんもなかった。(……)当時の北京は、「四海の内はみな兄弟」とも言うべき都市になっていた」(本書「人民」より)
- 本の長さ266ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2012/10/13
- ISBN-104309206077
- ISBN-13978-4309206073
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商品の説明
著者について
1960年中国杭州生まれ。現代中国を代表する作家の一人。幼少期に文革による社会の大変動を経験する。78年地元の診療所で歯科医として勤務しはじめる。88年から魯迅文学院などの創作研究班に学び、北京で天安門事件に遭遇する。中短篇集をいくつか発表したのち、91年の『雨に呼ぶ声』で長篇デビュー。92年発表の中篇『活きる』が映画化されて話題を呼ぶ。その後も、長篇『許三観売血記』(95)や短篇・随筆を継続的に発表し、2005年の長篇『兄弟』が大ベストセラーとなる。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2012/10/13)
- 発売日 : 2012/10/13
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 266ページ
- ISBN-10 : 4309206077
- ISBN-13 : 978-4309206073
- Amazon 売れ筋ランキング: - 667,872位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 4,761位外交・国際関係 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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2014年5月31日に日本でレビュー済み
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2017年11月23日に日本でレビュー済み
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文化革命の時代に中国で育った小説家の体験記。
政策の分析などはなく、革命後の中国の人々の生活がどのようであったのかが分かる本である。
ひたすら事例が羅列されていて、説得力がある。
一目で誇張だと分かる記述が多くあった点が気になったため、☆は4つとした。
政策の分析などはなく、革命後の中国の人々の生活がどのようであったのかが分かる本である。
ひたすら事例が羅列されていて、説得力がある。
一目で誇張だと分かる記述が多くあった点が気になったため、☆は4つとした。
2014年8月7日に日本でレビュー済み
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中国で起きている事件や不祥事、汚職の蔓延、社会的格差の拡大などの現象だけを追っていても、少しも中国の実態に迫れていないと感じていた。HNKが彼との独占インタビューに成功して、放映されたのを見て、彼の著作を読んでみたいと思った。それ以後、兄弟も購入したが、まだ読んでいない。、「ほんとうの中国の話をしよう」というタイトルの示唆しているように、中国の社会的現象のどうしてこういうことが起きるの?という疑問に対する、答らしい答えが書いてあるわけではないが、、全体的に日本人が持つ疑問を解く、有益なヒントを与えてくれている。彼は「中国共産党は無能で、打倒しないといけない」との主張はどこにもない。それにしても、中国では出版てきないという事実、この本の記述が的確に、中国共産党体制を痛烈に批判しいるという事実を際立たせています。自分自身の誤まりや悪い行いについても記述し、自分には間違いがなく他人だけが悪いという態度でもなく、その辺が国際的な評価を受けていることにも繋がるのではないでしょうか。全体を見ているだけでは中国という国がどいう国なのか、解らないという事でしょう。とても良い作家を中国社会が産んだという一つの事実です。
2016年1月23日に日本でレビュー済み
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良いですよ。本の背がちょっと斜めになりましたが、大したことではないですね。
2014年6月13日に日本でレビュー済み
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「人民」をはじめ10項目の用語を著者自身の体験に基づいて説明しており、大変に興味深く読ませていただきました。
2012年12月30日に日本でレビュー済み
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十項目だけに絞らず、もっと書いてください。
発禁にする理由はないですね。
題名は、原題の方が適切ではなかったかな?
発禁にする理由はないですね。
題名は、原題の方が適切ではなかったかな?
2014年2月23日に日本でレビュー済み
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まだ書籍は読んでいませんので、本の感想は言えませんが、
配送に関しては早かったです。体裁も良かったです。
配送に関しては早かったです。体裁も良かったです。
2014年6月1日に日本でレビュー済み
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シャンチャイ、フーヨウの記述内容が面白かった。他の民族(ウイグル族など)との関係をどのように考えているのか知りたい。