本書は題名の「十字軍の歴史」ではなく、原題「最初の十字軍」というのがふさわしい。もともと３巻ある原著の第１巻をさらに要約して読みやすくしたものである。したがって内容は１０９９年の十字軍のエルサレム建国をもって終わっている。まさに西欧からみた「十字軍の歴史」を代表するような書物であるが、それが現在までの日本人による「十字軍」理解の現状であることがわかる。
内容は地図、図版も多く文章は平明でわかりやすい。訳文も名訳である。十字軍の歴史に興味をもった人間にはうってつけの基本的な図書といえる。残念なのは、本書が第１回十字軍にとどまっており、続編がないこと。おおもととなった全３巻本が翻訳されていないことである。
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