原題はフランス語「Nétèr, dieux d'Egypte」。イラストも明瞭で良いが、説明文が良い。著者はフランスの国立科学技術センターの元教授でエジプト学を専門とするRuth Schumann Antelm氏。原文はフランス語である。
古代エジプト学を学びたい理由は各個人様々であろうと思うが、ヘブライ語聖書、いわゆる旧約聖書を原文で読む方は、各所で参考文献として引っ張り出したくなる一冊である。やはり旧約聖書時代の当時の工業技術や風習、食生活、軍事技術、世界観を知り、旧約聖書をヘブライ語原文で読んだり翻訳する際は、古代エジプトの考古学を参照する必要がある。エジプト~シナイ~パレスチナ~シリアは、かなり狭い一つの連続した文化圏であるためだ。カイロからイスラエルのテルアビブまではかつてはエゲットバスが毎日走っていたように、実際、エジプトのシナイ山からイスラエルのエルサレムまでの距離は、北海道の札幌から稚内までの距離であり、エジプトのカイロからイスラエルのエルサレムまでは、北海道の函館から釧路までの距離でしかない。しかも出エジプト記の時代は既に幹線道路は舗装されカイロからエルサレムまで、海の道、王の道、などなど数本あり、交通の便は良く、むしろ江戸時代の東海道中膝栗毛の弥次喜多道中の方が実は距離は長く道は悪い。つまりパレスチナとエジプトは当時の徒歩圏内の同じ文化圏ということだ。
つまりヘブライ語聖書を読解や翻訳する上での資料はエジプト考古学に依存するところが実は大きい。実際、ヘブライ語も古代エジプト語もアラム語も同じセム語であり、ヘブライ語の発音を、ヒエログリフで表記した遺跡もあるくらいである。本書のページを一つ一つ読み進めていくと、エジプトの神々として記録されているものの中にはバアル神などもある。つまりシリアやパレスチナの地方の神々も、当時のエジプト人の感覚では、エジプトの神々に包含されていることが分かる。バアル神は列王記上18章に異教の神として出てくる。また出エジプト記ではファラオがモーセにヘブライの神に祈るよう求める場面もあるのは覚えておられるだろうか。(編者の都合であろうが、ヘブライの神は本書には掲載さはれていない)
欧州のエジプト学の場合は歴史としての聖書との連続性があり、出エジプト記などのラムセス二世の時代の聖書の出来事は考古学的な事実としてとらえると同時に、エジプトとヘブライの文化接触論的なとらえ方ができる点が良い。例えば本書の場合、創世記に出てくるヨセフによるエジプト王のファラオの夢の夢解きと関連付けられている”7頭の雌牛”が当時エジプトでは何を指していたのかに関する説明も見られるなどである。ヘブライ語聖書翻訳のお供にお勧めなグローバルスタンダードなエジプト学。お勧めの1冊である。
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図説エジプトの神々事典 新装版 単行本 – 2007/3/1
- 本の長さ246ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2007/3/1
- ISBN-10430922461X
- ISBN-13978-4309224619
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2007/3/1)
- 発売日 : 2007/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 246ページ
- ISBN-10 : 430922461X
- ISBN-13 : 978-4309224619
- Amazon 売れ筋ランキング: - 630,898位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2016年7月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古代エジプトの神々や神話について興味がある方は、
間違いなく楽しめる一冊です。
内容は踏み込んだところまで書かれていますので、
初心者にはちょっととっつきにくいかもしれません。
中級者以上なら間違いなく楽しめます。
古代エジプト神話を読んでいる中で
「そういえばこの神様って、どんな神様だったっけ?」
と思ったときに引く辞書としての使い方がいいのではないかと思います。
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中級者以上なら間違いなく楽しめます。
古代エジプト神話を読んでいる中で
「そういえばこの神様って、どんな神様だったっけ?」
と思ったときに引く辞書としての使い方がいいのではないかと思います。
2017年8月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一種の図鑑だが説明、索引がお粗末な感じ、原著にあるのを
省略しているような、、、原著を知らないので何とも言えないが
説明あるとするしるしが付いているのにないとか。
マー図については文句ないかな。
省略しているような、、、原著を知らないので何とも言えないが
説明あるとするしるしが付いているのにないとか。
マー図については文句ないかな。
2012年10月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ある程度の知識ある人向けの書籍だと思うが、日本語で書いてある神々についての本では私が知るかぎり、これが一番丁寧。 地域さについてもきちんと触れられているし、諸説あるが語源などもしっかりある。 古代エジプト好きならこれは持っていてよい本だと思う。
2006年4月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本は、古代エジプトの神々に初めて触れる方にとっては、内容が多くて戸惑うかもしれません。
ただ、古代エジプトの神々について基本的なことを軽く頭に入れた上で、もっと詳しく知りたいという方にとっては、これほどぴったりな本は他にありません。
基本を踏まえたうえに掘り下げられた内容は、偏りもなく、一柱ずつを様々な方向から分析しています。神話でのエピソードや、神名の意味、役割と属性、色にいたるまで、まさに至れり尽くせりです。
またこの本をオススメしたいもうひとつの理由が、この挿絵。
古代エジプトの宗教画を、雰囲気を変えることなくアレンジし、生き生きと描き出した挿絵は他になく、余計な誤解を与えることなく、この世界へと誘う心強い助けとなることでしょう。
ちゃんと知りたい人向け。ただし、興味がある方にとっては、決して難しい内容ではありません。素晴らしい一冊です!
ただ、古代エジプトの神々について基本的なことを軽く頭に入れた上で、もっと詳しく知りたいという方にとっては、これほどぴったりな本は他にありません。
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古代エジプトの宗教画を、雰囲気を変えることなくアレンジし、生き生きと描き出した挿絵は他になく、余計な誤解を与えることなく、この世界へと誘う心強い助けとなることでしょう。
ちゃんと知りたい人向け。ただし、興味がある方にとっては、決して難しい内容ではありません。素晴らしい一冊です!
2008年4月6日に日本でレビュー済み
古代エジプトの神様を知ろうと思ったら、間違いなく
この本が良いでしょう。
載っているのは主要な神々。壁画などから起こされた
イラストは非常に丁寧で、文章は詳しくも簡潔に
まとめられています。考察も深く、古代エジプト神話に
特徴的な、神々の多様性にも多く触れています。
他にもちょっとした用語集などがあり、
この本を読めば本当に古代エジプト神話に詳しく
なるでしょう。
ただし神話の予備知識は必要です。
これから勉強したい方は、神話の本と同時に
読み進めてみるのはいかかでしょうか。
この本が良いでしょう。
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イラストは非常に丁寧で、文章は詳しくも簡潔に
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特徴的な、神々の多様性にも多く触れています。
他にもちょっとした用語集などがあり、
この本を読めば本当に古代エジプト神話に詳しく
なるでしょう。
ただし神話の予備知識は必要です。
これから勉強したい方は、神話の本と同時に
読み進めてみるのはいかかでしょうか。
2012年1月23日に日本でレビュー済み
見やすい本だが、深みが足りない。
広く浅くの世界です。
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