新自由主義の行き詰まりとAIやP2Pといった情報技術の発展が絡み合い、動乱や変革の予兆が高まっている。作品社あたりから翻訳出版される書籍も勇ましい論調のものが多い。しかしそれらの書籍を読んでも、誰がどのようにして社会を変えるのか、という肝心のところははっきりせず、「マルチチュード」や「ネットワーク化された個人」といった、融通無碍で捉えどころのない言葉が浮き上がる。
「ハッカー宣言」は、変革の主体の正体を明確にする。それは、スマホを持つことで無自覚にハッカーとなった我々のことだ。ハッカーは、コンピュタープログラムのソースを自由に改変し生産様式をデザインする。コンピュターによるネットワークそのものが社会インフラとなった現在、スマホを持つ我々は、時と場所を得らばず、ネットを通じて社会規範を直接自由に変える可能性を手に入れた。ハッキングが与える影響力が広まり大衆化されたのだ。そして、それは必然的に、情報を独占的に管理しようとする階級との衝突を招くため、ハッカーは一つの階級として結晶する。
「ハッカーは単に所有しているのではないし、情報の所有から利益を得ているわけでもないのだ。彼らは新しい情報を生産するのであり、そしてまた生産者として商品形態の絶対支配から自由に情報を入手する必要があるのだ。もしハッキングという行動を定義するものが自由な生産性―自然の仮想的潜在性の表現―なのだとしたら、ハッキングが私的所有と商品化形態に従属することはひとつの足枷であろう」(P105)
いまだネットの言説は、ナショナリズムや差別に覆い尽くされている。まるで電子空間の中に、国民国家を作ろうとするかのようだ。人類の意識はまだ国境の枠に規定されている。しかしインターネットという社会的神経は、本質的に膜を突き破ってどもまでも伸びようとする。大多数の労働者がハッカー階級としての階級意識に目覚め、それがネットの運動と重なった時、変革の勢いは爆発的に拡散するだろう。
2004年初版だがやや登場が早すぎた本。2017年の今ならマッケンジーのビジョン全体が理解できる。
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ハッカー宣言 単行本 – 2005/7/21
マッケンジー・ワーク
(著),
金田 智之
(翻訳)
- 本の長さ244ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2005/7/21
- ISBN-104309243487
- ISBN-13978-4309243481
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2005/7/21)
- 発売日 : 2005/7/21
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 244ページ
- ISBN-10 : 4309243487
- ISBN-13 : 978-4309243481
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