題には「おいしさの〜」とあり表紙も色鮮やかな野菜や果物のデザインになっていますが、
古今東西の素敵なディナーを紹介し明日の献立のヒントを与えてくれる本ではありません。
痛々しい実験や(筆者狙い通りの)嫌悪感を引き起こすような描写も少なくない科学啓蒙書です。
味覚探求の旅は神経学、分子化学、心理学、文化人類学と多方面に渡ります。
やや論理の飛躍のように見えたり著者独自の意見が一般化されてるように思えたりする部分もありますが、
紹介される研究や実験は興味深いものばかり。
ラットに唐辛子の刺激を好ませることは出来るか
レシピも残されていない9000年前の酒を再現できるか
「質素」で苦味のあるジャガイモを材料にしたポテトチップスはなぜ美味しいのか
新品のクシで混ぜたジュースは大人は嫌がるが子供ではどうか
生命活動の基本でありながらいまだ解明されていないことの多い味覚の奥深さが知れた。
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おいしさの人類史:人類初のひと噛みから「うまみ革命」まで 単行本 – 2016/2/26
人類の祖先による最初のひと噛みから、遺伝学や脳科学に基づく最新研究、そして現在進行中の「グルメ」革命まで。謎につつまれた「味覚」に関するあらゆる最新情報を紹介する5億年の歴史。
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2016/2/26
- ISBN-104309253458
- ISBN-13978-4309253459
商品の説明
著者について
ジャーナリスト。ワシントン・ポスト、ガーディアン、スミソニアン、ワイアードなどに寄稿。地球規模の魚類供給危機の分析でピューリッツァー賞、中国から侵入したシロアリの記事でアメリカ科学振興協会賞、アメリカ生物科学研究所賞。
翻訳者。訳書に『依存症ビジネス』『ハチはなぜ大量死したのか』など。
翻訳者。訳書に『依存症ビジネス』『ハチはなぜ大量死したのか』など。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2016/2/26)
- 発売日 : 2016/2/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 304ページ
- ISBN-10 : 4309253458
- ISBN-13 : 978-4309253459
- Amazon 売れ筋ランキング: - 758,579位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,031位世界史一般の本
- - 72,091位科学・テクノロジー (本)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2016年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
こんにちは、古舘健です。
味覚に関するさまざまな研究や歴史が多岐にわたり、紹介されているいます。
本書によると、「塩の過剰摂取が心血管疾患のリスクを押し上げる」と述べているが、それは誤りであることがわかっています。
P218
「脂質、糖、そしてデンプンと同様に、塩にも過剰摂取の問題が出てきた。先進国に住む人々は、未開拓地に住む部族に比べ、実に10倍もの塩を摂取しており、心血管疾患のリスクを押し上げている。にもかかわらず、現代の食べ物は塩味が強すぎるようには感じられない―わたしたちはそもそも、そうしたことに気づかないように条件付けされているのだ。かつて塩の過剰摂取は生き延びるための策だった。・・・」
以下の研究によると、ナトリウム摂取を減らしても心血管疾患を減少させる直接的な証拠はなかったということがわかっています。
IOM“Sodium Intake in Populations: Assessment of Evidence (2013)"
塩に関してさまざまな議論があるが、今わかっていることは、確かに高塩分摂取が高血圧をもたらし、高血圧は健康を害します。
しかし、塩と健康に関して直接的な因果関係は明確ではありません。極端な減塩はむしろ健康を害する可能性すらあるということです。
そのため、明確な指針が出るまで、健康を害するような無理な減塩をするのではなく、今までの食事より少しの減塩と野菜や果物からのカリウムの摂取をオススメします。
他に個人的に興味があったのは苦味の遺伝子です。
イエール大学の味覚科学者であるリンダ・バルトシュックの研究で、苦味に対する感じ方は舌の味を感じる茸状乳頭の数によって下記の3つに分類されるそうです。
・苦味をほとんど感じないノンテイスター
・ノンテイスターに比べ舌に多くの茸状乳頭をもち、苦味感受性の高いテイスター
・感度がテイスターの1万倍強いスーパーテイスター
訳者あとがきにも書かれていたが、もし、子どもがスーパーテイスターであれば、苦味のある食べ物を強要しなくてもいいのかもしれませんね。
どうでもいい話ですが、私はセロリがあまり好きではないです。
以下はメモのために抜粋します
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
P22
「好きも嫌いもおそらく同じ時代の名残だと思われる。人類が小集団を作って移住しながら暮らしていたとき、子どもたちは・・・・常に毒にあたる危険につきまとわれていた。しかし、今日では、多様性に乏しい摂食習慣は長期的な健康に有害であり、・・・・」
P29
「かつては単なる検知・反応のメカニズムにすぎなかった感覚は、複雑な行動を導くためにいっそう協力になった。・・・視覚よりも、聴覚よりも、そして性的衝動よりも、味覚は、われわれ人類の核を成す構成要素として、もっとも重要な感覚なのだ。」
P36
「哺乳類の胎児の大脳新皮質において最初に発達する領域は、口と舌を司る部分だ。なぜなら、生き延びるためには乳を飲むことが不可欠だからである。その領域が最初に処理する最初期の
知覚は、温かさ、におい、甘い味、そして母乳に対する深い満足感だ。」
P49
「肉はわたしたちヒト属の主食になった。・・・もう1つの重要な主食であるデンプン質の植物の根も、道具を使うことによって、薄切りにしたり、潰したりできるようになった。言いかえれば、食物は口に入る前に、すでに部分的に「消化」されるようになったのである。
P51
「リオデジャネイロ連邦大学のスザーナ・エルクラーノ・オウゼルとカリーナ・フォンセッカ・アゼヴェードは、・・・ホモ・エレクトスが生存のためのエネルギーを生の食物から摂るためには、八時間噛みつづけることが必要だったと二人は推測した。これには、食物を手に入れるための時間は含まれていない」
P109
「においと異なり、味は、感情的なものというよりも本能に近い。味覚が生み出す原始的な「欲しい」という思いと嫌悪感は、生存のための基本的反応だ。味覚受容体からの信号は、大脳構造の中でもっとも古い、本能や衝動が生み出される場所を通り抜ける。」
P121-122
「しかし人間は、自然の限界を克服して、豊富な糖を作り出す手段を発明してしまった。・・・・
人類は、もっとずっと少量の糖分を摂取できるように進化してきた。つまりわたしたちの身体は、これほどの糖分に耐えられるようにはできてはいないのだ。・・・」
P145
「砂糖の過剰摂取は、「欲しい気持ち」「好きな気持ち」「学習」の正常なリズムを混乱させる。」
P161(ロンドン大学衛星熱帯医学大学院の生物学者、ヴァレリー・カーティスの研究)
「・・・病気のリスクが高まると、脳と身体は警戒を強めるのだ。・・・、もっとも歯ブラシを共有したくないのはだれか、と尋ねた。その結果、結びつきが弱い相手であればあるほど、歯ブラシを共有したくないことがわかった。見知らぬ人が免疫系に未知の病気をもたらす危険性は、友人より高いからだ。
病気の原因となりかねない脅威を排除しようとする。こうした一連の反応は「行動免疫システム」と名付けられている。」
P167
「人間が食物を口にするためには、動物と植物は死ななければならない。」
P200
「トウガラシはこのシステムをだます。トウガラシを食べはじめると、カプサイシンの分子が熱刺激受容体に殺到する。・・・口内の熱を感じる閾値が下がり、たとえば摂氏三七度が六五度のように感じられる。これこそがトウガラシの刺激が熱く感じられる理由だ。」
P206
「快楽は、常に嫌悪感のすぐそばになる。それは、わたしたち人間の解剖学的特徴であり、行動学的特徴でもある。脳ではこの二つの感情が緊密に重なり合っている。両方とも脳幹にある神経に依存しており、それが太鼓の昔、反射であったことを示唆している。・・・
・・・両方とも差し迫った生存の危機から身を守り、将来の学習を強く導く行為のきっかけになる。痛みは、人々がやっていることを止めさせ、身を引き寄せ、回避させる。快楽は、やっていることを続けさせ、・・・」
さいごまで読んでくださり、ありがとうございます!
味覚に関するさまざまな研究や歴史が多岐にわたり、紹介されているいます。
本書によると、「塩の過剰摂取が心血管疾患のリスクを押し上げる」と述べているが、それは誤りであることがわかっています。
P218
「脂質、糖、そしてデンプンと同様に、塩にも過剰摂取の問題が出てきた。先進国に住む人々は、未開拓地に住む部族に比べ、実に10倍もの塩を摂取しており、心血管疾患のリスクを押し上げている。にもかかわらず、現代の食べ物は塩味が強すぎるようには感じられない―わたしたちはそもそも、そうしたことに気づかないように条件付けされているのだ。かつて塩の過剰摂取は生き延びるための策だった。・・・」
以下の研究によると、ナトリウム摂取を減らしても心血管疾患を減少させる直接的な証拠はなかったということがわかっています。
IOM“Sodium Intake in Populations: Assessment of Evidence (2013)"
塩に関してさまざまな議論があるが、今わかっていることは、確かに高塩分摂取が高血圧をもたらし、高血圧は健康を害します。
しかし、塩と健康に関して直接的な因果関係は明確ではありません。極端な減塩はむしろ健康を害する可能性すらあるということです。
そのため、明確な指針が出るまで、健康を害するような無理な減塩をするのではなく、今までの食事より少しの減塩と野菜や果物からのカリウムの摂取をオススメします。
他に個人的に興味があったのは苦味の遺伝子です。
イエール大学の味覚科学者であるリンダ・バルトシュックの研究で、苦味に対する感じ方は舌の味を感じる茸状乳頭の数によって下記の3つに分類されるそうです。
・苦味をほとんど感じないノンテイスター
・ノンテイスターに比べ舌に多くの茸状乳頭をもち、苦味感受性の高いテイスター
・感度がテイスターの1万倍強いスーパーテイスター
訳者あとがきにも書かれていたが、もし、子どもがスーパーテイスターであれば、苦味のある食べ物を強要しなくてもいいのかもしれませんね。
どうでもいい話ですが、私はセロリがあまり好きではないです。
以下はメモのために抜粋します
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
P22
「好きも嫌いもおそらく同じ時代の名残だと思われる。人類が小集団を作って移住しながら暮らしていたとき、子どもたちは・・・・常に毒にあたる危険につきまとわれていた。しかし、今日では、多様性に乏しい摂食習慣は長期的な健康に有害であり、・・・・」
P29
「かつては単なる検知・反応のメカニズムにすぎなかった感覚は、複雑な行動を導くためにいっそう協力になった。・・・視覚よりも、聴覚よりも、そして性的衝動よりも、味覚は、われわれ人類の核を成す構成要素として、もっとも重要な感覚なのだ。」
P36
「哺乳類の胎児の大脳新皮質において最初に発達する領域は、口と舌を司る部分だ。なぜなら、生き延びるためには乳を飲むことが不可欠だからである。その領域が最初に処理する最初期の
知覚は、温かさ、におい、甘い味、そして母乳に対する深い満足感だ。」
P49
「肉はわたしたちヒト属の主食になった。・・・もう1つの重要な主食であるデンプン質の植物の根も、道具を使うことによって、薄切りにしたり、潰したりできるようになった。言いかえれば、食物は口に入る前に、すでに部分的に「消化」されるようになったのである。
P51
「リオデジャネイロ連邦大学のスザーナ・エルクラーノ・オウゼルとカリーナ・フォンセッカ・アゼヴェードは、・・・ホモ・エレクトスが生存のためのエネルギーを生の食物から摂るためには、八時間噛みつづけることが必要だったと二人は推測した。これには、食物を手に入れるための時間は含まれていない」
P109
「においと異なり、味は、感情的なものというよりも本能に近い。味覚が生み出す原始的な「欲しい」という思いと嫌悪感は、生存のための基本的反応だ。味覚受容体からの信号は、大脳構造の中でもっとも古い、本能や衝動が生み出される場所を通り抜ける。」
P121-122
「しかし人間は、自然の限界を克服して、豊富な糖を作り出す手段を発明してしまった。・・・・
人類は、もっとずっと少量の糖分を摂取できるように進化してきた。つまりわたしたちの身体は、これほどの糖分に耐えられるようにはできてはいないのだ。・・・」
P145
「砂糖の過剰摂取は、「欲しい気持ち」「好きな気持ち」「学習」の正常なリズムを混乱させる。」
P161(ロンドン大学衛星熱帯医学大学院の生物学者、ヴァレリー・カーティスの研究)
「・・・病気のリスクが高まると、脳と身体は警戒を強めるのだ。・・・、もっとも歯ブラシを共有したくないのはだれか、と尋ねた。その結果、結びつきが弱い相手であればあるほど、歯ブラシを共有したくないことがわかった。見知らぬ人が免疫系に未知の病気をもたらす危険性は、友人より高いからだ。
病気の原因となりかねない脅威を排除しようとする。こうした一連の反応は「行動免疫システム」と名付けられている。」
P167
「人間が食物を口にするためには、動物と植物は死ななければならない。」
P200
「トウガラシはこのシステムをだます。トウガラシを食べはじめると、カプサイシンの分子が熱刺激受容体に殺到する。・・・口内の熱を感じる閾値が下がり、たとえば摂氏三七度が六五度のように感じられる。これこそがトウガラシの刺激が熱く感じられる理由だ。」
P206
「快楽は、常に嫌悪感のすぐそばになる。それは、わたしたち人間の解剖学的特徴であり、行動学的特徴でもある。脳ではこの二つの感情が緊密に重なり合っている。両方とも脳幹にある神経に依存しており、それが太鼓の昔、反射であったことを示唆している。・・・
・・・両方とも差し迫った生存の危機から身を守り、将来の学習を強く導く行為のきっかけになる。痛みは、人々がやっていることを止めさせ、身を引き寄せ、回避させる。快楽は、やっていることを続けさせ、・・・」
さいごまで読んでくださり、ありがとうございます!
2016年5月21日に日本でレビュー済み
訳者あとがきにあるとおり「味覚にまつわるよろず事典」です。
香り、食感を含めた「味覚」感じ方の解明から「万能栄養食+VRによる味覚の再現」というちょっと恐ろしい未来像まで
生理学、心理学、地理、植物学、経済学などありとあらゆる関連学問を包括した味覚の歴史の振り返りとありうる将来像を提示しています。
紀元後の人類の文化的変容は生物学的進化を超えるスピードのため発生した(する)諸問題も提議されています。
香り、食感を含めた「味覚」感じ方の解明から「万能栄養食+VRによる味覚の再現」というちょっと恐ろしい未来像まで
生理学、心理学、地理、植物学、経済学などありとあらゆる関連学問を包括した味覚の歴史の振り返りとありうる将来像を提示しています。
紀元後の人類の文化的変容は生物学的進化を超えるスピードのため発生した(する)諸問題も提議されています。