この絵本を読んで、いわゆる「心温まる絵本」というような類のものとは違う安堵を覚えた。
自分のような人間はこの世に一人ではない、この世の全てに否定された自分の存在、信念は間違っていなかったと。
人は社会という大きな生物の代謝に翻弄される、ごく小さな細胞のような存在だ。
良い流れに生まれれば良い流れに乗って、悪い流れに生まれれば悪い流れに乗って生きていく。
小さな個人の裁量と、あまりにも強大な社会の流れがぶつかり合い、個人も世界も流れていく。
だからこそ、悪い流れに生まれたのであれば、この世の全てを敵に回してでも自分の流れを強く持たなければいけない。
そのまま悪い流れにのるのは容易い。どんなにあがいたって、流れに飲まれることもある、むしろそれが自然だ。
それは、正しくあろうとすればよい、努力すればよいというような、狭量な人間の倫理感や感情論とは無関係だ。
自分はどう生きたいのか。
正しくあるためには自分を律し、常軌を逸する必要がある。
なぜならば、悪い流れに生まれた者が正しくあることは、社会において不自然なことだからだ。
（社会にはその身に抱える闇を個人に蓄積し、諸共排除する清浄作用があり、それに逆らうことになる。）
だからこそ、私は正しくあるために、社会の奇形として自分のあるべき姿を常に考えて生きている。
それは間違いではないのだと、この本には描いてあった。
このような代物が公に出回っているのだから、世の中捨てたものではない。
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