BDはやや難解で、コマ割りやページの流れが日本の漫画と異なるため読むのに気骨がいるという印象を持っています。
ブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンの『闇の国々』シリーズなどは、巨大な壁のような作品で、
数ページ読んでは思案し、休み、また数ページ読む、と大変骨の折れる読書をしています。
対してこの作品はというと、驚くほど読みやすい。
コマ割りやキャラクターのアップ、ロングの反復の方法なども日本の漫画と差異は少ないし、
左から右に流れるようにページが進むため、あっという間に一冊を読みきってしまいました。
他のBD作品ではさあ読むぞ、と気合を入れて読みにかかるのに、
この作品は届いてパラパラとページをめくっているうちに読みきってしまった。
"読みやすいBD"の登場に感心してしまいました。
肝心のストーリーはというと、冒頭の衝撃的な出だしの後で、
妖精たち?の破滅的な暮らしぶりが語られてゆきます。
登場する子供たちが妖精だと具体的に言及はされていないので彼らが何者であるかは読者の自由な発想に任されると思います。
ただ私はジョゼフ・ノエル・ペイトンの『真夏の夜の夢』の絵画にあるような、妖精たちによく似ているなと感じました。
彼らは無邪気ですが、恐ろしくその命は軽くて、無邪気ゆえに利己的で残虐です。
森の中で食べ物を得ることに必死で、そのために簡単に命を落としたり、他者を陥れたりします。
また森の中の様々な障害にあっさり死んでいったりもします。
西洋では妖精たちは邪悪な災いをもたらすものだと古くは伝承されていたそうですが、
(日本人には妖精=かわいいもの、というイメージがあるのでギャップが面白いですね)
彼らのかわいいけれど不気味で正体の分からなさ、行動の意味の分からなさは空恐ろしいものがあり、
まさに西洋古来の妖精的なイメージの現れだと感じました。
しかし一般的な妖精と異なるのは、彼らは人間に危害を加えるわけではないということ。
森の中で淘汰されながら、小さなものがうじゃうじゃいる。
では彼らは一体何なのか?
よく考えると怖い。気持ちが悪い。
そんな読者の自由な読後感を与えてくれる作品です。
絵柄はかわいいながら大変グロテスクでかなり強烈。でもとても面白い。
私のBDコレクションも結構な数になってきましたが、その中でもトップレベルの作品に間違いないです。
今年一番の作品に出会えました。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
かわいい闇 大型本 – 2014/6/23
かわいすぎるスタイルとまるっきり矛盾するような残酷な物語。フランスBD界期待のデュオによる問題作、初紹介!
- 本の長さ102ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2014/6/23
- ISBN-104309274900
- ISBN-13978-4309274904
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1978年ブレスト生まれ。オリヴィエ・ド・セール美術学校で学び、在学中にセバスティアン・コセに出会う。マリーはその後、エスティエンヌ美術学校で医療イラストを学んだ。
1972年モン・ド・マルサン生まれ。幼少時からバンド・デシネに親しむ。ナントのビジネス・スクールを卒業後、本格的にバンド・デシネの原作者を志す。代表作にドニ・ボダール画『Green Manor』など。
マリー・ポムピュイとセバスティアン・コセ が2000年に結成した作画ユニット名。ケラスコエットというユニット名はマリーが幼少時代を過ごしたブルターニュの地名に由来する。
1972年モン・ド・マルサン生まれ。幼少時からバンド・デシネに親しむ。ナントのビジネス・スクールを卒業後、本格的にバンド・デシネの原作者を志す。代表作にドニ・ボダール画『Green Manor』など。
マリー・ポムピュイとセバスティアン・コセ が2000年に結成した作画ユニット名。ケラスコエットというユニット名はマリーが幼少時代を過ごしたブルターニュの地名に由来する。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2014/6/23)
- 発売日 : 2014/6/23
- 言語 : 日本語
- 大型本 : 102ページ
- ISBN-10 : 4309274900
- ISBN-13 : 978-4309274904
- Amazon 売れ筋ランキング: - 390,644位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 213,060位コミック
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中4.8つ
5つのうち4.8つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
32グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2014年10月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2018年8月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ドキドキしました。ありがとう。
2023年5月2日に日本でレビュー済み
この和訳版が出る前、アメコミでない海外コミックを買い集めることにハマった時期がありました。その中でもダントツで面白く心打たれたのがこの作品です。
今でもこの先日本の漫画ではこの美しく可愛らしい絵とグロテスクで冷酷なシナリオに巡り合うことはないと確信してます。
和訳版が出て数年してから日本の作家でもこの作家の絵柄を真似したり、もしくは本作の世界観に影響受けて描いたんだろうなという人がチラホラ見受けられます。
この和訳版が出版された当時、作者のケラスコエット氏が来日しており、着彩付きでイラストを描いてくれるサイン会が行なわれておりました。本書は家宝です。
今でもこの先日本の漫画ではこの美しく可愛らしい絵とグロテスクで冷酷なシナリオに巡り合うことはないと確信してます。
和訳版が出て数年してから日本の作家でもこの作家の絵柄を真似したり、もしくは本作の世界観に影響受けて描いたんだろうなという人がチラホラ見受けられます。
この和訳版が出版された当時、作者のケラスコエット氏が来日しており、着彩付きでイラストを描いてくれるサイン会が行なわれておりました。本書は家宝です。
2016年6月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
バンドデシネ・・・と言うらしい。コマワリの漫画みたいに展開していく。
2014年9月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ドイツ語版も持っていますが、邦訳版が出たということで購入しました。原語で読めれば一番いいのでしょうが、まっすぐに理解できる言葉で読めることで、物語をより深く噛み締めることができました。
あたたかな色づかい、絵本のような優しい絵柄とは裏腹に、語られる物語の底に流れる冷たく哀しい空気と死のかおり。勿論最後が単純なハッピーエンドになるはずはありません。ぞっとするような静かな狂気、どこか物悲しいラスト。それでもあの最後の数ページ、巨人と少女の間に漂う空気は、奇妙に温かくて美しいように思います。
好き嫌いはあれど、誰にとっても衝撃的な作品になることは間違いないでしょう。
あたたかな色づかい、絵本のような優しい絵柄とは裏腹に、語られる物語の底に流れる冷たく哀しい空気と死のかおり。勿論最後が単純なハッピーエンドになるはずはありません。ぞっとするような静かな狂気、どこか物悲しいラスト。それでもあの最後の数ページ、巨人と少女の間に漂う空気は、奇妙に温かくて美しいように思います。
好き嫌いはあれど、誰にとっても衝撃的な作品になることは間違いないでしょう。
2014年6月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
かわいいキャラクターのやり取りがドラマの殆どを占めていますが、あどけなさ故の残酷さが凄まじい程です。登場人物や物語の背景が説明されていないため、様々に深読み出来ます。殆どの読者が、8ページで最初の衝撃を受けるでしょう。物語の背景にあるものが、じわりと恐怖感を煽ります。フランス本国でもこうした作品はこれまで無かったそうですが、「死」の描き方において、日本でも有り得なかった作品です。90ページ程の作品ですので一気に読めますし、台詞だけを追うと ほっこりしたラストに感じる反面、読後感は まるで気持ち悪いホラー映画を観た後の様な感覚を受けます。ある意味では、童話版ネクロマンティックといった印象も受ける書籍です。子供にはお勧めできません。でも、高く評価すべき作品だと思います。
2020年11月19日に日本でレビュー済み
美しくてやさしい水彩画のタッチ、
かわいらしい小人(?)とリアルな背景とのギャップに惹かれて購入しました。
絵の完成度はすばらしいもので、森の季節が移り変わっていく描写とその中で生活している小人の姿がかわいらしいです。
しかし、ストーリーが残酷なのです...
冒頭、女の子の死体からわらわらとかわいらしいそれぞれどこかで見たような姿をした小人たちが出てきます。
そして、小人たちはその周りで生活をしだします...
読後、この作品をどう受け止めたらいいかわからず色々考えた結果、
このストーリーはまだ言葉の覚えたてのような子どもが稀に話してくれるような「まじめに聞けば恐ろしい戯言」をそのまま超作画でマンガにしたらこんな感じになるのかなぁーっと思いついてからは落ち着いて読めるようになりました。
ストーリー的に人におすすめし辛い本なので星4つですが、作品として見応えは星5つです。
文字で説明しない部分に感情を揺さ振られる珍しいマンガだと思いました。
かわいらしい小人(?)とリアルな背景とのギャップに惹かれて購入しました。
絵の完成度はすばらしいもので、森の季節が移り変わっていく描写とその中で生活している小人の姿がかわいらしいです。
しかし、ストーリーが残酷なのです...
冒頭、女の子の死体からわらわらとかわいらしいそれぞれどこかで見たような姿をした小人たちが出てきます。
そして、小人たちはその周りで生活をしだします...
読後、この作品をどう受け止めたらいいかわからず色々考えた結果、
このストーリーはまだ言葉の覚えたてのような子どもが稀に話してくれるような「まじめに聞けば恐ろしい戯言」をそのまま超作画でマンガにしたらこんな感じになるのかなぁーっと思いついてからは落ち着いて読めるようになりました。
ストーリー的に人におすすめし辛い本なので星4つですが、作品として見応えは星5つです。
文字で説明しない部分に感情を揺さ振られる珍しいマンガだと思いました。
2014年8月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
余計な予備知識なしで読んでほしい。
めちゃくちゃ面白くて、続けて2回読んだ。
めちゃくちゃ面白くて、続けて2回読んだ。