『幻想の肖像』(澁澤龍彦著、河出文庫)は、西欧の絵画に描かれた女性像についてのエッセイ集です。一つだけ残念なのは、口絵以外の絵画がカラーではないことです。
とりわけ興味深いのは、グイド・レーニの「スザンナと老人たち」、アントワヌ・ヴィールツの「美しきロジーヌ」、ロメロ・デ・トレスの「火の番をする女」の3作品です。
●スザンナと老人たち――
「二人の好色の老人が、水浴中の若い女性を物陰からこっそり窺っているという、いわば『西洋出歯亀』とも名づけられるべき怪しからぬ主題の絵が、とくに16世紀のイタリア絵画におびただしく現われている。・・・17世紀イタリア・バロックの巨匠グイド・レーニの『スザンナ』も、同じ主題のもので、官能美にあふれた、異色ある作といえよう。・・・(この作品では)老人たちは物陰にかくれているどころか、厚かましくもスザンナの近くへ寄ってきて、彼女の裸身を覆う布に手をかけ、これを引っぱってさえいる。もう一歩で、猥雑な表現になりかねないような絵である。・・・このスザンナの、暗い背景から浮き出た、金色に光り輝く蜜壺のような若々しい肉体にも、同じ作者の聖セバスティアンのそれとひとしく、三島由紀夫の表現を借りれば、『ただ青春、ただ光、ただ美、ただ逸楽があるだけ』であろう」。ここまで言われては、カラーの「スザンナと老人たち」を見ずに済ますわけにはいきませんね!
●美しきロジーヌ――
「この作品は別名『二人の少女』というように、向い合った裸体の少女と骸骨とは、要するに同じ人間の別のすがたにすぎないのである。両者は互いにしげしげと見つめ合っている。この女らしく成熟した、豊満な肉体美を誇る少女もやがて、死すべき時がくれば、彼女の前に立っている骸骨のように、肉も血も失せた、乾からびた醜い形骸と化してしまうだろう。そういう寓意を、この絵は表わしているのでもあるかのようである」。澁澤龍彦は否定的だが、メメント・モリ(死を思え)の思想を踏まえているのでしょう。
●火の番をする女――
「左の乳房を半ば露出し、スカートを膝の上までまくり上げ、踵の高い靴をこれ見よがしに突き出し、あたかも挑戦するような鋭い目つきで、こちらをじっと睨んでいる高慢ちきな娘は、まるでルイス・ブニュエルの映画にでも出てきそうな感じではないか。たしかに、これこそスペイン土着のエロティシズムというものであろう」。こういう目つきの女性に出会ったら、どぎまぎしてしまうことでしょう。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
¥616¥616 税込
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
¥616¥616 税込
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
¥21¥21 税込
配送料 ¥256 6月15日-16日にお届け
発送元: 古本倶楽部【午前9時までのご注文は当日発送】【通常24時間以内発送】 販売者: 古本倶楽部【午前9時までのご注文は当日発送】【通常24時間以内発送】
¥21¥21 税込
配送料 ¥256 6月15日-16日にお届け
発送元: 古本倶楽部【午前9時までのご注文は当日発送】【通常24時間以内発送】
販売者: 古本倶楽部【午前9時までのご注文は当日発送】【通常24時間以内発送】
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
幻想の肖像 (河出文庫 121M) ペーパーバック – 2010/8/3
澁澤 龍彦
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥616","priceAmount":616.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"616","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"VIEdcV7wssHz7%2BsOV2kX7QLS%2Ba5UHqy370zKDZnYklWDpQsNGHlj%2FD9PYwnJ0T9T6RKzxwzlcmyFc299Umb739PMvIauFRlnQEnwHQhQ5ZB5xzOOoiU%2BKVfCBPWc%2B3lA","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥21","priceAmount":21.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"21","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"VIEdcV7wssHz7%2BsOV2kX7QLS%2Ba5UHqy3bZ%2BzHqhpwTwpme9mJOMaRufSLE%2FqAzi892hk50w0EqUyrerdUbzoe%2BRb8Clm5nOUS7FAOuaxWdlGqNn2By42e76CrIyKt4Q4vLIW9absTVcO2W8yrFolYqQ4MAnRW20Ce%2BrYtFMcQUsS131wZOmwi35Pd581xRZY","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
幻想芸術を論じて当代一流のエッセイストであった著者が、ルネサンスからシュルレアリスムに至る名画三十六篇を選び出し、その肖像にこめられた女性の美と魔性を語り尽すロマネスクな美術エッセイ。
・総ページ数:200
・ISBNコード:9784309401690
・総ページ数:200
・ISBNコード:9784309401690
- 本の長さ191ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2010/8/3
- 寸法10.7 x 1.2 x 15 cm
- ISBN-104309401694
- ISBN-13978-4309401690
よく一緒に購入されている商品
対象商品: 幻想の肖像 (河出文庫 121M)
¥616¥616
最短で6月14日 金曜日のお届け予定です
残り3点(入荷予定あり)
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1928~87年。東京生まれ。東大仏文科卒。マルキ・ド・サドの著作を紹介する一方、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを数多く発表。晩年は『高丘親王航海記』など小説に独自の世界を展開した。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2010/8/3)
- 発売日 : 2010/8/3
- 言語 : 日本語
- ペーパーバック : 191ページ
- ISBN-10 : 4309401694
- ISBN-13 : 978-4309401690
- 寸法 : 10.7 x 1.2 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 385,064位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中3.6つ
5つのうち3.6つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
10グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年1月4日に日本でレビュー済み
2013年6月19日に日本でレビュー済み
本書は澁澤龍彦氏が「婦人公論」で3年間連載した、ヨーロッパ美術の女性像についてのエッセイを一冊にしたものです。
ピエロ・ディ・コシモ、ペトルス・クリストゥス、ヴィットーレ・カルパッチオ、カルロ・クリヴェルリ、パルミジャニーノ、
コスメ・トゥーラ、アルブレヒト・デューラー、ルーカス・クラナッハ、ヤコポ・カルッチ・ポントルモ、ジョバンニ・ベルリーニ、
シモーネ・マルティーニ、ピエトロ・カヴァルリーニ、ハンス・バルドゥンク・グリーン、セバスティアン・ストッスコップフ、
サンドロ・ポッティチェルリ、グリュネワルト、ヒエロニムス・ボッス、ハンス・メムリンク、ディエゴ・ベラスケス、
グイド・レーニ、ルカ・シニョレルリ、ドッソ・ドッシ、ヤコポ・ツッキ、フランシスコ・ゴヤ、グスタフ・クリムト、
レオノール・フィニー、マックス・エルンスト、アントワヌ・ヴィールツ、バーン・ジョーンズ、フェリックス・ラビッス、
ロメオ・デ・トレス、ジェイムス・アンソール、ハインリヒ・フュスリ、オディロン・ルドン、サルバドール・ダリ、
アングルの以上36名の作品について語られています。
澁澤氏独自の視点から作品とその作者について解説されており、一作品につき図版も合わせて5ページと短いので
楽しみながらスラスラと読み進められます。
中でも興味深かったのはフェリックス・ラビッスの「シャルロット・コルデー」とルドンの「一つ目巨人」に対する精神分析学的推理です。
特に「シャルロット・コルデー」は革命指導者のマラーを暗殺した実在の人物をモデルにしており、見た目のユニークさと
精神分析学により読み解かれる意味合いのギャップが興味をそそります。
図版ではグイドレーニの「スザンナと老人たち」とアントワヌ・ヴィールツの「美しきロジーヌ」がとても美しく気に入りました。
また、日本では有名でない画家たちの作品も紹介されているので、その点も楽しめます。
ただ短くて読みやすい分、少々不足に思う個所もあります。
例えばフュスリの「キューレボルンがウンディーネを漁師のところへ連れてくる」ではフーケの描いた物語「ウンディーネ」の一場面として
紹介されていますが、終わりの数行のところでこの絵は別名[小さな妖精]と呼ばれており「ウンディーネ」はこの作品の後年に
発表されているので関係なしに鑑賞すべきかも知れないと書かれています。
ではなぜこの絵が「キューレボルンがウンディーネを漁師のところへ連れてくる」という題名で呼ばれているのか、
その理由についてもう一歩踏み込んで解説して欲しかったのです。
そのあたりの点が美術評論家の堅苦しい文章と違い読みやすい分、ページの少なさも相まってやや物足りなく感じられました。
また難しい漢字や言い回しが所々出て来ますが、ほとんどふりがなが付いていないので、読む時は大きめの事典か電子辞書を
傍らに置いておく事をお勧めします。
それからこの文庫本版では口絵で紹介されている4枚以外はすべてモノクロの図版です。
やはり美しい美術作品をカラーで見られないのは残念!あと数百円値上げしてもカラーで載せて欲しかったです。
(グリュネワルトの「死せる恋人」のようにカラーで見たくない作品もありますが…)
現在は美術作品を扱った面白い読み物が色々あると思いますのでおススメはしませんが、澁澤氏がどの様な画家や作品を愛し、
それをどの様に捉えていたのか、その博識で独特な趣味と思考に興味のある方には面白い読み物になると思います。
ピエロ・ディ・コシモ、ペトルス・クリストゥス、ヴィットーレ・カルパッチオ、カルロ・クリヴェルリ、パルミジャニーノ、
コスメ・トゥーラ、アルブレヒト・デューラー、ルーカス・クラナッハ、ヤコポ・カルッチ・ポントルモ、ジョバンニ・ベルリーニ、
シモーネ・マルティーニ、ピエトロ・カヴァルリーニ、ハンス・バルドゥンク・グリーン、セバスティアン・ストッスコップフ、
サンドロ・ポッティチェルリ、グリュネワルト、ヒエロニムス・ボッス、ハンス・メムリンク、ディエゴ・ベラスケス、
グイド・レーニ、ルカ・シニョレルリ、ドッソ・ドッシ、ヤコポ・ツッキ、フランシスコ・ゴヤ、グスタフ・クリムト、
レオノール・フィニー、マックス・エルンスト、アントワヌ・ヴィールツ、バーン・ジョーンズ、フェリックス・ラビッス、
ロメオ・デ・トレス、ジェイムス・アンソール、ハインリヒ・フュスリ、オディロン・ルドン、サルバドール・ダリ、
アングルの以上36名の作品について語られています。
澁澤氏独自の視点から作品とその作者について解説されており、一作品につき図版も合わせて5ページと短いので
楽しみながらスラスラと読み進められます。
中でも興味深かったのはフェリックス・ラビッスの「シャルロット・コルデー」とルドンの「一つ目巨人」に対する精神分析学的推理です。
特に「シャルロット・コルデー」は革命指導者のマラーを暗殺した実在の人物をモデルにしており、見た目のユニークさと
精神分析学により読み解かれる意味合いのギャップが興味をそそります。
図版ではグイドレーニの「スザンナと老人たち」とアントワヌ・ヴィールツの「美しきロジーヌ」がとても美しく気に入りました。
また、日本では有名でない画家たちの作品も紹介されているので、その点も楽しめます。
ただ短くて読みやすい分、少々不足に思う個所もあります。
例えばフュスリの「キューレボルンがウンディーネを漁師のところへ連れてくる」ではフーケの描いた物語「ウンディーネ」の一場面として
紹介されていますが、終わりの数行のところでこの絵は別名[小さな妖精]と呼ばれており「ウンディーネ」はこの作品の後年に
発表されているので関係なしに鑑賞すべきかも知れないと書かれています。
ではなぜこの絵が「キューレボルンがウンディーネを漁師のところへ連れてくる」という題名で呼ばれているのか、
その理由についてもう一歩踏み込んで解説して欲しかったのです。
そのあたりの点が美術評論家の堅苦しい文章と違い読みやすい分、ページの少なさも相まってやや物足りなく感じられました。
また難しい漢字や言い回しが所々出て来ますが、ほとんどふりがなが付いていないので、読む時は大きめの事典か電子辞書を
傍らに置いておく事をお勧めします。
それからこの文庫本版では口絵で紹介されている4枚以外はすべてモノクロの図版です。
やはり美しい美術作品をカラーで見られないのは残念!あと数百円値上げしてもカラーで載せて欲しかったです。
(グリュネワルトの「死せる恋人」のようにカラーで見たくない作品もありますが…)
現在は美術作品を扱った面白い読み物が色々あると思いますのでおススメはしませんが、澁澤氏がどの様な画家や作品を愛し、
それをどの様に捉えていたのか、その博識で独特な趣味と思考に興味のある方には面白い読み物になると思います。
2011年10月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
うつろ舟(福武文庫)の物語を世間に紹介した渋澤龍彦が、本書でカルロ・クリヴェルリの「マグダラのマリア」を選ぶのは納得がいかない。「うつろ舟」の中に登場する”空飛ぶ円盤”のような乗り物についての渋澤の理解が本物なら、同じクリヴェルリの「受胎告知」を本書で選ぶべきだった。渋澤がクリヴェルリについて正しく理解しているのは、不倫男のイメージくらいだけなのではと思う。「受胎告知」の絵では、ズッキーニ(野菜:瓜科の植物)という西遊記のヒョウタンにあたる ”空洞・乗り物・宇宙” を象徴する素材が下の隅に描かれている。つまりこの絵は「うつろ舟」をあらわしている。ついでに言えば、日本ではヒョウタン小僧という妖怪は「乳鉢坊(にゅうばちぼう)」という妖怪といつもセットで登場する。グーグルの画像検索か何かで見れば誰でもわかるが、乳鉢坊の帽子はどうみても典型的アダムスキータイプのUFOにとても似ている。顔が帽子で隠れてあまり見えないが、ヒョウタン小僧はエイリアンに対応する。ヒョウタンのような頭の形ならエイリアンそのものだろう。乳鉢坊とは歌舞伎でおなじみの摺鉦(すりがね)のことで楽器にあたる。定説により、その発明者が空也上人(僧侶)とすれば、山岳修行中に彼が目撃したのがUFOという説明がつく。もちろん空也にとっては、UFOは仏身の顕現であり、我々のいうUFOではない。「うつろ舟」でやたらに音(小便の音など)が話題になるのも納得がいく。こうした下半身の話題は、クリヴェルリの不倫好きなどとも無縁ではないのだろう。本書に限らず渋澤の本全体でわかるのは、渋澤がサドやエロスなどといったテーマだけに関心をむけて、「うつろ舟」に登場する”空飛ぶ円盤”(=UFO)に無理解・無関心ということである。民俗学の研究領域の中にUFOは入り込めるということだ。
2011年6月22日に日本でレビュー済み
93年12版では表紙の絵はコシモの「シモネッタ・ヴェスプッチの肖像」になっている。
目次をみると、内容は変わっていないようなのだが。
なぜ、この本に掲載されていない絵を表紙に採用したのか謎だ。
澁澤流「美と官能」をゴシック期のシモーネ・マルティーニからシュルレアリスムのダリまで36点の絵について語ったもの。
各作品4ページ程。「婦人公論」で澁澤自身が選んだカラー口絵に寄せた文章だったそうで、サラッと読める。
しかし文は短いが、内容は濃厚。
文学・心理学・美術史…様々な要素を絡めてその魅力を解き明かしていくのだが…この本の魅力はやはり澁澤龍彦の審美眼そのものだろう。
「わたしが愛してやまないのは…」のような言い回しで、彼が無条件で惹かれるジャンルについて語られる。
そして私が凄いと思うのは、昨今では「萌え」という便利な表現で片付けてしまう、フェチズムなどの偏った嗜好について、非フェチの人にも頷ける解説がなされている点。
「そんなエエもんやったら、私も味わってみようかいな」
と思わせられる明晰な文章力。
最近読んだなかでは、橋本治の「ひらがな日本美術史」の異様な説得力を持った文章にもひれ伏した。(これも結構古い本ですが)
ふたりとも、何かの裏付けがあるとか、通説になっているとかの話ではない事柄を、解きほぐし、読者ひとりひとりの心に問いかけて、持論があやなす万華鏡の世界へ誘う。
読者は魔法をかけられたように、そこへ迷い込むだけでいいのだ。
この本を読んでいる間、澁澤ワールドで遊ぶ楽しさをじっくり味わえる。
あと同時代の三島由紀夫が好んだ絵についての話などもあって、面白い。
それから今回の再読では、中野京子の「怖い絵」シリーズで扱っていた絵(あるいはモチーフ)もあったので、興味深く読み比べてみた。
ユディット、美しきロジーヌ、一つ目巨人(キュクロプス)、三美神…。
男女の違いもあるが、やはり「美」と「怖」という着眼点の違いによる見え方の差は大きい。
同じ絵について正反対の解釈が成り立つ事の面白さも感じた。
しかし「官能」についてより深く切り込んでいる澁澤龍彦の方が、本質に迫るもののように思えた。
そしてそして最後にすっごくしょーもない事なのだが。
ポントルモの「婦人像」の顔が、石田ひかりに見えてしょーがない。
あの焦点が定まらない感じの目つきなんかもソックリ!…だと思うのですが。
う〜ん、ほんとくだらない。
目次をみると、内容は変わっていないようなのだが。
なぜ、この本に掲載されていない絵を表紙に採用したのか謎だ。
澁澤流「美と官能」をゴシック期のシモーネ・マルティーニからシュルレアリスムのダリまで36点の絵について語ったもの。
各作品4ページ程。「婦人公論」で澁澤自身が選んだカラー口絵に寄せた文章だったそうで、サラッと読める。
しかし文は短いが、内容は濃厚。
文学・心理学・美術史…様々な要素を絡めてその魅力を解き明かしていくのだが…この本の魅力はやはり澁澤龍彦の審美眼そのものだろう。
「わたしが愛してやまないのは…」のような言い回しで、彼が無条件で惹かれるジャンルについて語られる。
そして私が凄いと思うのは、昨今では「萌え」という便利な表現で片付けてしまう、フェチズムなどの偏った嗜好について、非フェチの人にも頷ける解説がなされている点。
「そんなエエもんやったら、私も味わってみようかいな」
と思わせられる明晰な文章力。
最近読んだなかでは、橋本治の「ひらがな日本美術史」の異様な説得力を持った文章にもひれ伏した。(これも結構古い本ですが)
ふたりとも、何かの裏付けがあるとか、通説になっているとかの話ではない事柄を、解きほぐし、読者ひとりひとりの心に問いかけて、持論があやなす万華鏡の世界へ誘う。
読者は魔法をかけられたように、そこへ迷い込むだけでいいのだ。
この本を読んでいる間、澁澤ワールドで遊ぶ楽しさをじっくり味わえる。
あと同時代の三島由紀夫が好んだ絵についての話などもあって、面白い。
それから今回の再読では、中野京子の「怖い絵」シリーズで扱っていた絵(あるいはモチーフ)もあったので、興味深く読み比べてみた。
ユディット、美しきロジーヌ、一つ目巨人(キュクロプス)、三美神…。
男女の違いもあるが、やはり「美」と「怖」という着眼点の違いによる見え方の差は大きい。
同じ絵について正反対の解釈が成り立つ事の面白さも感じた。
しかし「官能」についてより深く切り込んでいる澁澤龍彦の方が、本質に迫るもののように思えた。
そしてそして最後にすっごくしょーもない事なのだが。
ポントルモの「婦人像」の顔が、石田ひかりに見えてしょーがない。
あの焦点が定まらない感じの目つきなんかもソックリ!…だと思うのですが。
う〜ん、ほんとくだらない。