澁澤の著作のなかでは、最高の作品ではなかろうか。彼のフィクションはまだ読んでいないのでこれは除外しての話であるが。
フランス語翻訳を中心の道具として縦横無尽に欧中日の古今東西の著書を読破し、三島由紀夫をして博学と言わしめた博引傍証にして
博覧強記ぶりは、へたをすると読者を置いたまま魔界魔道に突入する。多少の学がなければ現実に置いてけぼりは必至だ。
古今の著作から、”飯を食っていて砂をかんだがごとき”違和感を楽しんでいるのは澁澤ばかりではなく、好んで彼を選択する読者もまた、
その違和感を楽しむのだ。ヘロドトスが空飛ぶ蛇の話を始めたとき、私はこの違和感の快感を知った。澁澤は方丈記を挙げていたのであるが。
いままでの作品より具体的なフェティッシュ(原意としての魂が吹き込まれた物)が決定された随筆であり、より修練した博引である。
後半は特に好ましく、澁澤が旅を語れば、過去を振り返れば、こんなにさらさらした文体になるのだなあ、と感心した。
そこには、物への軽い固執、ノスタルジーというべきかもしれないが、がきれいに盛り付けられている。
こんな生き方ができればなあと思うが無理な相談だ。好奇心の異常な横溢なしにこの書は執筆できない。
決して正確な科学が語られることはない。地動説、天動説に興味があるのではなく、同心円にフェティッシュを見出す人なのだから。
この本では物理的真実はなにほどの意味をもたない。
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記憶の遠近法 (河出文庫 121V) 文庫 – 1991/11/1
渋澤 龍彦
(著)
- 本の長さ241ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日1991/11/1
- ISBN-104309403247
- ISBN-13978-4309403243
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (1991/11/1)
- 発売日 : 1991/11/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 241ページ
- ISBN-10 : 4309403247
- ISBN-13 : 978-4309403243
- Amazon 売れ筋ランキング: - 660,002位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,410位河出文庫
- - 10,512位近現代日本のエッセー・随筆
- - 27,547位評論・文学研究 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2010年1月3日に日本でレビュー済み
澁澤氏の愛好物を博物誌的に綴った前半部と、所謂随筆を収めた後半部から成るエッセイ集。鋭い論考と言うよりは、対象物への愛着、懐古・感傷の念に包まれた作品。
澁澤ファンには御馴染みの「サラマンドラ」では、サラマンドラの紋章→火→錬金術→「哲学の卵」・再生・子宮→神の恩寵による「秘密の火」→プラトンのサイクルと自在の展開。ダ・ヴィンチもサラマンドラの実在を信じていたとは驚き。また、「一角獣」の実在が17世紀まで信じられていたと言うからこれも驚く。一角獣の角(と称するもの)は毒薬探知機として使用されたり、貴族の間で珍重されていたらしく、ウィンザー城の寝室にもあった由。敏捷なため捕獲困難な一角獣が、処女にだけ弱いと言う伝説は、一角獣が処女を受胎させる聖霊の役割を担っているからだと言う。だが、この宗教的解釈は次第にエロティックなものに変貌したようだ。むべなるかな。「タロット」では、現在のトランプに対応する小アルカナ以外の22枚の大アルカナに謎を見る。ヘブライ語のアルファベット22文字との対応は偶然だろうか ? だが、中世キリスト教文明や占星術の影響が色濃いようだ。著者は大アルカナに、民衆が創り出した小宇宙を見ているのである。「宝石」では常の如くプリニウスの引用が多いが、ドミニコ修道会の聖職者(兼魔術師)マグヌスの引用も大同小異で笑わせる。「盗み」と「エロティシズム」の関係の考察も面白い。「盗み=空を飛ぶ=性的」とのフロイト流解釈をほぼ甘受しているようである。「体位について」は、南方熊楠の引用もあって大変面白いが、詳細は書けない。「目の散歩」以降は、過去への懐古から現在の心境を映し出すと言う意図で書かれた、「遠近法」的随筆。
斬新鋭利かつ自由奔放な論理展開はやや影を潜め、特に後半、懐古を通じて著者の心境を浮き彫りにした内省的作品との印象を受けた。著者の素顔に触れられる貴重な一作。
澁澤ファンには御馴染みの「サラマンドラ」では、サラマンドラの紋章→火→錬金術→「哲学の卵」・再生・子宮→神の恩寵による「秘密の火」→プラトンのサイクルと自在の展開。ダ・ヴィンチもサラマンドラの実在を信じていたとは驚き。また、「一角獣」の実在が17世紀まで信じられていたと言うからこれも驚く。一角獣の角(と称するもの)は毒薬探知機として使用されたり、貴族の間で珍重されていたらしく、ウィンザー城の寝室にもあった由。敏捷なため捕獲困難な一角獣が、処女にだけ弱いと言う伝説は、一角獣が処女を受胎させる聖霊の役割を担っているからだと言う。だが、この宗教的解釈は次第にエロティックなものに変貌したようだ。むべなるかな。「タロット」では、現在のトランプに対応する小アルカナ以外の22枚の大アルカナに謎を見る。ヘブライ語のアルファベット22文字との対応は偶然だろうか ? だが、中世キリスト教文明や占星術の影響が色濃いようだ。著者は大アルカナに、民衆が創り出した小宇宙を見ているのである。「宝石」では常の如くプリニウスの引用が多いが、ドミニコ修道会の聖職者(兼魔術師)マグヌスの引用も大同小異で笑わせる。「盗み」と「エロティシズム」の関係の考察も面白い。「盗み=空を飛ぶ=性的」とのフロイト流解釈をほぼ甘受しているようである。「体位について」は、南方熊楠の引用もあって大変面白いが、詳細は書けない。「目の散歩」以降は、過去への懐古から現在の心境を映し出すと言う意図で書かれた、「遠近法」的随筆。
斬新鋭利かつ自由奔放な論理展開はやや影を潜め、特に後半、懐古を通じて著者の心境を浮き彫りにした内省的作品との印象を受けた。著者の素顔に触れられる貴重な一作。
2007年11月6日に日本でレビュー済み
河出は澁澤のためにある、と言ったら怒られそうだが、実際そのくらいこの出版社はこの作者の本を出しているし、外国文学も、相当量がこの訳者の訳なんである。
それはそうとして、これはいろんな知識や実体験が、ひょうきんなほど軽妙な文章で書かれていて、勉強になってしかもおもしろい。いつも思うが、翻訳家の文章はいい文章が多い。
澁澤龍彦の、妙なイメージに敬遠している人におすすめである。
それはそうとして、これはいろんな知識や実体験が、ひょうきんなほど軽妙な文章で書かれていて、勉強になってしかもおもしろい。いつも思うが、翻訳家の文章はいい文章が多い。
澁澤龍彦の、妙なイメージに敬遠している人におすすめである。