もう、もう、お見事と言うほかない。
これは、圓朝を素材にした、面白くて、優れた小説である。
志ん生は、圓朝を見たことがあると語っていたが、作者の正岡容は、年齢的に圓朝の芸を見ておらず、面識もない。しかし、良く調べ、圓朝を知る人から話を聞き、一時芸人でもあり、作家としての想像力が、この傑作をものにした。
最初の数十ページを読み手は少しジリジリするだろう。(早く芸の世界を描いてくれ)と。
しかし、そのうっぷんが、その後に少しづつ展開される圓朝の人生を描くに至って、ぐんぐん引き込まれる下拵えにもなっている。
芸の世界に入ってからの面白さは、中々この本から離れがたい。次を知りたい、この後どうなるのか? 読まずにいられない。興味深い、面白い逸話が次から次に出てくる。どこまでが本当で、どこからが作り事かは知らない。いかにもありそうな逸話と展開が繰り広げられる。面白くて、興味深くて、たまらない。途中で読むのを止めたくない。
伝記ではないので、圓朝の30歳までで終わっている。この締め方も、見事。
作者は、この後も書く予定だったようだけれど、ここまでで十分堪能できた。
圓朝と言う有名人を小説にするとは俗な感じがしたけれど、さすがに正岡容で、圓朝の心の内を描きつつ、彼を取り巻く当時の演芸の世界も人々も、なんとまぁ必要な限り必要な表現で描き出す。
圓朝への愛が溢れている一作。
付録の「我が圓朝研究」は、圓朝の速記本を解説しながら説明している。
「怪談牡丹灯籠」
「江島屋騒動」
「怪談乳房榎」
「文七元結」
「真景襲ヶ淵」
の五席について述べている。これは、落語ファンでないと分かりにくく、つまらないかもしれないけど、芸の深淵を少しばかり覗ける。
落語ファンには、怪談話・人情噺をどう聞くものか、作者はどういう工夫をしてこうした会話にしたのか等、これらを圓生や志ん生で聞いていれば、改めて聞き返そうと思うに十分な記述に満ちている。
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小説 圓朝 (河出文庫) 文庫 – 2005/7/5
正岡 容
(著)
- 本の長さ392ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2005/7/5
- ISBN-104309407528
- ISBN-13978-4309407524
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2005/7/5)
- 発売日 : 2005/7/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 392ページ
- ISBN-10 : 4309407528
- ISBN-13 : 978-4309407524
- Amazon 売れ筋ランキング: - 937,050位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年2月20日に日本でレビュー済み
著者が圓朝を書くことの苦悩が推し量れる内容。全生涯を語るための「序」として
出版したのだろうが、「続」も「中」もその後発表されていないため、評価は
下げざるを得ない。附録の圓朝作品研究は、あくまで附録なので、本編の評価を
すべきかと思うが、後年多大な影響を受けた山岡鐡舟も登場しない。舌足らずの
構成は厳しく評価すべきだろう。ただし、その内容自体は著者ならではのもので、
特に浮世絵師一勇齋国芳の内弟子時代についての描写や、師匠二代目円生との関係
については、読み応え十分。本書と小島政二郎著の『円朝』と併せて読むことで、
ようやく稀代の名人の実像に少し近づけそうな気がする。
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