歴史に名を残す奇人達の評伝。
欧州の暗黒世界をこよなく愛し、数多くの幻想小説を日本に紹介して来た澁澤龍彦が厳選してエッセイ風に紹介した著作なので、僅かな時間で読み切れる簡易さに魅力がある。
本書と共に欧米諸国の闇を垣間見るのも一興であろう。
悪名高きラスプーチン、ロンドンを恐怖に陥れた切り裂きジャック、一昔前には日本でも大ブームを巻き起こした預言者ノストラダムス、数多くの文学作品にも登場する錬金術師カリオストロ、医者でありながらも神秘主義者でもあったパラケルスス、そして不死身のサン・ジェルマン伯爵…勿論、余りにも有名な人物ばかりなので「今更」と思われる方が多いかもしれないが、未だ知らなかった新事実を発見する事もあるであろうし、何よりもこうした奇人達が歴史の中に刻んだ痕跡の面白さに改めて気付かされるであろう。
また、歴史上の著名な奇人のみならず、秘密結社、人肉嗜食魔(カニバリズム)、性倒錯者等に目を向けているのも興味深い。
特に、ミュシャの作品でお馴染みのサラ・ベルナールのネクロ・フェティシズム(死に関連するものを愛する)について紹介している所は、このような異常な趣味の持ち主だったからこそ大女優となり得たのか、或いは大女優となったからこそこのような世界に傾倒したのか…誰しもが心の奥底に暗闇を秘めているようにも思い、非常に面白かった。
因みに本書は昭和41年~44年に掛けて「別冊小説現代」連載された小品を纏めているので一部重複した内容も含まれているし、また、巻末の東雅夫氏の解説に依ると、現代では余りにもオーソドックスな人選と受け止められかねないものの、当時に於いては「珍奇で目新しいラインナップ」だったとの事…こうした時代の古さは差し引いて考えるべきであろう。
如何にも澁澤龍彦らしい、暗黒世界に満ち溢れた一冊。
歴史上に花開いた“悪の華”の競演を楽しんでみては如何だろうか。
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妖人奇人館 (河出文庫) 文庫 – 2006/5/3
澁澤 龍彦
(著)
占星術師や錬金術師、魔術師、詐欺師に殺し屋……世には実に多くの妖人、奇人、怪人が存在する。謎めいた仮面を被り、数々の奇行とスキャンダラスな行為で世の中を煙に巻いた歴史上の人物たちの驚くべき生涯!
- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2006/5/3
- ISBN-104309407951
- ISBN-13978-4309407951
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商品の説明
著者について
1928~87年。東京生まれ。東大仏文科卒。マルキ・ド・サドの著作を紹介する一方、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを数多く発表。晩年は『高丘親王航海記』など小説に独自の世界を展開した。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社; 新装新版 (2006/5/3)
- 発売日 : 2006/5/3
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 200ページ
- ISBN-10 : 4309407951
- ISBN-13 : 978-4309407951
- Amazon 売れ筋ランキング: - 164,865位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 670位河出文庫
- - 3,057位近現代日本のエッセー・随筆
- - 7,746位楽譜・スコア・音楽書 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2022年5月23日に日本でレビュー済み
ノストラダムスを始め、聞いた事はあるが、詳しく知ってるわけではない、怪人物が紹介されている。あくまで私基準だが、こういう人物だったのか、と知る事が出来たのは良かった。澁澤氏もあくまで紹介するだけと言うスタンスで、入門書の感じ。いつもより一層軽妙で、かつ要を得た文章だった。
世界の妖人奇人を紹介した入門書で、澁澤氏の執筆は適任だと思った。
世界の妖人奇人を紹介した入門書で、澁澤氏の執筆は適任だと思った。
2008年9月7日に日本でレビュー済み
1984年に出たものの新装新版。文字が大きくなっている。
もともとは『別冊小説現代』などの雑誌に連載され、1971年に桃源社から出版されたものである。
内容は、ラスプーチン、切り裂きジャック、ノストラダムス、パラケルスス、カリオストロ、サン・ジェルマン伯など、歴史上に有名な奇人・怪人を取り上げ、紹介したもの。
いまではお馴染みの人物ばかりだが、1971年当時の日本ではほとんど知られていなかったらしい。そうした意味でも先駆的な作品といえる。
軽いタッチで書かれており、一般読者にも簡単に楽しめる一冊となっている。
こうした軽さも、澁澤龍彦の「味」のひとつなのだろう。
もともとは『別冊小説現代』などの雑誌に連載され、1971年に桃源社から出版されたものである。
内容は、ラスプーチン、切り裂きジャック、ノストラダムス、パラケルスス、カリオストロ、サン・ジェルマン伯など、歴史上に有名な奇人・怪人を取り上げ、紹介したもの。
いまではお馴染みの人物ばかりだが、1971年当時の日本ではほとんど知られていなかったらしい。そうした意味でも先駆的な作品といえる。
軽いタッチで書かれており、一般読者にも簡単に楽しめる一冊となっている。
こうした軽さも、澁澤龍彦の「味」のひとつなのだろう。
2003年8月31日に日本でレビュー済み
澁澤龍彦といえばマルキド・サドなどの翻訳でよく知られている日本屈指の幻想文学作家である。
しかし、彼の真髄は小説ではなくエッセイにこそあると私は思う。
世界中の妖人奇人を澁澤独特の観点から観察し、登場人物の特徴を見事なまでに描き切っている。
この本は澁澤の耽美頽廃趣味が顕著に表れた怪書であり、まさに澁澤ならではの至極の随筆といえるだろう。
しかし、彼の真髄は小説ではなくエッセイにこそあると私は思う。
世界中の妖人奇人を澁澤独特の観点から観察し、登場人物の特徴を見事なまでに描き切っている。
この本は澁澤の耽美頽廃趣味が顕著に表れた怪書であり、まさに澁澤ならではの至極の随筆といえるだろう。