呪縛の塔 マルキ・ド・サド
ギスモンド城の幽霊 シャルル・ノディエ
緑色の怪物 ジェラール・ド・ネルヴァル
解剖学者ドン・ベサリウス ペトリュス・ボレル
勇み肌の男 エルネスト・エロ
恋愛の科学 シャルル・クロス
奇妙な死 アルフォンス・アレ
共同墓地 ふらんす怪談 アンリ・トロワイヤ
殺人妄想
自転車の怪
幽霊の死
むじな
黒衣の老婦人
死亡統計学者
恋のカメレオン
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澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集 (河出文庫) 文庫 – 2013/2/5
澁澤 龍彦
(翻訳)
サド、ノディエ、ネルヴァルなど、フランス幻想小説の系譜から、怪奇・恐怖・神秘を主題に独自に選んだ珠玉の澁澤訳作品。文庫初の『共同墓地』(トロワイヤ)全篇収録。解説=東雅夫。
- 本の長さ368ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2013/2/5
- 寸法10.7 x 1.5 x 15 cm
- ISBN-104309412009
- ISBN-13978-4309412009
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商品の説明
著者について
1928〜87年。東京生まれ。東大仏文科卒業後、マルキ・ド・サドの作品を日本に紹介する一方、人間精神や文明の暗黒面に光をあてる多彩なエッセイを発表。晩年は小説に独自の世界を拓いて、広く読まれた。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2013/2/5)
- 発売日 : 2013/2/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 368ページ
- ISBN-10 : 4309412009
- ISBN-13 : 978-4309412009
- 寸法 : 10.7 x 1.5 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 535,809位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 826位フランス文学 (本)
- - 2,045位河出文庫
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年2月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
澁澤龍彦と言えば、日本に初めてマルキ・ド・サドを紹介した人物として知られているように、悪徳、罪悪、反骨精神等に目を向けた文学者でもある。
依って、本書に収められている“幻想小説”も単なるファンタジーや夢物語ではなく、欧州の闇の世界を描いた作品が中心となっている。
収録されているのは全部で14話だが、アンリ・トロワイヤ「共同墓地」は7つの短編から成っているので、実質的には20に及ぶ物語を楽しめると考えて頂いて良いと思う。
さて、本書の最初を飾るのは、やはりマルキ・ド・サドの作品「呪縛の塔」であり、正しく“悪の権化”と称するに相応しい王が地獄を旅する物語である。
こんな王でも勇気だけは称賛に値するものであり、読んでいるうちに「まさか悪の勝利か…?!」と思ってしまったものの、最後は清々しい勧善懲悪だったので安心した。
だが、全ての物語がこれ程すっきり終わってくれる訳ではない。
「ギスモンド城の幽霊」は、恐ろしい体験をした仲間の顛末を思い出話として語る構成だが、その淡々とした終わりには却って人生の虚しさを感じるようでもあるし、「黒衣の老婦人」は、自ら潔く死を迎えようとしている婦人が、実は死から逃げ回っている…という意外な結末が待ち受けており、虚勢に隠された人間の弱さを見たようでもある。
更には、恐ろしい科学を題材にした作品が多く収められているのも本書の特色であり、例えば、科学に没頭する研究者の残忍性を描き切った「解剖学者・ドン・ベサリウス」、恋愛を数値で測ろうと試みる青年を主人公にした「恋愛の科学」、そして「恋のカメレオン」は、定期的に性格を変える実験の対象となった二人がお互いの変化に戸惑いながらも愛を育み、遂に実験から解放されて平穏な結婚生活を迎える…が、最後にどんでん返しがあるので、人間の心理の複雑さを突き付けられた気分になるのではなかろうか。
いや、それだけではない…本書にはこうした皮肉な物語がある一方で、純粋な幽霊譚「自転車の怪」や典型的なモンスターを扱った「緑色の怪物」等もあるし、特に「幽霊の死」に言及するならば、ここには私達の幽霊の概念を覆す斬新さがあると同時に、輪廻転生について考える機会を与えてくれる新たな発想があるので、大変な意欲作として興味深かった。
何れも個性的な名作揃い。
最後まで興味が尽きる事は無いであろう。
依って、本書に収められている“幻想小説”も単なるファンタジーや夢物語ではなく、欧州の闇の世界を描いた作品が中心となっている。
収録されているのは全部で14話だが、アンリ・トロワイヤ「共同墓地」は7つの短編から成っているので、実質的には20に及ぶ物語を楽しめると考えて頂いて良いと思う。
さて、本書の最初を飾るのは、やはりマルキ・ド・サドの作品「呪縛の塔」であり、正しく“悪の権化”と称するに相応しい王が地獄を旅する物語である。
こんな王でも勇気だけは称賛に値するものであり、読んでいるうちに「まさか悪の勝利か…?!」と思ってしまったものの、最後は清々しい勧善懲悪だったので安心した。
だが、全ての物語がこれ程すっきり終わってくれる訳ではない。
「ギスモンド城の幽霊」は、恐ろしい体験をした仲間の顛末を思い出話として語る構成だが、その淡々とした終わりには却って人生の虚しさを感じるようでもあるし、「黒衣の老婦人」は、自ら潔く死を迎えようとしている婦人が、実は死から逃げ回っている…という意外な結末が待ち受けており、虚勢に隠された人間の弱さを見たようでもある。
更には、恐ろしい科学を題材にした作品が多く収められているのも本書の特色であり、例えば、科学に没頭する研究者の残忍性を描き切った「解剖学者・ドン・ベサリウス」、恋愛を数値で測ろうと試みる青年を主人公にした「恋愛の科学」、そして「恋のカメレオン」は、定期的に性格を変える実験の対象となった二人がお互いの変化に戸惑いながらも愛を育み、遂に実験から解放されて平穏な結婚生活を迎える…が、最後にどんでん返しがあるので、人間の心理の複雑さを突き付けられた気分になるのではなかろうか。
いや、それだけではない…本書にはこうした皮肉な物語がある一方で、純粋な幽霊譚「自転車の怪」や典型的なモンスターを扱った「緑色の怪物」等もあるし、特に「幽霊の死」に言及するならば、ここには私達の幽霊の概念を覆す斬新さがあると同時に、輪廻転生について考える機会を与えてくれる新たな発想があるので、大変な意欲作として興味深かった。
何れも個性的な名作揃い。
最後まで興味が尽きる事は無いであろう。
2013年5月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
さすがの澁澤です。澁澤ワールドに入り込んでいきたい方には、お勧めですね。
2022年7月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
サド・勇気と豪胆さは悪行をチャラにし得るか?ノディエ・夢想家、懐疑屋、合理主義者、三者三様に一夜の怪異が人生にもたらしたものは?ネルヴァル・酒瓶の怪…フランスの妖怪。ボレル・屍体解剖…科学と猟奇の狭間。エロ・或、人殺しの末路。クロス・尻切れトンボな戯言!アレ・法螺吹きの虚言。トロワイヤ・安定した作風の七話…強迫観念、執着の結末、死者の死は転生、早すぎた埋葬×電話、傲慢な婦人、死亡者数予測に憑かれた統計学者、薬物的シェイクスピア喜劇。
2013年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「幻想怪奇」と題名にあるが、むしろ「悪徳」をテーマにしたフランス文学短編集と言った趣き(サドが入っているのがその象徴)を呈した興味深いアンソロジー。如何にも澁澤氏らしい編纂で、各作品と内容と共に練達した澁澤氏の翻訳も楽しめる。また、7つの短編から成る「共同墓地」と名付けられた、独自の風味を持った作品が収められている点も特徴。
サド「呪縛の塔」は、悪徳と情欲の権化であるスペイン王が、その報いとして地獄巡りをすると言うサド流"地獄篇"。宇宙に関する考察があるのには驚いた。更に、因果応報譚の響きがある点が、サドとしては意外(それともサド一流の皮肉?)だが、この流れは全編に漂っている。ノディエ「ギスモンド城の幽霊」は、中編と言っても良い長さの王道的怪談だが、ここにも因果応報の香りを感じた。ボレル「解剖学者ドン・ベサリウス」は、「悪徳(背徳)」の他に、怪奇幻想風味と黒魔術的風味が加わっており、澁澤氏の博物誌エッセイを想起させる逸品。その中で、アレ「奇妙な死」は、悪徳とは無関係に"奇妙な味"に徹した短編(6頁)で、その奇想には驚かされた。
しかし、何と言っても本アンソロジーの眼目は上述した「共同墓地」を収めている点であろう。作者のトロワイヤに関して私は全く無知だし、多彩な短編から構成される「共同墓地」の全体作風を適切に表現するのは難しいのだが、強いて言えば"奇妙な味"と怪談と奇想の組合せだろうか。語り口が非常に巧みで、各編が死に纏わる物語でありながら、ユーモア味や諧謔味さえ漂わせ、オチがまた秀逸なのである。特に、「黒衣の老婦人」のオチが卓抜で印象深い。本アンソロジー中でも出色の出来だと思った。
フランス・ノワール文学、澁澤氏の世界への恰好な入門書とも言え、この方面に興味を持っている方には魅力溢れるアンソロジーだと思う。
サド「呪縛の塔」は、悪徳と情欲の権化であるスペイン王が、その報いとして地獄巡りをすると言うサド流"地獄篇"。宇宙に関する考察があるのには驚いた。更に、因果応報譚の響きがある点が、サドとしては意外(それともサド一流の皮肉?)だが、この流れは全編に漂っている。ノディエ「ギスモンド城の幽霊」は、中編と言っても良い長さの王道的怪談だが、ここにも因果応報の香りを感じた。ボレル「解剖学者ドン・ベサリウス」は、「悪徳(背徳)」の他に、怪奇幻想風味と黒魔術的風味が加わっており、澁澤氏の博物誌エッセイを想起させる逸品。その中で、アレ「奇妙な死」は、悪徳とは無関係に"奇妙な味"に徹した短編(6頁)で、その奇想には驚かされた。
しかし、何と言っても本アンソロジーの眼目は上述した「共同墓地」を収めている点であろう。作者のトロワイヤに関して私は全く無知だし、多彩な短編から構成される「共同墓地」の全体作風を適切に表現するのは難しいのだが、強いて言えば"奇妙な味"と怪談と奇想の組合せだろうか。語り口が非常に巧みで、各編が死に纏わる物語でありながら、ユーモア味や諧謔味さえ漂わせ、オチがまた秀逸なのである。特に、「黒衣の老婦人」のオチが卓抜で印象深い。本アンソロジー中でも出色の出来だと思った。
フランス・ノワール文学、澁澤氏の世界への恰好な入門書とも言え、この方面に興味を持っている方には魅力溢れるアンソロジーだと思う。
2013年7月28日に日本でレビュー済み
8人の作家の手になる14編が収められている。
作品の時代背景は古いものもあるが、澁澤訳は非常にサラリとした現代的で、くだけた文章であり、読みやすい。城や騎士が登場するゴシック的なものもあるが、小道具として自転車や電話が登場したり、統計学者が登場したりと、得体のしれない怪奇一辺倒ではない近代的で洒落たユーモラスな点が翻訳者の作品選定に対する基準が感じられて楽しい。
今となっては新作が出ることが叶わない作家であるが、このような翻訳アンソロジーが出るとつい購入してしまう。未だにそういう魅力を放つ作家だと思う。
作品の時代背景は古いものもあるが、澁澤訳は非常にサラリとした現代的で、くだけた文章であり、読みやすい。城や騎士が登場するゴシック的なものもあるが、小道具として自転車や電話が登場したり、統計学者が登場したりと、得体のしれない怪奇一辺倒ではない近代的で洒落たユーモラスな点が翻訳者の作品選定に対する基準が感じられて楽しい。
今となっては新作が出ることが叶わない作家であるが、このような翻訳アンソロジーが出るとつい購入してしまう。未だにそういう魅力を放つ作家だと思う。