橋爪大三郎は大澤真幸と並んで現代日本を代表する社会学者であるが、哲学的な知識もセンスも抜群である。本書は社会学的なジェンダー論としてよりも哲学的な性愛論として読む方がしっくり来ると思う。
人間における性別とは何か。生物学的には自明であるかのように思われる男女の境界線は、実はそれほど明確ではない。性染色体の構造がどちらともとれるような特殊な型もあり、単純に白か黒かで割り切れる問題ではないのである。ではグレーゾーンに位置する個体の性別はどのようにして決まるのだろうか。
橋爪の回答はこうである。まず男女という個体があって、それに基づいて男女社会が形成されるのではない。まず男女というカテゴリーが先にあって、それに合わせて各個体が振り分けられる。すなわち生物学的な雌雄とは関係なく、性別とはあくまでも社会的に後から刷り込まれるものである。だから例えば生物学的に男性（女性）の肉体を持っていても、社会的に女性（男性）として育てられれば、その個体は完全に女性（男性）として成長するであろう。
性別だけではない。橋爪によれば恋愛もまた、社会的なフィクションである。われわれが異性に接近し、異性と口づけを交わし、異性の身体を抱擁するのは、恋愛感情がそうさせているからではない。異性に接近することによって、異性と口づけを交わすことによって、異性の身体を抱擁することによって、われわれは恋愛を演じているに過ぎない。与えられた台本に則って行動することがすなわち恋愛であり、同性ではなく異性を愛するのはそれが社会的なルールであるからに過ぎない。
このような構造主義的な性愛論によっては、例えば同性愛や性同一性障害を説明することはできないかも知れない。だが「男女が愛し合うのは当たり前」と信じて疑わない一般読者の常識を揺さぶるには充分な内容である。文庫化を期待したい。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
何か問題が発生しました。後で再度リクエストしてください。
よく一緒に購入されている商品
￥916
最短で5月16日 木曜日のお届け予定です
残り1点 ご注文はお早めに
+
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
一緒に購入する商品を選択してください。
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
