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リプリーをまねた少年 (河出文庫 ハ 2-10) 文庫 – 1996/12/1
- 本の長さ505ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日1996/12/1
- ISBN-104309461662
- ISBN-13978-4309461663
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (1996/12/1)
- 発売日 : 1996/12/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 505ページ
- ISBN-10 : 4309461662
- ISBN-13 : 978-4309461663
- Amazon 売れ筋ランキング: - 544,289位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2024年4月1日に日本でレビュー済み
前作「アメリカの友人」の後半の方が、イタリアンマフィアがからんだ、結構な修羅場だったので、本作の冒頭が、クロアリ退治(日本でいう白アリみたいなやつ)に精を出すリプリーというのが可笑しかった。大金持ちの父親を殺して(?)失踪した少年がリプリーの前に現れて・・・お互いにひかれあう二人。パトリシア・ハイスミスでないと考えつかないような、風変りな話が展開する。パリ近郊のおなじみのベロンブル(トムの家)からはじまり、パリ、ベルリン、ハンブルク、ニューヨークと二人は動いていくが、何といってもハイライトは、ベルリンでの顛末でしょう。壁に分断されたベルリンの街の描写が、当時の退廃的な街の空気が充満しているようで読ませる。トム・リプリーは、パトリシア・ハイスミスの分身だと思うので、トムが目にするもの、考えることが、いちいちリアルで説得力がある。街でみかける浮浪児のような(売春しているような)子供などは、実際に作者自身がベルリンを歩きまわって見た風景ではないかと思う。わたしも、映画やドキュメンタリー、デビッド・ボウイの音楽などで、ベルリンに抱いていた妖しく退廃的な雰囲気をあらためて思い出すような感じで読んだ。ここでは、ルー・リードの「トランスフォーマー」が、象徴的に何度も出てくる。トムの妻エロイーズが好きなレコードなのですが、少年が好んでいたり、トムも歌を口ずさんだりする。思わず、Amazonでポチってしまいました。あとは、トムが気持ちを高揚させるときに聴くメンデルスゾーンがあれば、読書が楽しいものになるでしょう。この小説、トム・リプリー(=ハイスミス)が内面を吐露することが多く、トム(=ハイスミス)を知るに、たいへん興味深く、面白い読み物になっている。リプリーシリーズの中でも、ちょっと感動的なところもある。というか、後半は読む手がとまらず、トムの心情をおもうと・・・哀しく感傷的な気分になった。個人的には、パトリシア・ハイスミスの小説の中では、上位に位置する作品になりました。あと、トムが、駆除されるクロアリたちや、マダム・アネットに熱湯の入った鍋に放り込まれるロブスターの心情をおもんばかるところが可笑しい。「動物好きに捧げる殺人読本」の雰囲気を少し思い出した。
2011年7月3日に日本でレビュー済み
フランク「今まで誰かを殺したことがありますか?」
トム「ああ、あるよ」
フランク「ひとりだけじゃなくて?」
トム「正直にいうなら、そうだ」 (119ページ)
トムとフランク。出会ってまもない二人が交わすおぞましい会話。なぜトムは16歳の年端も行かぬ少年に殺人の告白を余儀なくされたのか?
本シリーズの過去三作で稀代の詐欺師を演じてきたトムは、様々な目的でいつも自分のほうから男たちに近づいていくのだが、シリーズ四作目の本書では、フランクのほうからトムをたずねてきた。
フランクは、彼が米国大企業社長の息子であること、その父が崖から転落死したこと、家族といるのが嫌になり父の葬式の後フランスにやって来たこと、ガールフレンドのテレサにふられたことも逃避行の理由であること、などをトムに打ち明ける。それでもまだ「なぜ?」は残る。なぜフランクはトムに近づいてきたのか。
トムの誘いにのってついにフランクは最大の秘密を打ち明ける。奇妙なことに、トムは正直に打ち明けられたことに納得せずより詳細に事実を語らせる(ときにはまるで警官の尋問のように)。そしてさらに奇妙なことに、君にその気があるならすべてを文章にぶちまけてしまえと、告白の儀式化を促すのである。
フランクはその誘いにも応じた。ちょっとした仕掛けも添えて。つまり、彼は告白文をしたためながら、打ち明ける相手がなぜトムでなければいけなかったのかも告白するのである。
フランクは書き上げた文章をトムに読ませて感想を求める。上述の2人の会話はその直後のものである。トムとフランクのこういったスリリングな会話や奇妙な友情が本書の魅力である。そしていろいろなことが明らかにされ、それでも最後に最大の謎が残る。母親に嘘をついてまで守った自分の秘密をトムに告白したあと、なぜフランクはあのような行動にでたのだろうか?本当にフランクはトムに真実を語ったのだろうか?
トム「ああ、あるよ」
フランク「ひとりだけじゃなくて?」
トム「正直にいうなら、そうだ」 (119ページ)
トムとフランク。出会ってまもない二人が交わすおぞましい会話。なぜトムは16歳の年端も行かぬ少年に殺人の告白を余儀なくされたのか?
本シリーズの過去三作で稀代の詐欺師を演じてきたトムは、様々な目的でいつも自分のほうから男たちに近づいていくのだが、シリーズ四作目の本書では、フランクのほうからトムをたずねてきた。
フランクは、彼が米国大企業社長の息子であること、その父が崖から転落死したこと、家族といるのが嫌になり父の葬式の後フランスにやって来たこと、ガールフレンドのテレサにふられたことも逃避行の理由であること、などをトムに打ち明ける。それでもまだ「なぜ?」は残る。なぜフランクはトムに近づいてきたのか。
トムの誘いにのってついにフランクは最大の秘密を打ち明ける。奇妙なことに、トムは正直に打ち明けられたことに納得せずより詳細に事実を語らせる(ときにはまるで警官の尋問のように)。そしてさらに奇妙なことに、君にその気があるならすべてを文章にぶちまけてしまえと、告白の儀式化を促すのである。
フランクはその誘いにも応じた。ちょっとした仕掛けも添えて。つまり、彼は告白文をしたためながら、打ち明ける相手がなぜトムでなければいけなかったのかも告白するのである。
フランクは書き上げた文章をトムに読ませて感想を求める。上述の2人の会話はその直後のものである。トムとフランクのこういったスリリングな会話や奇妙な友情が本書の魅力である。そしていろいろなことが明らかにされ、それでも最後に最大の謎が残る。母親に嘘をついてまで守った自分の秘密をトムに告白したあと、なぜフランクはあのような行動にでたのだろうか?本当にフランクはトムに真実を語ったのだろうか?
2005年6月23日に日本でレビュー済み
実はリプリーものの最初の本「太陽がいっぱい」を読んでいなく、これが初めてのリプリーもの。マット・デイモンの映画「リプリー」を見て、リプリーなる人物の性格がよくつかめず、そして映画では何人も人を殺すもののみごとに逃げ切ってしまい、妙にすっきりしなかったのと、あれからリプリーはどうなったのだろう、という好奇心から読みました。だからってなぜ外伝から入っちゃうかな、自分でも自分が少し謎です。
さて、そのリプリー君ですが、なんと美しい妻と結婚し(映画ではゲイのように表現されていた気がするのですが・・・ますますリプリー像がつかめなくなりました)フランスで幸せに暮らしています。そこに家出してフランスに来ていたアメリカの富豪の息子と出会い、リプリーは彼に関わることになるのですが・・
リプリーはお金持ちの息子フランクのことが大変気になるらしく、こまごまと世話をやき面倒をみます。(その態度はゲイっぽい)フランクの身に危機が迫った時も、リプリー君大活躍。彼の力になろうと精一杯助けるのですが、すべてが収まるべきところへ収まるかにみえた時、びっくりするようなことが・・
今までここまでやってきて、え?このラスト?
でもこれがリプリーものの雰囲気なのかも。相手が重荷になってくると人との関係性をあっさり切りたくなってそれですっきり、というリプリーの気持ちはおそろしいことに個人的には理解できる。そういう意味で自分にとって妙に居心地よく感覚的になじみを感じる雰囲気だったのは確か。
始まりからいろんなことがあって、終りがぐるっとめぐって始まりにもどってきたよう。ああ、すべて世のことはなし。といった感じ。
さて、そのリプリー君ですが、なんと美しい妻と結婚し(映画ではゲイのように表現されていた気がするのですが・・・ますますリプリー像がつかめなくなりました)フランスで幸せに暮らしています。そこに家出してフランスに来ていたアメリカの富豪の息子と出会い、リプリーは彼に関わることになるのですが・・
リプリーはお金持ちの息子フランクのことが大変気になるらしく、こまごまと世話をやき面倒をみます。(その態度はゲイっぽい)フランクの身に危機が迫った時も、リプリー君大活躍。彼の力になろうと精一杯助けるのですが、すべてが収まるべきところへ収まるかにみえた時、びっくりするようなことが・・
今までここまでやってきて、え?このラスト?
でもこれがリプリーものの雰囲気なのかも。相手が重荷になってくると人との関係性をあっさり切りたくなってそれですっきり、というリプリーの気持ちはおそろしいことに個人的には理解できる。そういう意味で自分にとって妙に居心地よく感覚的になじみを感じる雰囲気だったのは確か。
始まりからいろんなことがあって、終りがぐるっとめぐって始まりにもどってきたよう。ああ、すべて世のことはなし。といった感じ。