春まじかを予感させるパリの3月早朝。所は10区東駅にほど近いサン・マルタン運河。
離岸しようとする伝馬船のプロペラが何かを噛んだ。切断された男の腕だった。程なく潜水夫が脚、胴体も発見するが首が見つからない。このため遺棄された人物の割り出しはすこぶる困難となった・・・
現場に向かったメグレは、電話使用のため(この頃の刑事さんはケータイがないのですね)とあるみすぼらしい居酒屋に立ち寄る。応対に出た女主人は歳の頃40~45。かってはそれなりの美形だったのだろうが、今はやせて疲れている。口数は少なく万事に無表情。これまで出会ったことのないタイプで、メグレに強い印象を残す・・・
前半はなかなか快調で、被害者特定に至るメグレの調査と推理は、いつもの如く読者をひきつけ、後の結末に期待を抱かせるのだが、後半シムノンの関心は明らかに、事件そのものよりこの特異な女性を描くことに移っている。読み終わって、こういう人間、こういう人生もあるのだなーとの余韻が残る。
シムノン小説は単に事件の謎を解いておわりというわけではないことをよく示す作品。
読み手の嗜好(探偵小説マニアにとっては物足りないだろう)によって評価が分かれる作品だろう。
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メグレと首無し死体 (河出文庫 シ 2-6) 文庫 – 2000/8/4
サン・マルタン運河から男のばらばら死体があがった。例によって首無し死体なので、身許は確認できない。鑑識の結果を知ったメグレは「要するに居酒屋だな」とつぶやく。彼は何を思い出したのか……。
- 本の長さ237ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2000/8/4
- ISBN-104309461999
- ISBN-13978-4309461991
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登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2000/8/4)
- 発売日 : 2000/8/4
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 237ページ
- ISBN-10 : 4309461999
- ISBN-13 : 978-4309461991
- Amazon 売れ筋ランキング: - 948,415位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,442位フランス文学 (本)
- - 1,502位フランス文学研究
- - 3,027位河出文庫
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2014年4月21日に日本でレビュー済み
フランスの川でバラバラ死体が発見されメグレが捜査をかいしするが・・・というお話。
今回も例によって事件に関係のありそうな人間への訊問や会話に終始する展開ですが、殆ど会話だけで登場人物のキャラクターを過不足なく描くシムノンの筆致に改めて感心してしまいました。特に、居酒屋の女主人のキャラの造形の見事なことに感銘を受けました。解決も最後の数ページで淡々と済ませますが、物足りなさなど感じさせないところにシムノンの才気を感じます。
シリーズ中でも上位にくるかもしれない力作。機会があったら是非。
今回も例によって事件に関係のありそうな人間への訊問や会話に終始する展開ですが、殆ど会話だけで登場人物のキャラクターを過不足なく描くシムノンの筆致に改めて感心してしまいました。特に、居酒屋の女主人のキャラの造形の見事なことに感銘を受けました。解決も最後の数ページで淡々と済ませますが、物足りなさなど感じさせないところにシムノンの才気を感じます。
シリーズ中でも上位にくるかもしれない力作。機会があったら是非。
2002年6月2日に日本でレビュー済み
パリの司法警察局のメグレ警視が今回取り組む事件は、死体がバラバラにされた殺人事件。腕や胴体は運河から引き上げられたが、肝心の首が見つからず、誰の死体なのかハッキリとわからない。メグレは直感を頼りに、死体の身元と犯人を探りだす。
この「直感」と、もう一つ「偶然」がポイント。融通のきかないミステリマニアなら、「これでいいのか!」と許せないどころか怒りだしてしまいそうな、「偶然」と「直感」で事件が解き明かされていきます。些細なことまで見逃さず、論理の上に論理を重ね上げていくようなミステリを期待している人は、読まないほうがいいでしょう。
「論理的」の変わりに、と言ってはヘンですが、メグレをはじめとした刑事たちや犯人、ほんのチョイ役まで、登場人物たちの造形や存在感はすばらしいものがあります。死体をバラバラに切断するなどという猟奇的な犯罪も、この犯人だったらやってしまっただろうなと納得させられます。驚天動地の密室トリックや知恵をしぼったアリバイトリックなど、アッと驚かせられたり、なるほどなと感心させられたりはするものの、あまりに「論理」のほうに偏りすぎて、なんでそんなに手間暇かけてまで・・・?と不自然さが残るミステリが多いなかで、しっかりと人間が描かれているシムノンという作家・メグレ警視のシリーズは、貴重な存在ではないでしょうか。
この「直感」と、もう一つ「偶然」がポイント。融通のきかないミステリマニアなら、「これでいいのか!」と許せないどころか怒りだしてしまいそうな、「偶然」と「直感」で事件が解き明かされていきます。些細なことまで見逃さず、論理の上に論理を重ね上げていくようなミステリを期待している人は、読まないほうがいいでしょう。
「論理的」の変わりに、と言ってはヘンですが、メグレをはじめとした刑事たちや犯人、ほんのチョイ役まで、登場人物たちの造形や存在感はすばらしいものがあります。死体をバラバラに切断するなどという猟奇的な犯罪も、この犯人だったらやってしまっただろうなと納得させられます。驚天動地の密室トリックや知恵をしぼったアリバイトリックなど、アッと驚かせられたり、なるほどなと感心させられたりはするものの、あまりに「論理」のほうに偏りすぎて、なんでそんなに手間暇かけてまで・・・?と不自然さが残るミステリが多いなかで、しっかりと人間が描かれているシムノンという作家・メグレ警視のシリーズは、貴重な存在ではないでしょうか。