「氷と炎の歌」シリーズの大ヒットによりファンタジー界の第一人者として不動の地位を築いたアメリカのベテランSF作家マーティンのホラー色の濃い作品6編を集成する日本オリジナル秀作中短編集です。本書を読み終えて心に残ったのは、勿論ホラーとしての怖さはあるのですが決して残酷な物ではなく、(冗談の様な一編を除いて)人生に敗れた人々をそっと労わるような優しく悲しい哀感が漂う結末の余韻です。
『モンキー療法』おデブのケニーが痩せようと決意し友人から教わった‘モンキー療法’は、とんでもなく恐ろしい内容だった。男が味わった苦労の末の結末に貰い泣きしてしまいます。『思い出のメロディー』学生時代の仲良し四人組の一人メロディーが三年振りに主人公テッドの元へ訪ねて来た理由とは?我儘な人間の性格は永遠に変わらない物ですね。『子供たちの肖像』作家の老人に画家の娘が送って来た肖像画には奇妙な仕掛けが施されていた。絶縁した父娘の確執の理由とは?ラストに生きながら人生に絶望した男の悲哀が漂います。『終業時間』人間を変身させる護符が無害な動物の内は良かったのだけれど人類滅亡となると・・・・落語の様なオチに思わず笑ってしまう破滅SF小咄です。『洋梨形の男』都会の暮らしの中で娘に襲い掛かる悪夢の様な‘洋梨形の男’の恐怖。追い詰められた娘の精神が徐々に崩壊して行き、遂に想像を絶する戦慄のラストを迎えます。『成立しないヴァリエーション』学生時代にチェスの団体戦試合の一員として惜しくも敗れた男が、富豪になって昔の仲間3人を邸宅に招き、それぞれに真剣勝負を挑む。時間旅行を題材にしたSFでもあり、著者が得意な一級のチェス小説です。旧友への憎しみの念が火花を散らす強烈なサスペンスに心を掻き乱され、やがて訪れる意外なラストに感動が込み上げ読後心が晴れ晴れとします。人生の敗者達をそっと労わる様な哀感が漂うホラー秀作集をご堪能下さい。
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洋梨形の男 (奇想コレクション) 単行本 – 2009/9/15
ジョージ・R・R・マーティン
(著),
中村 融
(翻訳)
誰もが彼を知っている……腐ったにおいを漂わせ、アパートの地下に住む異様な<洋梨形の男>におびえる女性の心理を描いた表題作他、ネビュラ賞、ローカス賞、ブラム・ストーカー賞受賞の全6作を収録。
- 本の長さ341ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2009/9/15
- ISBN-104309622046
- ISBN-13978-4309622040
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商品の説明
著者について
1948年ニュージャージー州生まれ。SF、ホラー、ファンタジーで活躍し、《氷と炎の歌》シリーズでベストセラー作家に。代表作に、『タフの方舟』(ハヤカワ文庫SF)、『フィーヴァードリーム』(創元推理文庫)など。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2009/9/15)
- 発売日 : 2009/9/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 341ページ
- ISBN-10 : 4309622046
- ISBN-13 : 978-4309622040
- Amazon 売れ筋ランキング: - 857,351位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2009年10月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年12月12日に日本でレビュー済み
都会に潜む“洋梨形の男”の恐怖を描いた傑作ホラーの表題作をはじめ、「モンキー療法」「思い出のメロディー」「子供たちの肖像」「終業時間」「成立しないヴァリエーション」の全6篇を収録したホラー短編集。
その中の「子ども達の肖像」は、どこから何処までが、事実か妄想か夢か、夢が現実になり、小説が事実となる、何とも妙な物語。
正気と狂気との間を行き来する内に、頭がおかしくなる、なんとも後味が悪い物語だった。
人によって好みがはっきりと分かれるであろう作品。
私は苦手だ。
その中の「子ども達の肖像」は、どこから何処までが、事実か妄想か夢か、夢が現実になり、小説が事実となる、何とも妙な物語。
正気と狂気との間を行き来する内に、頭がおかしくなる、なんとも後味が悪い物語だった。
人によって好みがはっきりと分かれるであろう作品。
私は苦手だ。
2010年11月5日に日本でレビュー済み
彼の小説はバランスがいい。小難しくはならず、安直過ぎもしない。ちょうどいい怖さなのだ。
「子供たちの肖像」は、作家の業をうまくストーリー化し、サスペンスとユーモアがいい配分で盛り込まれている。ラストシーンには詩的な感傷が張りつめている。
ホラーというより箸休めのホラ小話「終業時間」が絶妙なアクセントになっている。
チェスとタイムマシンと並行世界を扱った「成立しないヴァリエーション」は、話がどんどん意外な方向に進んで面白かった。
「モンキー療法」も、ホラーなんだけど、どこかユーモアがあるんだよね。
「子供たちの肖像」は、作家の業をうまくストーリー化し、サスペンスとユーモアがいい配分で盛り込まれている。ラストシーンには詩的な感傷が張りつめている。
ホラーというより箸休めのホラ小話「終業時間」が絶妙なアクセントになっている。
チェスとタイムマシンと並行世界を扱った「成立しないヴァリエーション」は、話がどんどん意外な方向に進んで面白かった。
「モンキー療法」も、ホラーなんだけど、どこかユーモアがあるんだよね。
2009年10月18日に日本でレビュー済み
マーティンはホラーに対し
「危機に瀕し苦悩する人間の肉体と精神と魂についての、終わりない自己矛盾に悩む人間の心についての物語なのである。優れたホラー小説は、歪んだ暗い鏡に映ったわれわれ自身の姿を見せてくれる。」と語っている通り、
この本に収録されている6篇も主人公たちは心の奥に棲みついている恐怖と怒りを覗きこんでしまう。
よって、6篇の主人公の心の奥に共感出来ない作品は、こちらにホラーが伝わってこない。
個人的には食欲とダイエットというテーマを、ユーモアと恐怖を紙一重に表現した「モンキー療法」が最高です。
「危機に瀕し苦悩する人間の肉体と精神と魂についての、終わりない自己矛盾に悩む人間の心についての物語なのである。優れたホラー小説は、歪んだ暗い鏡に映ったわれわれ自身の姿を見せてくれる。」と語っている通り、
この本に収録されている6篇も主人公たちは心の奥に棲みついている恐怖と怒りを覗きこんでしまう。
よって、6篇の主人公の心の奥に共感出来ない作品は、こちらにホラーが伝わってこない。
個人的には食欲とダイエットというテーマを、ユーモアと恐怖を紙一重に表現した「モンキー療法」が最高です。
2009年11月8日に日本でレビュー済み
短編6編ですが、日本独自ヴァージョンとして集められた短編集だそうで。
恐怖・ホラーを共通項として持つ作品を選んだそうですが、個人的には「モンキー療法」も好きなんですが、
訳者が「箸休め」として入れたという一番短い作品「終業時間」が、一番馬鹿らしく・一番笑いました。
「思い出のメロディー」もちょっと怖い感じ。
あとの3編(表題にもなってる「洋梨形の男」も含めて)は、あんまりピンと来なかったです。
恐怖・ホラーを共通項として持つ作品を選んだそうですが、個人的には「モンキー療法」も好きなんですが、
訳者が「箸休め」として入れたという一番短い作品「終業時間」が、一番馬鹿らしく・一番笑いました。
「思い出のメロディー」もちょっと怖い感じ。
あとの3編(表題にもなってる「洋梨形の男」も含めて)は、あんまりピンと来なかったです。