数多くの作品の概要が説明されている。拡大図も多い。
近年の年輪年代学の調査により幾つかの作品が、ボスの後継者によることが判明しているらしい。それでも作品の正確な年代を知ることは難しいので、この中では主題別、形式別に作品を観ていき、これまでの研究の詳細な検討ではなく、あくまでも著者自身の納得できる解釈をするとしている。
掲載された作品は以下(概ねアイウエオ順。部分のみの作品、あるいは同じ題名を持つ異なる作品もある。題名はこの本でのもの)。
『祈る聖ヒエロニムス』、『隠修士の祭壇画』、『エッケ・ホモ』、『悦楽の園』、『快楽の寓意』、『カナの婚宴』、『キリストの磔刑』、『愚者の船』、『愚者の石の除去』、『荊冠のキリスト』、
『荒野の洗礼者ヨハネ』、『最後の審判の祭壇画』、『三博士の礼拝』、『三博士の礼拝の祭壇画』、『十字架をになうキリスト』、『守銭奴の死』、『聖アントニウスの誘惑』、
『聖アントニウスの誘惑の祭壇画』、『聖クリストフォロス』、『聖女の磔刑の祭壇画』、『手品師』、『七つの大罪』、『放浪者』、『乾草車』、『来世の幻想』、『パトモス島の聖ヨハネ』
内容としては、
『はじめに 世紀末の奇想の画家』
『第一章 その生涯と時代』
ボスが生きた時代背景について、またボスの自画像についても解説されている。
『第二章 初期の宗教画と風俗画』
『第三章トリプティック(三連画)の諸作品』
『第四章 世紀末の幻想』
『第五章 宗教画の伝統と革新』
『あとがき』『ボス年譜』『主要参考文献・図版出典文献』
本文中で説明されていない絵が載せられているが、多少詳しいキャプションが付けられているのが救い。説明されているのに載せられていない絵がいくつかあるのは若干不親切。また重要であるのに白黒の絵が何枚かあるのも残念。さらには2014年ともなるとさすがに絵の題名はどこかで統一してほしい。
若干の不満はありますが、他の画家の絵の引用は適切で解りやすく、新しい発見もありました。

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図説 ヒエロニムス・ボス: 世紀末の奇想の画家 (ふくろうの本) 単行本(ソフトカバー) – 2014/4/18
岡部 紘三
(著)
幻想と異形。今なお見るものに衝撃を与え続ける作品を残した、15~16世紀の謎の画家ボスの、真相に迫る恰好の案内書。
- 本の長さ127ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2014/4/18
- 寸法16.8 x 0.8 x 21.5 cm
- ISBN-104309762158
- ISBN-13978-4309762159
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商品の説明
著者について
1941年生まれ。元東洋大学教授。著書に『フランドルの祭壇画』など、共著に『図説ギリシア神話【英雄たちの世界篇】』など、訳書に『ボッス』『ブリューゲル』などがある。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2014/4/18)
- 発売日 : 2014/4/18
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 127ページ
- ISBN-10 : 4309762158
- ISBN-13 : 978-4309762159
- 寸法 : 16.8 x 0.8 x 21.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 177,628位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2014年7月6日に日本でレビュー済み
コストの関係でしょうが、美術書なのにオールカラーでないのはなんとも勿体ないですね。これだけのボスの作品を掲載しているわけですから。
「世紀末の奇想の画家」の項目では、ヒエロニムス・ボスが、レオナルド・ダ・ヴィンチと同じ時代の画家であると紹介してあります。知識としては知っていますが、美術史の流れを見ても、この二人の偉大な天才が同じ時代に活躍したことが信じられません。
ボスの自画像は残していませんが、彼の肖像ではないかという作品が10ページ以降に紹介してあり、関心を持って眺めています。あまり触れられていない点ですが、一連の例示を見ると一定のイメージが伝わってきました。
初期の作品「7つの大罪」は机絵という珍しい形状をしています。マドリードの「プラド美術館でも水平において展示している」そうです。「神が見るなかで罪深い人間の所業とその終末」を示しているようで、ボスの描きたいモティーフの源流を本書で知りました。良い美術書は様々な発見をもたらしてくれます。
なお、幸いボスの代表作の「悦楽の園(快楽の園とも言われていますが)」は、オールカラーで67ページから78ページに紹介されていますので、満足しています。
ただ、この「悦楽の園(マドリード プラド美術館)」は大変大きな作品ですし、細部の描写の特異さをもう少し大きくして見てみたかったのも事実です。後の世代のシュルレアリスムの画家に与えた影響の大きさや有り得ない超現実的な描写の細部の面白さをもう少し取り上げていただいても良かったのでは、と思いました。読者もそのあたりは知りたかったところではないでしょうか。
岡部紘三氏の解説は丁寧で詳しいものなのですが、作品全体を捉えて記してあることが多く、細部の風変わりなモティーフを一つ一つ解説していただければ、もっと親しみやすく感じたと思います。研究書ではなく、啓蒙書ですので、本作品に初めて触れる読者の興味関心にもう少し寄り添った記述でも良かったのではという感想を持ちました。学術的な確かさと啓蒙の姿勢を両立させる難しさがここにあるのです。
三連の祭壇画の形式をとるこの「悦楽の園」は大変大きな作品です。68ページの見開きに全体像が示されており、大きさも中央が220 cm × 195 cm、両翼220 cm × 97 cmと書かれていることから、イメージがつかめると思います。
88ページ掲載の「最後の審判の祭壇画」の地獄の描き方に驚かされます。衆愚な人間の営みを赤裸々に描写するウィーンの美術アカデミー付属美術館の祭壇画はもっと知られてもよい作品だと思いました。かなり詳細に解説が施されているので、ボスのファンには良い取り上げ方でした。
121ページに掲載の「荊冠のキリスト」でのキリストを取り囲む民衆のグロテスクな笑い顔に凍りつきます。初期の作品とは全く描き方が違い、この作品自体が、真筆かどうかが問われているようですが(筆者は真筆に違いないと断言しておられます)、これだけ迫力ある人間の表情を描ける画家がこの時代に他に存在していたとは思えません。「悦楽の園」以外にもボスの特異性は大いに感じられるところでしょう。この描写力は時代を越えて地域を越えて伝わってきます。それが美術の力なのでしょうが。
2016年に没後500年を記念した展覧会が予定されているそうですが、我が国でもボスの作品を是非見たいものです。
「世紀末の奇想の画家」の項目では、ヒエロニムス・ボスが、レオナルド・ダ・ヴィンチと同じ時代の画家であると紹介してあります。知識としては知っていますが、美術史の流れを見ても、この二人の偉大な天才が同じ時代に活躍したことが信じられません。
ボスの自画像は残していませんが、彼の肖像ではないかという作品が10ページ以降に紹介してあり、関心を持って眺めています。あまり触れられていない点ですが、一連の例示を見ると一定のイメージが伝わってきました。
初期の作品「7つの大罪」は机絵という珍しい形状をしています。マドリードの「プラド美術館でも水平において展示している」そうです。「神が見るなかで罪深い人間の所業とその終末」を示しているようで、ボスの描きたいモティーフの源流を本書で知りました。良い美術書は様々な発見をもたらしてくれます。
なお、幸いボスの代表作の「悦楽の園(快楽の園とも言われていますが)」は、オールカラーで67ページから78ページに紹介されていますので、満足しています。
ただ、この「悦楽の園(マドリード プラド美術館)」は大変大きな作品ですし、細部の描写の特異さをもう少し大きくして見てみたかったのも事実です。後の世代のシュルレアリスムの画家に与えた影響の大きさや有り得ない超現実的な描写の細部の面白さをもう少し取り上げていただいても良かったのでは、と思いました。読者もそのあたりは知りたかったところではないでしょうか。
岡部紘三氏の解説は丁寧で詳しいものなのですが、作品全体を捉えて記してあることが多く、細部の風変わりなモティーフを一つ一つ解説していただければ、もっと親しみやすく感じたと思います。研究書ではなく、啓蒙書ですので、本作品に初めて触れる読者の興味関心にもう少し寄り添った記述でも良かったのではという感想を持ちました。学術的な確かさと啓蒙の姿勢を両立させる難しさがここにあるのです。
三連の祭壇画の形式をとるこの「悦楽の園」は大変大きな作品です。68ページの見開きに全体像が示されており、大きさも中央が220 cm × 195 cm、両翼220 cm × 97 cmと書かれていることから、イメージがつかめると思います。
88ページ掲載の「最後の審判の祭壇画」の地獄の描き方に驚かされます。衆愚な人間の営みを赤裸々に描写するウィーンの美術アカデミー付属美術館の祭壇画はもっと知られてもよい作品だと思いました。かなり詳細に解説が施されているので、ボスのファンには良い取り上げ方でした。
121ページに掲載の「荊冠のキリスト」でのキリストを取り囲む民衆のグロテスクな笑い顔に凍りつきます。初期の作品とは全く描き方が違い、この作品自体が、真筆かどうかが問われているようですが(筆者は真筆に違いないと断言しておられます)、これだけ迫力ある人間の表情を描ける画家がこの時代に他に存在していたとは思えません。「悦楽の園」以外にもボスの特異性は大いに感じられるところでしょう。この描写力は時代を越えて地域を越えて伝わってきます。それが美術の力なのでしょうが。
2016年に没後500年を記念した展覧会が予定されているそうですが、我が国でもボスの作品を是非見たいものです。
2015年11月1日に日本でレビュー済み
「フランドルの祭壇画」というアカデミックな本を出した著者らしく、全体に穏当な保守的な本なのでボッス入門にはなかなか良い本だと思います。
新しい年輪年代法の成果も適宜とりいれてますから頑迷な保守派の本ではありません。
プラドの三賢王礼拝について「ブロンクホルスト ボシュハイゼ」という寄進者を呈示しているのは誤りですが、揚げ足をとれるのはこのくらいです。
良質の本だと思います。
新しい年輪年代法の成果も適宜とりいれてますから頑迷な保守派の本ではありません。
プラドの三賢王礼拝について「ブロンクホルスト ボシュハイゼ」という寄進者を呈示しているのは誤りですが、揚げ足をとれるのはこのくらいです。
良質の本だと思います。
2014年7月9日に日本でレビュー済み
ボスは画家デビュー初期の頃は、宗教画を書いていた。で、「アホの船」あたりから痛烈な風刺画を描くようになったけど、いかんせん、この図説での「アホの船(愚者の船)」はモノクロなのが、残念。全画面をカラーで見たかった。
脚の生えたさかなクンとか聖アントニウスがよく出てくるけど、なかなかに何を比喩してるのか、良く分からないのが哀しくもおかしい。今の世界、日本の政治家共のうごめき、経済界のオトボケ、突っ込みの入れたくなるような世相なんかを見たら、ボス先生、果たしてどのような絵を書いてくれるものやら・・・・・
「年譜」もついているので、15世紀半ば-16世紀前半という政治・社会・文化の時代背景も良く分かる・・・・・あとはマドリッドのプラド美術館でも行くしかないか・・・・・
脚の生えたさかなクンとか聖アントニウスがよく出てくるけど、なかなかに何を比喩してるのか、良く分からないのが哀しくもおかしい。今の世界、日本の政治家共のうごめき、経済界のオトボケ、突っ込みの入れたくなるような世相なんかを見たら、ボス先生、果たしてどのような絵を書いてくれるものやら・・・・・
「年譜」もついているので、15世紀半ば-16世紀前半という政治・社会・文化の時代背景も良く分かる・・・・・あとはマドリッドのプラド美術館でも行くしかないか・・・・・