故 中山茂教授による占星術解説で、恐らくサイエンス史の視点から最も占星術に踏み込んで書かれた著作だと思います。西洋占星術から距離を置いて眺めたい人向けに、成り立ちから仕組みまでを資料的に網羅しています。
科学史家としての立場は崩さず、占星術は怪しげなオカルトの一種で、現代科学ではあくまでも過去の遺物という視点です。占星術を学びたい人向けの書籍ではありませんし、そうした読者にはフラストレーションが溜まるだけなので、読む必要はまったくと言っていいほどありません。
科学史の資料的価値はどうでしょう。端々で「これ以上突っ込んでもアタマが痛くなるだけなので止めておく」という姿勢を赤裸々にしています。こうした姿勢は文章全体から感じられ、それは突っ込みの甘さ、中途半端さに現れています。恐らくですが、本書の執筆を依頼された時点で全然乗り気じゃないのです。当時の出版社担当者が「売れそうだから」という理由だけで編集会議を通した様な気がしてなりません。
資料的価値を求めるのなら、イスラム科学史の山本啓二教授や、インド占星術・数学の矢野道雄教授の著作がよほど真摯です。
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