「バイクで日本一周」で得られるものは、それを達成したという事実くらいなものだ。
すべての景色を吟味するわけもなく、ほとんどは法定速度の最大限で移動する。翌日も継続できる程度に、宿を探すか野営し、たまに天候に恵まれず旅程が間延びする。醍醐味は、有名ご当地グルメで鋭気を養うことくらいだろう。
素人計測で背幅45mm・重さ1,070gという名実ともに存在感のある本書は、持ち歩いて読むには不向きだが、字面を追うだけでも、有益な経験となるだろう。少なくとも、「バイクで日本一周」よりは「正義論を読む」ことのほうが価値があると思われる。
さて、ロールズでさえ説明するのに紙幅を要するTheoryを、好事家が訳知顔で要約するなんてことは噴飯物なので、「序文」で記されたエクスキューズを抜粋する。
「本書はページ数が多いだけでなく、たくさんの節に分かれた冗長な代物となっている」
「正義論の根本をなす直感的な〔煩瑣な論弁を重ねず、直感的に訴えかける単刀直入な〕考えは第一章の第1節から第4節で示される」
「方法論上のコメントや挿話が時おり挟まれることがあるけれども、本書の大部分は実質的な正義の理論のひとつを編み出そうとする努力に向けられている」
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正義論 単行本 – 2010/11/18
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「正義」とは何かを考える際に、 その原点となるロールズの「論」とは…… 「ロック、ルソー、カントに代表される社会契約の伝統的理論を一般化し、抽 象化の程度を高めること、私が企ててきたのはこれである。……有力で 支配的な伝統をなしてきた功利主義よりも優れている代替案(「公正としての正義」) を、この理論が提供するだろう。……契約説の伝統に伏在しており、功利主義に取って代わりうる正義観の構造的諸特徴の最重要部分を読者がはっきり理解できるようになり、その正義観をいっそう精緻化しうる理路を本書が指し示すことができるなら、著者である私の野心は余すところなく実現されるだろう。 伝統的な正義観は複数あるが、この正義観こそが、正義 /不正義を見分ける私たちのしっかりした判断にいちばん近似しており、デモクラシーの精神と制度を兼備した社会の道徳的基盤として最もふさわしいものとなる。」(初版序文より) ロールズはこう書き起こした。この本で彼は、「正義の至上性」に関する私たちの直観的な確信(「社会の制度が何はさておき実現すべき価値は、効率性や最大幸福ではなく《正義》にほかならない」!)を、社会倫理や社会科学の理論と丹念に突き合わせる作業を通じて、その妥当性を説明しようと努めている。
- ISBN-104314010746
- ISBN-13978-4314010740
- 版改訂
- 出版社紀伊國屋書店
- 発売日2010/11/18
- 言語日本語
- 寸法16.1 x 4.8 x 21.8 cm
- 本の長さ844ページ
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商品の説明
出版社からのコメント
ロールズの『正義論』は、いま注目のサンデル「ハーバード白熱教室」の必読図書であり、『これからの「正義」の話をしよう』の中でもたびたび言及されている20世紀の名著です。1971年米国で初版が刊行されるや、「まともな社会」を希求する英語圏の一般読者の心をつかみ、その後世界の30を超える言語へと翻訳されました。
社会制度を評価するための「アルキメデスの点」を見出そうとするロールズは、全員が平等な自由が分かちもって社会生活をスタートすべきこと、そして「最も恵まれない人びと」の暮らし向きを最大限改善すべきことを主張します。そうした彼の正義観(公正としての正義)は、混迷する現代社会の矛盾を照らし出し、その改革の指針を提供するものと言えるでしょう。
本書は、1971年に刊行された『正義論』(旧邦訳は同書のドイツ語訳にあたって作成された修正リストをもとに1979年、紀伊國屋書店から刊行、現在品切れ中)の改訂版(1999年刊)を新たに訳出したものです。三部九章87節の構成は初版と変わりませんが、初版刊行後ロールズに寄せられた批判、指摘をもとに「自由(の優先権)」「基本財」の説明などに訂正が施されました。改訂版翻訳にあたっては、多くの〔訳注〕をつけ読者の「読みやすさ」を考慮するとともに、原注の引用文献の翻訳版刊行情報を充実させ、また420項目の事項索引、280名の人名索引をつけ、ロールズ研究の便を図っています。
社会制度を評価するための「アルキメデスの点」を見出そうとするロールズは、全員が平等な自由が分かちもって社会生活をスタートすべきこと、そして「最も恵まれない人びと」の暮らし向きを最大限改善すべきことを主張します。そうした彼の正義観(公正としての正義)は、混迷する現代社会の矛盾を照らし出し、その改革の指針を提供するものと言えるでしょう。
本書は、1971年に刊行された『正義論』(旧邦訳は同書のドイツ語訳にあたって作成された修正リストをもとに1979年、紀伊國屋書店から刊行、現在品切れ中)の改訂版(1999年刊)を新たに訳出したものです。三部九章87節の構成は初版と変わりませんが、初版刊行後ロールズに寄せられた批判、指摘をもとに「自由(の優先権)」「基本財」の説明などに訂正が施されました。改訂版翻訳にあたっては、多くの〔訳注〕をつけ読者の「読みやすさ」を考慮するとともに、原注の引用文献の翻訳版刊行情報を充実させ、また420項目の事項索引、280名の人名索引をつけ、ロールズ研究の便を図っています。
著者について
ジョン・ロールズ(John Rawls)1921-2002 アメリカの倫理学者。元・ハーヴァード大学教授。 1950年プリンストン大学で「倫理の知の諸根拠に関する研究」で博士号取得。コーネル大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)を経て、1962年ハーヴァード大学哲学部教授に就任、哲学科主任を経て、1991年より名誉教授。 1971年に『正義論』を発表。本書は大きな反響を呼び、ドイツ語、フランス語、スペイン語、コリア語、中国語など世界各国で翻訳された。 ほかの著書として、『政治的リベラリズム』(1993)、『万民の法』(1999)(中山竜一訳、岩波書店、2006)がある。また1950年から60年代の主要論文を集めたものに『公正としての正義』(田中成明編訳、木鐸社、1979)があり、ハーヴァード大学での講義配布資料を補正した『ロールズ哲学史講義』(講義録 2000)(ハーマン編、坂部恵監訳、みすず書房、2005)、『公正としての正義 再説』(2001)(ケリー編、田中ほか訳、岩波書店、2004)がある。
登録情報
- 出版社 : 紀伊國屋書店; 改訂版 (2010/11/18)
- 発売日 : 2010/11/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 844ページ
- ISBN-10 : 4314010746
- ISBN-13 : 978-4314010740
- 寸法 : 16.1 x 4.8 x 21.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 52,670位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,438位哲学・思想 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年8月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2024年4月20日に日本でレビュー済み
20世紀戦後以降日本社会で過ごしてきた人が、学校や社会生活で(本来もしくは理想的には)そうであるべきと感じることが多いであろう民主主義的正義・倫理規範に関して理論的な観点から書かれた、自由民主主義的正義について述べた書籍。金融資本主義とそれに対する反動が目立っている21世紀の現時点で、(左翼という意味ではない)リベラリズムはすでに終わったと言われて久しいが、民主主義という言葉で人々が思い浮かべる正義についての内容とロジックについて一つの理解を与えてくれる。現実的には、社会契約論やグローバリズムは問題が多いと思うが、民主主義が少なくとも説明の上では何を目指して、そしてどこでつまづいたのかを考える上で立脚点になるであろう書籍。
2017年3月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
どこで買っても高いには高いので変わらないかと思われます。自分はレポートを書くためだけに買ったので面白い本だとは思わなかったです。ですがまた時間のあるときに読み直したいと思う一冊でした。
2019年12月31日に日本でレビュー済み
現代のリベラリズムの原点にして頂点であろう本書。
さまざまな解説を読んでいてもなかなかしっくりこないという人は、また新しい解説に手を出すよりも、本書を買うべきだと思う。さまざまな解説書を読んできた人なら、あぁそういうことだったのかと何度も腑に落ちる経験をするはずである。ところどころで出てくるロールズのキーワードが一つの体系のなかで語られていく。
リベラリズムの代表的論者である井上達夫は、リベラリズムの中心概念は「正義」である、と語っているが、本書での原理も「正義」である。正義論を読みこの言葉の意味、また正義の構想という言葉を理解したことが大きかったかなと思う。
本書の最初の方で「正義」と「正義の諸構想」の違いについて語られている。
正義というのは、その概念としては権利と義務を平等に分配することまた社会的連帯連携によって得られた便益を適切に分配すること、これが社会的な意味における正義の定義である。じゃあ正義の構想とは何か。正義の構想とはその正義の概念を解釈したもの。だから正義の構想はその解釈の数に応じてたくさんある。
じゃあロールズが提示した正義の構想とは一体何か。それこそ公正としての正義であった。公正とはじゃあどういう意味か。公正というのは平等な条件、要するに原初状態のこと。原初状態と言うのはみんなが無知のベールに覆われているのでみんな社会の事についても知らないし自分が社会の中でどういうポジションにいるのか、また自分がどういう能力を持って生まれてきているのかも知らない。能力っていうのは、例えば知性もそうだし体力のこともいえる。また他にも知らないことがある。それは自分の善の構想、善の構想それ自体の構造は知っているけどじゃあ自分がどんな目的を持っているのかは知らない、まだ選択していない。こういったことを知らない無知のベールに覆われた状態を原初状態と言う。
そのような善の構想の構造はよくしっているが目的自体は知らない人格をロールズは道徳的人格と名付ける。もっというと、自分の善の構想は知らないが、自分がこれから選ぶ目的に対して合理的でかつ、正義の感覚を持っている人間のことをロールズは道徳的人格と呼んでいる。つまり無知のベールに覆われた人間は道徳的人格として存在することになる。この道徳的人格による社会契約をロールズは想定している。正義の感覚とは何か、諸原理がどのようなものであれ各個人はそれを理解しそれらに基づいて行為するのに必須の能力のことである。
じゃあこの社会契約によって導き出される原理は何なのか。効用原理はあり得るのか。ロールズはありえないと言う。なぜなら社会全体は幸福になりますよあなたは不幸不幸かもしれないけどそんな原理に道徳的人格はノーと言うだろう。
じゃあ道徳的人格によって導き出される原理とは何かそれが正義の原理である。おおざっぱな2つの原理で言えば1基本的な権利と義務を平等に割り当てることを要求する2社会的経済的な不平等が正義にかなうのはそれらの不平等な結果として全員の便益を補正する場合に限られる。この2つの原理に人々は社会契約するだろう。
以上が正義論の大枠である。道徳的人格がどのようにして正義の2原理を導き出すのかもちろん論証されている。全部書く訳にもいかないので興味のある方はぜひ。
本書を読む価値はリベラリズムを知ることにもあるがその周辺との論争を知ることにもある。そこでここではリベラルーコミュニタリアン論争にも触れておく。
リベラルーコミュニタリアン論争にとって、とても面白いのは、公正としての正義の論理がとても民主的なプロセスだとロールズが主張していることである。というのも人間誰しもこの無知のベールを覆うことができれば、この思考プロセスを得ることができれば、誰しも合理的で正義の感覚を持った道徳的人格になれると言うことである、ということは誰しもこの人間になることができるのであれば誰もがこの原理に賛成すると言うことである。以上のような論理で、ロールズの言った原理は民主的だとロールズは主張するのである。また自らによって決めたルールによって自らを縛ることになるので自律的だともいう。
これを批判したのがサンデル。そんな民主的なプロセスを認められるわけがない。なぜなら私たちが本来行う民主主義と言うものは負荷のある自己による民主主義であるからである。負荷ある自己とは環境の中で経験をして出来上がった自己のことである。つまりそこには環境の要素そして文脈的に経験した自己と言うものがそこには存在している。その利害関係を持った人々による民主主義を想定しなければ何も始まらないのではないか。そう主張したのがサンデルであった。確かにサンデルは自由の価値や平等の価値を尊重する。ただそれは環境の中で経験をした負荷ある自己によって認められた善であって、決して善に勝るものとして正義があるんだという主張から導き出された価値ではないということである。これこそサンデルの主張であった。
ロールズは学者として、とても広い射程をもって本書を著した。その射程はところどころ私たちの思考を助けるが(私は直感主義に触れているところが面白かった)、射程の広さは読者に混乱を与える。なので、ロールズは序章辺りに丁寧にも、最初はこの章、この章、この章の最初をよんで繋げ本書を捉えてくれと書いてくれてある。ぜひ、専門家だけでなく、学生も本書を手にとって欲しい。
さまざまな解説を読んでいてもなかなかしっくりこないという人は、また新しい解説に手を出すよりも、本書を買うべきだと思う。さまざまな解説書を読んできた人なら、あぁそういうことだったのかと何度も腑に落ちる経験をするはずである。ところどころで出てくるロールズのキーワードが一つの体系のなかで語られていく。
リベラリズムの代表的論者である井上達夫は、リベラリズムの中心概念は「正義」である、と語っているが、本書での原理も「正義」である。正義論を読みこの言葉の意味、また正義の構想という言葉を理解したことが大きかったかなと思う。
本書の最初の方で「正義」と「正義の諸構想」の違いについて語られている。
正義というのは、その概念としては権利と義務を平等に分配することまた社会的連帯連携によって得られた便益を適切に分配すること、これが社会的な意味における正義の定義である。じゃあ正義の構想とは何か。正義の構想とはその正義の概念を解釈したもの。だから正義の構想はその解釈の数に応じてたくさんある。
じゃあロールズが提示した正義の構想とは一体何か。それこそ公正としての正義であった。公正とはじゃあどういう意味か。公正というのは平等な条件、要するに原初状態のこと。原初状態と言うのはみんなが無知のベールに覆われているのでみんな社会の事についても知らないし自分が社会の中でどういうポジションにいるのか、また自分がどういう能力を持って生まれてきているのかも知らない。能力っていうのは、例えば知性もそうだし体力のこともいえる。また他にも知らないことがある。それは自分の善の構想、善の構想それ自体の構造は知っているけどじゃあ自分がどんな目的を持っているのかは知らない、まだ選択していない。こういったことを知らない無知のベールに覆われた状態を原初状態と言う。
そのような善の構想の構造はよくしっているが目的自体は知らない人格をロールズは道徳的人格と名付ける。もっというと、自分の善の構想は知らないが、自分がこれから選ぶ目的に対して合理的でかつ、正義の感覚を持っている人間のことをロールズは道徳的人格と呼んでいる。つまり無知のベールに覆われた人間は道徳的人格として存在することになる。この道徳的人格による社会契約をロールズは想定している。正義の感覚とは何か、諸原理がどのようなものであれ各個人はそれを理解しそれらに基づいて行為するのに必須の能力のことである。
じゃあこの社会契約によって導き出される原理は何なのか。効用原理はあり得るのか。ロールズはありえないと言う。なぜなら社会全体は幸福になりますよあなたは不幸不幸かもしれないけどそんな原理に道徳的人格はノーと言うだろう。
じゃあ道徳的人格によって導き出される原理とは何かそれが正義の原理である。おおざっぱな2つの原理で言えば1基本的な権利と義務を平等に割り当てることを要求する2社会的経済的な不平等が正義にかなうのはそれらの不平等な結果として全員の便益を補正する場合に限られる。この2つの原理に人々は社会契約するだろう。
以上が正義論の大枠である。道徳的人格がどのようにして正義の2原理を導き出すのかもちろん論証されている。全部書く訳にもいかないので興味のある方はぜひ。
本書を読む価値はリベラリズムを知ることにもあるがその周辺との論争を知ることにもある。そこでここではリベラルーコミュニタリアン論争にも触れておく。
リベラルーコミュニタリアン論争にとって、とても面白いのは、公正としての正義の論理がとても民主的なプロセスだとロールズが主張していることである。というのも人間誰しもこの無知のベールを覆うことができれば、この思考プロセスを得ることができれば、誰しも合理的で正義の感覚を持った道徳的人格になれると言うことである、ということは誰しもこの人間になることができるのであれば誰もがこの原理に賛成すると言うことである。以上のような論理で、ロールズの言った原理は民主的だとロールズは主張するのである。また自らによって決めたルールによって自らを縛ることになるので自律的だともいう。
これを批判したのがサンデル。そんな民主的なプロセスを認められるわけがない。なぜなら私たちが本来行う民主主義と言うものは負荷のある自己による民主主義であるからである。負荷ある自己とは環境の中で経験をして出来上がった自己のことである。つまりそこには環境の要素そして文脈的に経験した自己と言うものがそこには存在している。その利害関係を持った人々による民主主義を想定しなければ何も始まらないのではないか。そう主張したのがサンデルであった。確かにサンデルは自由の価値や平等の価値を尊重する。ただそれは環境の中で経験をした負荷ある自己によって認められた善であって、決して善に勝るものとして正義があるんだという主張から導き出された価値ではないということである。これこそサンデルの主張であった。
ロールズは学者として、とても広い射程をもって本書を著した。その射程はところどころ私たちの思考を助けるが(私は直感主義に触れているところが面白かった)、射程の広さは読者に混乱を与える。なので、ロールズは序章辺りに丁寧にも、最初はこの章、この章、この章の最初をよんで繋げ本書を捉えてくれと書いてくれてある。ぜひ、専門家だけでなく、学生も本書を手にとって欲しい。
2012年7月4日に日本でレビュー済み
「正義」について考察したロールズの名著です。
800ページ近い分量があり、なおかつ1ページごとに
情報が濃密に詰まっていますから、
全体の内容を整理して梗概を書く事はとても出来ません。
ですので道徳について論じた第三部の中から
印象に残った部分を摘記いたします。
7章の67節「自尊、卓越および恥辱」の中で
自尊心を財産として解釈した所は慧眼であると思いました。
自尊心は、物事に対する取り組み方を積極的なものにし
努力の積み重ねや勇気ある行動を誘発します。
それが結果的にその人の能力を向上させたり功績を生み出し
様々な形で利益をもたらしてくれるので
ロールズはこれを立派な財産であると規定するのです。
逆に自尊心が弱く自己肯定感の低い人は、無気力な姿勢になりやすく
行動する機会を逸してしまい、
結果的に人生の色々な局面で不利益を蒙ってしまいます。
そして人間が自尊心を身につけるためには、
自分の人格を尊重してくれ、行動に承認を
与えてくれる周囲の人たちの存在が不可欠です。
周囲に理解を示してくれる人が少なければ
自信が身につかず、自尊心も弱くなってしまいます。
ここに「自尊心」という財産の不平等な分配が発生してしまうわけです。
社会正義を追求し、人々が幸福に暮らせるような理論を構築するには
金銭的な部分だけでなく人間関係や社会での立場といった
さまざまな側面から分析を行わなければなりません。
この論文の中で出てくる「正義」という言葉は非常に深い意味が
こめられているので、理解するには丁寧な読みこみが必要です。
ロールズは「正義」とは何なのか、どういうことが「正義」であり、
また「正義」から外れてしまうのか、何度も何度も検証を繰り返し
精細に「正義の定義づけ」を行っていきます。
読者はロールズとともに正義との知的格闘を繰り広げることで
ロールズの考察の壮大さと精妙さに驚き
また時には反発を覚えながら
読者自身が思い描いていた、あいまいな正義像の再考を迫られることになるのです
何が正しいか、そして正しいことは何なのかは
時代や場所によって千変万化します。
安易に妥協することなく「正義」に対して絶え間なく問いかけを続けること
それこそが今日の「正義論」読者に求められる課題ではないでしょうか。
800ページ近い分量があり、なおかつ1ページごとに
情報が濃密に詰まっていますから、
全体の内容を整理して梗概を書く事はとても出来ません。
ですので道徳について論じた第三部の中から
印象に残った部分を摘記いたします。
7章の67節「自尊、卓越および恥辱」の中で
自尊心を財産として解釈した所は慧眼であると思いました。
自尊心は、物事に対する取り組み方を積極的なものにし
努力の積み重ねや勇気ある行動を誘発します。
それが結果的にその人の能力を向上させたり功績を生み出し
様々な形で利益をもたらしてくれるので
ロールズはこれを立派な財産であると規定するのです。
逆に自尊心が弱く自己肯定感の低い人は、無気力な姿勢になりやすく
行動する機会を逸してしまい、
結果的に人生の色々な局面で不利益を蒙ってしまいます。
そして人間が自尊心を身につけるためには、
自分の人格を尊重してくれ、行動に承認を
与えてくれる周囲の人たちの存在が不可欠です。
周囲に理解を示してくれる人が少なければ
自信が身につかず、自尊心も弱くなってしまいます。
ここに「自尊心」という財産の不平等な分配が発生してしまうわけです。
社会正義を追求し、人々が幸福に暮らせるような理論を構築するには
金銭的な部分だけでなく人間関係や社会での立場といった
さまざまな側面から分析を行わなければなりません。
この論文の中で出てくる「正義」という言葉は非常に深い意味が
こめられているので、理解するには丁寧な読みこみが必要です。
ロールズは「正義」とは何なのか、どういうことが「正義」であり、
また「正義」から外れてしまうのか、何度も何度も検証を繰り返し
精細に「正義の定義づけ」を行っていきます。
読者はロールズとともに正義との知的格闘を繰り広げることで
ロールズの考察の壮大さと精妙さに驚き
また時には反発を覚えながら
読者自身が思い描いていた、あいまいな正義像の再考を迫られることになるのです
何が正しいか、そして正しいことは何なのかは
時代や場所によって千変万化します。
安易に妥協することなく「正義」に対して絶え間なく問いかけを続けること
それこそが今日の「正義論」読者に求められる課題ではないでしょうか。