この作品は、黒人奴隷撤廃を目的とした啓蒙書というだけでなく、むしろ良い意味でのすぐれた宗教書である。
個人的には、世界10大文学を挙げよと言われたら、トルストイの『戦争と平和』『アンナ・カレニナ』や、C.ブロンテの『ジェーン・エア』、ドストエフスキー『悪霊』、モーリヤック『テレーズ・デスケルウ』、シェイクスピア『リア王』、また『白鯨』その他と並んですぐに出てくる作品のひとつである。
最近では原典は比較的安価に手に入るものの、その完訳は入手困難で非常に残念だ。
その際、せめてどのような話か知りたい、という邦訳読者のニーズにこたえるものが児童書であると思う。
差別的なのはその黒人奴隷の歴史であり、この作品が黒人を差別しているのではない。
セリフや文章の一つ一つを取り上げて文句をつけるのは、それこそ揚げ足取りであり、作品全体の内容を賢察することが読者には求められている。
(だからこそ、原典は安く多数出回っているのだと思う)。
アンクルトムの態度が白人にへりくだっているだとか、批判の対象にされたこともあったが、それは事実と異なる。
この作品は、トムの謙虚過ぎる態度、社会的には弱い出自、にもかかわらず誇り高く慈愛深い性格と行動力、無残な死に、間違いなくイエスをなぞらえている。
それは一つでも聖書の福音書を読んだことのある人間なら、彼・彼女がキリスト教を信じていようがいまいが、トムの一生を正確に追えば追うほど、精読をすればするほど(できれば原典で)、痛みを伴って感じ取ることと思われる。
作中、原典では第一部十四章から出てくる少女エヴァンジェリン(イヴァ)にしても、章の名前にもある通り「小さな福音伝道者」であり、ただ物語の悲劇性を増すための存在ではない。彼女は、天使を模したものと思われる。
一方、レグリーは作中では人間の心をかけらほどは持っていた悪魔として描かれているように思う。そして、トムが何を模したものかは先述のとおりである。
この作品はトムの物語のほかに、比較的救いのあるもうひとつの女性と夫、その子の逃亡劇がもうひとつの流れとなっている。
感動、だけでない心の痕跡を、この作品は残すものだと私は信じている。
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アンクルトムの小屋 (少年少女世界名作全集) 単行本 – 1995/2/1
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社ぎょうせい
- 発売日1995/2/1
- ISBN-104324043388
- ISBN-13978-4324043387
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登録情報
- 出版社 : ぎょうせい; 新装版 (1995/2/1)
- 発売日 : 1995/2/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 192ページ
- ISBN-10 : 4324043388
- ISBN-13 : 978-4324043387
- Amazon 売れ筋ランキング: - 965,718位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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