まさにジャケ買い。タイトル買い。予備知識なしで読んだ。
これがまた面白かった。著者は東大の哲学科でヘーゲルをメインとする在野で活躍する方。この中身、正直難しい。哲学だけど言語学寄りであると思う。
言葉の成立過程から、さらにことばを他者へ伝えることのメカニズム、言葉の政治、宗教、日常での使われ方について等、実に多岐にわたる「ことば」の話。完全に理解出来てはいないが、自分は日々このことばをつかって生きて、そしてこの本自身も読んでいるわけだ。ことばのプロである著者は、素人にも伝わるように配慮してくれていると感じるほど面白く読める。
心にとまった点をいくつか
・ことばを媒介として自他の区別、自己と外界の分離がある。
ああ、これ法話で聞いていることと同じだ。戯論。ことばを尽くすほどに客観世界を一層客観的なものとし、主観を一生主観的なものとするのであれば、どんどん迷って言ってしまうじゃないか・・・。でもそうなのだろう。
・お守り言葉
ことばの理解の基本として、共通理解(文化、背景など)がある。それが得られている集団において、この「お守り言葉」は間違いがない言葉とでもういうかな。こういうのが表現を硬直化するのだろう。そして共通理解があり、その言葉を聞くことによっての「安心感」がもたらされる。なぜか法話で聞く「決まり文句」を思い出した。
・沈黙
ここはよかった。拒絶の沈黙と、沈黙することで出てくるもの。一言じゃいえないなあ。出さないからこその、沈黙。
・ことばー人間ーことば
人間がことばを出す前に、ことばがあるんだ!南無阿弥陀仏が真如から方便となって出てくるところを想起させる。絶対伝えられないものを表そうとすることば。読んでて興奮。
・おしゃべり byハイデガー
これってSNSのコメントのことかもしれないね。
”おしゃべりは、ことばが条件反射的に繰り返されるといったありさまが、おしゃべりの実体をなすといってもいい。・・・現実を決定的に共有していないという不安が、おしゃべりにおしゃべりをかさねるというむなしい営みを果てしなく続けさせる。ことばの共同規範性に徹底して依拠しようとする没主体的な表現者にとっては、ことばの途絶は、かえってそれぞれの表現主体の個人的主体性の深淵を垣間見させ、ゆえしらぬ不安をかきたてる。”
本当にたまに全然違う分野の本を読むのって大事だな。今自分の考えていることとリンクしてたくさん考えられた。
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ことばへの道: 言語意識の存在論 単行本 – 1997/3/1
長谷川 宏
(著)
- 本の長さ327ページ
- 言語日本語
- 出版社勁草書房
- 発売日1997/3/1
- ISBN-104326150890
- ISBN-13978-4326150892
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
人類は太古の昔から言葉とともにあった。言葉は人間にとって本質的な存在である。背後にある現実や幻想の世界を射程に収め、ことばの存在が人間の本質に折り重なるところで進められるしなやかな省察。
登録情報
- 出版社 : 勁草書房 (1997/3/1)
- 発売日 : 1997/3/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 327ページ
- ISBN-10 : 4326150890
- ISBN-13 : 978-4326150892
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