サブタイトルに「歴史学からの憲法解釈」とあるように、本書は日本史研究者による憲法論である。となると、戦後歴史学の枠組みから憲法、あるいは国家を語っているのだろうと、読む前から何か結論が見える、お決まりの議論かと思いがちである。が、著者は、出来合いの枠組みを排し、日本憲法史を鎌倉時代の『愚管抄』成立まで遡り、長期的視野に立って日本国憲法の意義と同時にその限界を指摘し、新たな「憲法改正」(「加憲」といった部分的修正を含む)を展望する。それも日本という国家の内在的発展の帰結として。
憲法第9条の「戦争放棄」の条項を、国際社会の中で生きていく上で、自ら設定した「主権の自己制限」と捉える解釈は、この憲法を高く評価する向きから喧伝される。しかし著者はむしろ、憲法第98条で、憲法の最高法規性と同時に、「条約及び確立された国際法規」への隷属を唱えている点に注目する。ここから日本国憲法が美濃部達吉の憲法解釈(主権の自己制限論)の発展の上に存在し、しかもこの憲法が敗戦当時、国際社会の代表者にも匹敵した米国への軍事的依存(日米安保条約)と何ら抵触しない構成であると論ずる。
日本国憲法が成立した歴史的必然を正当に評価すべきであると、著者は強調するが、その一方でこれを「不磨の大典」として祭り上げることがかえって、日本に真の意味の「国民主権」確立を阻害しないかと、読者に語りかけてもいる。本書は、「歴史学なんて何の役に立つの」(まえがき)という問いを、真摯に受けとめた歴史学からの応答の書である。
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国家の語り方: 歴史学からの憲法解釈 単行本 – 2006/6/1
小路田 泰直
(著)
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社勁草書房
- 発売日2006/6/1
- ISBN-104326248378
- ISBN-13978-4326248377
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登録情報
- 出版社 : 勁草書房 (2006/6/1)
- 発売日 : 2006/6/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 288ページ
- ISBN-10 : 4326248378
- ISBN-13 : 978-4326248377
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,761,977位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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