ルーマン入門とかルーマン解説では、まったくありません。
しかし、おそらく現時点で、もっとも強力かつ真摯なルーマンへの批判(的検討)であり乗り越えの試みです。
長岡克行氏の『ルーマン/社会の理論の革命』は、現在、もっとも優れたルーマンについての二次文献だと
思っていますが、本書の第二章が、『ルーマン/社会の理論の革命』の第14章補論への応答になっており、
併せて読む必要があります。
本書の第二章を読んだだけでは、ルーマンにそれなりに接してきた読者としては、いろいろ突っ込みたくなる
部分も多かろうと思うのですが、第三章以降を読み進めば、突っ込みたくなる部分への著者の見解が、か
なり明確に展開されています。
著者のルーマン批判の核心は、意味システム論はルーマンが提示したもの以外にも構築可能だ、ということ。
公理系の設定の仕方しだいで複数のコミュニケーションシステムが描写できること、そしてそれらは現実の記述
を介して検証されるべきこと、なによりシステム類型の同定にルーマンは失敗していたのではないか(システムの
不当前提による論点先取に鈍感であったのではないか)という疑義。
いずれも、世の多くのルーマン批判のような(たとえ専門的な大学教員によるものであっても)「ああ、こりゃ読ん
でないな」とか、「単純に誤解しているな」って簡単に斥けられるものでは全くありません。斥けるどころか、むしろ
著者の主張する論点は、ルーマン理解という意味でも、ルーマンの議論を展開して社会学の一方法とすると
いう意味でも、積極的に検討すべきであろうと思えます。
(しかし、今度は長岡氏『革命』の序章〜第3章までの議論への応答が、新たに課題になってきますが)
なにより、このように「真摯な」議論が、高度な専門家の間で継続していることを目の当たりにすることは、該当
分野に関与する院生レベルの読者だけではなく、読む者をして興奮させずにはおきません。
もちろん、私も、激しく興奮しています。
著者が一貫している「全体は見通せない」という主張は、本当に重く受け止めるべきかと思い中。
蛇足的に、しかしながら、著者に問うてみたい点も多々。
大きなものとしては、次の2点。
「システムとは差異である」という点について、どのように理解されているのか。
「同じ事態であるとすれば、どちらかが冗長」という「同じ事態」とはどういう意味か。A=Bということか、それとも
Aを成り立たせている原理Bということか、どういう意味で「同じ事態」と言っているのか。
いずれにしろ、ルーマンと社会学について、2006年の長岡克行氏の貢献に匹敵する、近年最大の収穫です。
必読!
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意味とシステム―ルーマンをめぐる理論社会学的探究 単行本 – 2008/10/22
佐藤 俊樹
(著)
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システムはある。ただあたえられている。行為システム論からコミュニケーションシステム論へ、ルーマンの探究の先にあるものとは。
「システムがある」こと、「社会がある」こと、「コミュニケーションがある」こと。ルーマンの思考を追跡しながら、そこで何が考えられ、何が考えられなかったかを問う。ルーマン自身を等価な可能性の一つとして、読み解くことがきりひらく新たな地平。世界をシステムで覆いつくす究極のシステム論の裂け目が、いま、あらわにされる。
「システムがある」こと、「社会がある」こと、「コミュニケーションがある」こと。ルーマンの思考を追跡しながら、そこで何が考えられ、何が考えられなかったかを問う。ルーマン自身を等価な可能性の一つとして、読み解くことがきりひらく新たな地平。世界をシステムで覆いつくす究極のシステム論の裂け目が、いま、あらわにされる。
- 本の長さ415ページ
- 言語日本語
- 出版社勁草書房
- 発売日2008/10/22
- ISBN-10432665337X
- ISBN-13978-4326653379
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登録情報
- 出版社 : 勁草書房 (2008/10/22)
- 発売日 : 2008/10/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 415ページ
- ISBN-10 : 432665337X
- ISBN-13 : 978-4326653379
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上位レビュー、対象国: 日本
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2021年9月22日に日本でレビュー済み
批判はわかりますが、批判は誰でもできます。ご自身の理論を発表してください。そうでないと、博士号の価値はないと思います。
2014年9月30日に日本でレビュー済み
東大駒場に所属する社会学者(ユリイカなどではアニメ評も書いている)が、“ルーマン読み”としての自らの解釈と実践をまとめた理論社会学の力作。
本書が主眼に置く議論は2つあり、そのうちのひとつはルーマンの理論(とりわけ彼の晩年における理論展開、いわゆる後期ルーマン)をいかに解釈できるかであり、もうひとつはそれを現在進行形の社会学的探究にいかにして援用すべきか、というものである。この2つに基づいて、構成が前後半に別れている。
前半は、ルーマンがどう考えたか、なぜそう考えたのか、どこで失敗したのか、どうして失敗したと考えられるのか、誰がどう解釈した(が、著者はどう解釈する)のか、といった思想的・理論的解釈が占める。後半ではこの解釈を理論的に実践あるいは実装すると、どんな論考が書けるのか、を著者自身が体現することになる。
個人的には桜について書かれた文章が、肩の力が抜けていて、最も著者の魅力が表れていると思う。しかし、この文体の意義や魅力そのものについては言語化しにくい(新書『桜が創った日本』が好きであれば…)。響く人には響く、としか言いづらいが、これを面白く感じるからと言ってルーマンがわかるかといえば、そうではなさそうだ。
率直に言って、この本は読者に対する要求水準が高く、読み通すのはかなり難しい本だと思う。というより、どこまで読みこめば著者の言っていることを理解したことになるのか、どんどん疑わしくなっていくような、不安をかき立てるものだ。この本の大きな主張のひとつはコミュニケーション概念についての「事後成立説」なのだと思うが、そのしくみはこの本の読書体験を例外としてくれるわけでは、もちろん、ない。
にもかかわらず、この本は優れた著作であると私は思う。
著者の思想を知るうえではもちろん外せないし、楽しめる一部のファンには堪らない1冊だ。なにより、「コミュニケーション」と「社会的システム」の関係(ある意味では、広義の、世界のしくみ)をここまで反芻した社会学者はほかにいないだろう。
他方で、ルーマンその人について知りたい人は原典の翻訳書に当たるか、長岡克行氏の本にでも当たる方が賢明だろう。しかしながら翻って、そのうえで再び本書に対峙したときには、いろいろ景色が変わって見えるのも事実だと思う。が、それは少数の「専門家」の仕事なのかもしれない。私は「専門家」ではないし、完全にわかったと言いがたい(とはいえ、この本を読んだ後では、「わかった」という言葉にはある種の切なさしか残らないと思うが)。
本書が主眼に置く議論は2つあり、そのうちのひとつはルーマンの理論(とりわけ彼の晩年における理論展開、いわゆる後期ルーマン)をいかに解釈できるかであり、もうひとつはそれを現在進行形の社会学的探究にいかにして援用すべきか、というものである。この2つに基づいて、構成が前後半に別れている。
前半は、ルーマンがどう考えたか、なぜそう考えたのか、どこで失敗したのか、どうして失敗したと考えられるのか、誰がどう解釈した(が、著者はどう解釈する)のか、といった思想的・理論的解釈が占める。後半ではこの解釈を理論的に実践あるいは実装すると、どんな論考が書けるのか、を著者自身が体現することになる。
個人的には桜について書かれた文章が、肩の力が抜けていて、最も著者の魅力が表れていると思う。しかし、この文体の意義や魅力そのものについては言語化しにくい(新書『桜が創った日本』が好きであれば…)。響く人には響く、としか言いづらいが、これを面白く感じるからと言ってルーマンがわかるかといえば、そうではなさそうだ。
率直に言って、この本は読者に対する要求水準が高く、読み通すのはかなり難しい本だと思う。というより、どこまで読みこめば著者の言っていることを理解したことになるのか、どんどん疑わしくなっていくような、不安をかき立てるものだ。この本の大きな主張のひとつはコミュニケーション概念についての「事後成立説」なのだと思うが、そのしくみはこの本の読書体験を例外としてくれるわけでは、もちろん、ない。
にもかかわらず、この本は優れた著作であると私は思う。
著者の思想を知るうえではもちろん外せないし、楽しめる一部のファンには堪らない1冊だ。なにより、「コミュニケーション」と「社会的システム」の関係(ある意味では、広義の、世界のしくみ)をここまで反芻した社会学者はほかにいないだろう。
他方で、ルーマンその人について知りたい人は原典の翻訳書に当たるか、長岡克行氏の本にでも当たる方が賢明だろう。しかしながら翻って、そのうえで再び本書に対峙したときには、いろいろ景色が変わって見えるのも事実だと思う。が、それは少数の「専門家」の仕事なのかもしれない。私は「専門家」ではないし、完全にわかったと言いがたい(とはいえ、この本を読んだ後では、「わかった」という言葉にはある種の切なさしか残らないと思うが)。